【重賞回顧】フィリーズレビュー(GⅡ)

みんなが欲しい桜への切符。

それは次々に目の前に現れては夢の如く霧消していく。
最後にそれをつかむのは……

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3月11日。
それは私たちにとって何かが変わった日です。そして、変わらないことがどれほどの幸運なのかを知らせてくれる日でもあります。
だから、競馬場で馬が走るという『いつもの週末』に改めて感謝しなければなりません。


さて、チューリップ賞が最上位ランクの馬たちにとっての試走ならば、このフィリーズレビューは大混戦の桜花賞最終トライアルと言えます。
今年はこのレースの10分後に中山でアネモネステークスが施行されますので、この2レースをあわせて最終トライアルというところでしょうか。
中山ではなく、今年2度目の西下を選んだモルトアレグロは阪神JF5着の実力馬。出世レース紅梅ステークス1着からここに臨みます。あえて3戦連続長距離輸送を課したという点に、桜の舞台にかける意欲を感じます。
アンコールプリュの母オイスターチケットはテイエムオーシャンが勝った01年桜花賞6着でした。
馬名の由来は音楽用語で「前よりもっと」。母を超える成績を桜花賞で残すために、ここで権利を取りたいところです。
福島2歳Sで3勝目をあげたアンヴァルも、母であるアルーリングボイスはキストゥヘヴンが勝った06年桜花賞7着──こちらも母が走った桜の舞台を夢見ています。
他にも前走500万下勝ちという戦歴の馬はデルニエオールイサチルルンルンアルモニカラブカンプーアリアと5頭いて、デルニエオールに500万下で惜敗したリバティハイツや園田から参戦のスウォナーレと、どの馬が権利をとってもおかしくない混戦模様でした。

 

切符をつかむ好機はたった1度。儚き争奪戦

レースはスタートから波乱が起きてしまいました。
4番人気のアマルフィコーストが2、3完歩目で躓き、鞍上の浜中 俊騎手が懸命に持ちこたえようとしましたが落馬。
アンコールプリュもスタートは悪く、後方から進めます。好発からハナへ行ったのはラブカンプーでした。
小倉で1200mのかささぎ賞を勝ったラブカンプーにとって、スピードを活かすことこそ切符を手中に収めるための好機でした。
2番手には好発を決めたモルトアレグロがつけ、その背後にマドモアゼルアルモニカが続きます。先行策でここまで戦ってきた組にとって、前半の位置取りこそが好機なのです。
そんな先行集団のペースは前半3ハロン33秒6のハイペースでした。速すぎるといって引いていては馬群に飲まれ、好機を逃してしまうので、行くしかありません。
背後に控えた馬たちもハイペースに離されないように追走しつつ、いつでも仕掛けられるような態勢を作っています。のんびり構えてはいられません。好機はいつやって来るか分かりません。一瞬の好機をつかむためにエンジンを吹かし続けます。
好機をつかまなきゃ。今しかないから。
4角から直線までの固まった馬群には、そうした各馬の願いのような叫びが聞こえてきそうです。
直線を向いて好機を迎えたモルトアレグロとアルモニカが抜け出しにかかりますが、モルトアレグロは苦しそうな走り。好機をつかまんとアルモニカが懸命に抜け出そうとしています。
そこへ外から早めに進路を確保したギンコイエレジーが強襲。そして、インでずっと進路を探しながら走っていた1枠2頭──アンヴァルデルニエオールに、好機が巡ってきます。アルモニカの内と外に進路を確保できたのです。
一気に先頭に立つ2頭、好機をものにしたかと思えたその時、背後にいたリバティハイツと外から追い上げたアンコールプリュが、1枠2頭の好機を自らの好機に変えてしまいました。
最後に重賞タイトルという好機をつかんだのは、リバティハイツ。僅かに足りなかったものの権利を奪取した2着アンコールプリュ。
最後の好機をギリギリ逃すまいと競り合った1枠2頭はハナ面を合わせてゴールしました。長い長い写真判定の結果、最後の切符はデルニエオールの元へ渡りました。
勝ち時計1分21秒5(良)。桜花賞への切符はリバティハイツ、アンコールプリュ、デルニエオールがこのレースで獲得し、東のアネモネSではハーレムラインとレッドレグナントがつかみました。

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1〜3着馬コメント

1着リバティハイツ(8番人気)

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前走の500万下でデルニエオールに惜敗し、本賞金400万円だった同馬は、桜花賞出走のために3着以内が必須条件でした。先行集団の後ろについて離されずに追走し、前の組が先へ先へと抜け出したときにタイミングを遅らせて仕掛けてきたのは、北村友一騎手らしい騎乗でした。同騎手は早めに抜けるか待って抜けるかという判断に長けています。直線はカラ馬に絡まれそうなところを回避できたのも大きいです

2着アンコールプリュ(2番人気)

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母オイスターチケットはスピードタイプの先行型でしたが、中京のつわぶき賞に続いて末脚を活かせました。出遅れたスタート直後にカラ馬が内にいてインに入れず、外をずっと回る競馬でしたが、最後まで伸び続けてリバティハイツに迫りました。確かな末脚を見せていましたし、本番の外回りマイル戦も合いそうな内容でした。決して1400mまでの馬ではないでしょう。

3着デルニエオール(5番人気)

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父ステイゴールド、母オリエンタルアート。
兄弟は説明不要でしょう。オルフェーヴルの最後の全妹になります。この馬を生んだ3日後に母オリエンタルアートは急逝、父ステイゴールドはその約1ヶ月前に天へ旅立ちました。この血統がハナ差で桜花賞の切符を獲得したことで物語の続きに夢が膨らみます。競馬とは物語であり、そして、その物語は終わることなく続いていきます。一瞬ですが、アンヴァルより先に進路を見つけたのが明暗を分けました。

総評

混戦という事前の評価通り、今年も最後の直線で先頭が二転三転する、桜花賞最終トライアルらしいレースでした。
2着アンコールプリュから6着アルモニカまでクビ、ハナ、クビ、アタマの大接戦は桜花賞への祈りがひしめく儚きレースでもありました。特に3、4着はかなり際どく、そこで権利をとったデルニエオールの幸運に何かを感じざるを得ません。
どの馬も自分に巡ってきた好機を躊躇なくつかもうとする姿は、桜の舞台の大きさを改めて意識させるものでした。
アネモネSも終わり、これでいよいよ桜花賞を待つばかりとなりました。
28日後、仁川の桜が待ちきれません。

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(勝木淳)

(写真・ゆーすけ)

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