【重賞回顧】スプリンターズステークス(G1)

秋競馬、G1開幕戦! 秋の短距離王はどの馬?

 

いよいよ秋のG1シーズンが到来しました。

まずは短距離王を決める一戦、スプリンターズSです。

今回は戦前から「群雄割拠」「どの馬が勝ってもおかしくはない」という声が大きかった印象です。

その一因となったのが、実績馬たちの調整に対する不安視です。

安田記念以来のレッドファルクス、函館スプリント以来のセイウンコウセイ、昨年香港スプリント以来のビッグアーサーをはじめ、スプリントG1馬たちの休養明けが目立っていました。

かといって前哨戦で好走したメンバーたちも乗替や連戦明けなど、判断が難しい要素が多くありました。

「一体どの馬が勝つのだろう?」

そうしたファンの思いを反映するように、圧倒的人気馬がいないレースとなりました。

それは9番人気のダンスディレクターが単勝オッズ16.6倍、という状況からも見てとれるでしょう。

混戦を制したのは一体どの馬だったのでしょうか?

 

 

軽やかに逃げるワンスインナムーン! レッドファルクス・メラグラーナは後ろから。

 

スタートはそれなりに揃ったものとなりましたが、すぐに横山典騎手シュウジを抑えて最後方に。近走スランプが続いていたシュウジ陣営の『目前の競馬をやめて新味を試そう』という判断があったのかもしれません。

また『1000m戦のスペシャリスト』ラインミーティアは、好スタートをきったものの、少し不自然な形で後方にさがってしまいます。どうやらトモを滑らせてしまった模様。

逆に内枠からスッと前に躍り出ようとしたのが、先日復帰したばかりの三浦騎手が騎乗するフィドゥーシア。しかしその外側から先行争いを制してハナをきったのは、4歳牝馬ワンスインナムーンでした。ワンスインナムーンのすばらしい加速をみて三浦騎手が譲ったかたちとも見ることができそうです。

その瞬間をついて、ダイアナヘイローと武豊騎手が2番手を確保。結局フィドゥーシアは3番手に落ち着きました。

香港からの挑戦者、ブリザードはスタート後にすこしうるさい様子を見せて一時後方に下がっていましたが、体勢を立て直して中団→先行集団と、ポジションをあげていきます。

さすがスプリント戦、目を見張るポジション争いが繰り広げられているうちに、気がつけば3コーナーへ。

1番人気レッドファルクスは中団後方をキープ。

レッツゴードンキがその少し前を軽快に走ります。

中団前目では早くもポジションをあげていく馬も。

ただ、ペースはそれほど速くありません。

後方にいるレッドファルクスメラグラーナといった人気馬にとっては少し厳しい状況となってきました。

そして、最終コーナー。

ワンスインナムーンは先頭を譲らず、まだ余裕さえあるような走りです。抜群のコーナリングで、さらに後続を突き放しにかかります。

負けじと内から鋭い伸び脚を見せるのはレッツゴードンキ。一気にポジションを上げてワンスインナムーンを射程に捕らえました。

粘るワンスインナムーン

追うレッツゴードンキ

ワンスインナムーンの脚が鈍らず、逃げがこのまま決めるのかという思いが過ぎります。

その他先行勢からは少しずつついていけなくなる馬も。フィドゥーシアが一杯になり、ずるずると後退していきます。

レッツゴードンキの脚色も少し落ち着いてしまったかのように見えたその瞬間、ぐいっともう一伸びを見せます。そして一気に先頭へ。

先行勢の争いに決着がついた一方で、後方から、2頭の白い馬体が力強く駆け上がってきます。

内が大ベテラン・スノードラゴン。外からは前年覇者・レッドファルクス

今度は追われる身となり、粘りこみを図るレッツゴードンキ

しかし、レッドファルクスがぐいぐいと他とは違う伸び脚を最後まで使い、クビだけ差し切ったところでゴールイン。

上がりタイムは最速でなかったものの、非常に目を引くラストのスピード感でした。

 

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全着順 

スプリンターズステークス(G1)3歳以上オープン(芝1200m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
レッドファルクス
牡6
Mデムーロ
 1:07.6
2
レッツゴードンキ
牝5
岩田
クビ
3
ワンスインナムーン
牝4
石橋脩
1/2
4
スノードラゴン
牡9
大野
クビ
5
□外ブリザード
セ6
モッセ
クビ
6
ビッグアーサー
牡6
福永
クビ
7
○外メラグラーナ
牝5
戸崎圭
1/2
8
ダンスディレクター
牡7
浜中
アタマ
9
○外フィドゥーシア
牝5
三浦
ハナ
10
シュウジ
牡4
横山典
1/2
11
セイウンコウセイ
牡4
クビ
12
ファインニードル
牡4
内田博
1.1/4
13
ラインミーティア
牡7
西田
ハナ
14
モンドキャンノ
牡3
池添
アタマ
15
ダイアナヘイロー
牝4
武豊
アタマ
16
ネロ
牡6
勝浦
ハナ

 

 

1~3着馬コメント

1着・1番人気 レッドファルクス

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 スプリンターズSがG1に昇格したのが1990年。

その歴史において連覇を達成したのはサクラバクシンオーロードカナロアの2頭だけでした。

そしてレッドファルクスがその2頭に肩を並べることになります。

まさに歴史的なスプリント王者への一気に名乗りをあげました。

 

2着・5番人気 レッツゴードンキ

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 内枠をいかした好騎乗が光った印象です。

コーナリングも素晴らしかったですが、ラストに粘ってワンスインナムーンをかわしたのは地力の高さが伺えます。

桜花賞を含むほとんどの出走レースでコンビを組んできた岩田騎手とも相性が良いのでしょう。まさに「名コンビ」といった雰囲気です。

ただ、会心の騎乗だっただけに外からのレッドファルクス強襲は残念だったことでしょう。

 

3着・7番人気 ワンスインナムーン

このレースの流れを作り、見せ場十分の3着。

特にスタート直後からのスピード感は素晴らしかったです。

そして、抜かれる前の粘りも勿論ではありますが、抜かれてからの粘りも素晴らしいものでした。

この馬のポテンシャルが高いことの証明でしょう。

最終直線でよく粘れたのは、鞍上の緻密な計算による逃げのペースの賜物でもあります。

今後もこのコンビでこうしたレース展開に持ち込めるならば、毎走楽しませてくれる存在になりそうです。

 

 

総評

 

群雄割拠・主役不在という声も高かったG1ではありましたが、終わってみると実績馬レッドファルクスが実力を見せての勝利。

あのペースであの位置取りでは、相当な力がないと差しきれないのは明白です。

国内スプリント戦線では安定した存在となってきましたね。

それだけに昨年調整がうまくいかなかった香港遠征での惨敗は勿体無いという思いがありますが……。

ただ、今後のレース選択は地方・海外含めて幅広い選択肢が用意されているはずです。

昨年の夏から秋にかけてCBC賞→スプリンターズSと勝利したことで「芝1200m」が主戦場というイメージを持ってはいますが、それだけの馬ではありません。

ダートではオープン競走の欅Sを勝利していますし、今年の安田記念でイスラボニータらに先着して3着に食い込んだことも記憶に新しいかと思います。

いとこには菊花賞・ステイヤーズSで2着のフローテーション、マーチS勝ち馬サイレントメロディたちもいる血統ということを考えると、スプリント戦線を飛び出した活躍を見せてもまったく不思議ではありません!

さらにはおばにスティンガーがいる非常に由緒正しい良血馬ですので、種牡馬価値を高めるための新しい挑戦が見られるかもしれません。

JBCスプリント、マイルチャンピオンシップ、香港遠征、アメリカ遠征、そして今年敗北した高松宮記念……スプリント王者の次なる走りを楽しみに待ちましょう!

 

実績馬、といえばスノードラゴン(4着)の走りも光りました。猛然と駆け上がる姿は、9歳馬とは思えぬ力強さです!

コーナーがもう少しだけスムーズにいけば……と思わせるあたり、驚異の大ベテランです。

G1馬ながらも、単勝オッズが最低人気という悔しさをしっかりと晴らしました。

 

また、5着に食い込んだブリザードにも注目したいと思います。

前半は気性の問題でブレーキがかかって思うようなポジションをとれず、最終直線でも若干の迷いがありました。

そんなチグハグともいえる競馬をしながらの掲示板確保は、さすがスプリント大国・香港からの挑戦者といったところです。

恐るべし、香港短距離界!

 

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一方、2番人気メラグラーナは7着と、3番人気で10着だった高松宮記念に続いて人気を裏切るかたちになってしまいました。

ただし着差は0.3秒と、悲観するほどではないかと思います。

このペースとなると、どうしても位置取りが後ろ過ぎました。今回は近い位置取りからしっかりと差しきった勝ち馬に脱帽です。

春ほどはG1に高い壁を感じないので、この苦しい時期もそろそろ終わるかもしれません。

 

サマースプリント組は1位のラインミーティアをはじめ、2位のファインニードル・4位のジューヌエコールダイアナヘイローと、どの馬も苦戦をしていた印象です。前哨戦を使わない実績馬たちと明暗の分かれる結果となりました。

やはりピークが夏に来てしまいがちなのでしょうか?

賞金もあり、夏を盛り上げてくれるサマーシリーズですが、今後どういう位置づけとされていくのか、注目していきたいです。

 

最後に。

新しい競馬を試したシュウジは、ある意味収穫の大きなレースだったかもしれないと思っています。

まだ4歳。横山典騎手とこれからゆっくりと信頼を深めていって、復活を遂げることを期待したいですね。

 

 

(オガタKSN)

(写真:ラクト)

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