【重賞回顧】共同通信杯(GⅢ)

このレース見逃すなかれ。クラシックへの道を拓く。第52回共同通信杯

 

トキノミノルの勇姿を知っている──そんな大ベテランが今も競馬を愛しているなら、ぜひ話を聞いてみたい。

1951年、10戦10勝、レコード7回。

パーフェクトと呼ばれたトキノミノルは、両脚に脚部不安を抱えながらダービーを勝ち、その17日後に破傷風で命を絶ったという伝説の名馬だからだ。

現在は銅像として東京競馬場のパドックビジョンの裏手、日本庭園から競馬を見つめてくれている。そして、共同通信杯のレース名として残されている。

 

トキノミノル記念

 

競馬は語り継がれるものだ。

トキノミノルのことも語り継いでいきたい。だから、トキノミノルの勇姿を語れるファンに会ってみたいと思う。

競馬場には、そんな可能性を感じる元気なベテランがたくさんいる。不可能なことではない。いつか年老いた頃、ディープインパクトオルフェーヴルのことを伝説として語れるようになりたい。夢はいつまでも続いていく。

 

さて、今年の共同通信杯は昨年、京都2歳Sで後のGⅠ馬タイムフライヤーを下したグレイルが参戦してきた。引き続き武豊騎手が乗る。

 

そのタイムフライヤーにホープフルSで3着に敗れたステイフーリッシュも出走。こちらは矢作厩舎と中谷雄太騎手という、師弟ともいえるコンビだ。

 

名門堀厩舎のサトノソルタスは、セレクトセール当歳セッションで税込9000万円以上の値をつけた好素材。新馬勝ち後にいきなり重賞へ駒を進めてきた。今回は世界のライアン・ムーア騎手をパートナーに迎えた。

 

百日草特別を勝った、藤沢和厩舎が送るショウナンマイティの半弟・ゴーフォザサミット。未勝利勝ち直後のアメリカンワールドや、年明けの中山で500万下平場戦を勝ったオウケンブルースリ産駒のオウケンムーン、道営から船橋へ移籍したリュウノユキナなど、多彩かつクラシックを意識できる好素材が揃った。

 

 

府中の1800mで問われるもの

 

競馬評論家でもあった大橋巨泉さんは「府中の1800展開いらず」という格言を残した。

東京競馬場の芝1800mは総合力が問われるコースであり、紛れが少なくて能力値を測りやすい──このことを、大橋巨泉さんは格言として後世に残してくれた。

 

スタートでゴーフォザサミットが遅れて、グレイルも後方待機を早々に決めた。ダッシュがよかったコスモイグナーツが、すんなりと先手を取るところに、インからフィリップ・ミナリク騎手とエイムアンドエンドがハナを奪う勢いで絡んでいく。このミナリク騎手、ヨーロッパの騎手としては積極的な競馬が多い。

 

コスモイグナーツがインのエイムアンドエンドを突っぱねたことで、ペースがややあがった。クラシックを見すえたレースでは折り合うことが重要課題になり、後続は無理をしない。コスモイグナーツエイムアンドエンドの隊列は決まったが、そのときには後続は離されていた。10頭立てでタテに長い隊列になり、どの馬もストレスがない。

 

「府中の1800展開いらず」の格言通りに能力値が素直に出そうなレースになった。

 

1000m通過60秒2のミドルペース。先行勢の離れた3番手にブラゾンダムール、その直後にトッカータ、この後ろのインにオウケンムーンが潜み、その背後でサトノソルタスが1枠1番を活かしている。

 

直線を向くとコスモイグナーツが離しにかかるが、後続も押し寄せる。直線入り口でブラゾンダムールトッカータの間をこじ開けるようにオウケンムーンが出てきて、進路を作る。残り400m標識で2番手エイムアンドエンドコスモイグナーツを捕らえるところに、外からオウケンムーンが襲いかかる。

 

脚色は明らかにオウケンムーン

 

タテ長の隊列だったので、どの馬も進路は十分ある。サトノソルタスオウケンムーンの外から差をつめ、間を割って待機策のゴーフォザサミットも追ってくる。それでもオウケンムーンは伸び続けて1着でゴール板を通過。2着はサトノソルタス、3着エイムアンドエンド。時計は1分47秒4(良)。

 

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全着順

共同通信杯(GⅢ)3歳オープン(芝1800m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
オウケンムーン
牡3
北村宏司
 1:47.4
2
サトノソルタス
牡3
R.ムーア
3/4
3
エイムアンドエンド
牡3
F.ミナリク
1.1/4
4
ゴーフォザサミット
牡3
田辺裕信
ハナ
5
カフジバンガード
牡3
内田博幸
クビ
6
ブラゾンダムール
牡3
横山典弘
1.3/4
7
グレイル
牡3
武豊
クビ
8
コスモイグナーツ
牡3
柴田大知
アタマ
9
○外アメリカンワールド
牡3
浜中俊
2
10
ステイフーリッシュ
牡3
中谷雄太
クビ
11
トッカータ
牡3
丸田恭介
1.1/4
12
□地リュウノユキナ
牡3
吉原寛人
8

 

 

1~3着馬コメント

1着オウケンムーン(6番人気)

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2015年生まれのオウケンブルースリ産駒中央出走頭数わずか6頭の中から重賞勝ち馬が出た、それもクラシック戦線で重要な共同通信杯を勝ったことが大きい。

 

遡れば、父オウケンブルースリはGⅠタイトルこそ菊花賞のみだったが、4歳時にジャパンカップでウオッカとハナ差の勝負をしたことは記憶に残っている。その父ジャングルポケットはダービーとジャパンカップを同一年に勝ち、東京コースの大舞台に高い適性を示した。そして、その父はトニービン。東京コース適性は言うまでもない血統背景だ。

 

時計1分47秒4はこのレース後に活躍した馬たちと遜色なく、皐月賞からダービーへ、血のロマンは無限に広がる。

 

 

2着サトノソルタス(3番人気)

 

タテ長の隊列が内枠のストレスを軽減。スムーズな追走から直線も進路十分で末脚を発揮できた。

キャリアの浅さを考えれば、スケールは示せたといえる。この血統は父ディープインパクトの兄弟2頭はいずれも結果を出していないが、共同通信杯で見せた末脚は確かなものがあり、今後も期待できる。

 

 

3着エイムアンドエンド(10番人気)

 

伏兵らしくスタートから攻撃的なレースが目立った。コスモイグナーツにペースを落とさせず、2番手で常に離されずにマークする形。自らも息を入れにくい苦しい競馬を強いられながらの3着確保は、力の片鱗を見せたといえる。

今後も積極的な競馬で活路を見出したい。

 

 

総評

 

競馬は語り継がれるものであり、そして、いつのどのレースが語り継がれるレースになるのかは未来と歴史が示してくれる。

 

オウケンブルースリ産駒オウケンムーンが勝った共同通信杯なのか、サトノソルタスが惜敗したレースなのか、グレイルが思わぬ大敗を喫したレースなのか──答えはここに出走した馬たちの未来が教えてくれるだろう。

 

時計1分47秒4はスワーヴリチャード(ダービー2着)1分47秒5、ディーマジェスティ(皐月賞馬)1分47秒4、リアルスティール(皐月賞2着、菊花賞2着)1分47秒1と一目瞭然、優秀である。能力値が結びつく府中の1800mの記録である以上、オウケンムーンのクラシック戦線は明るい。

 

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(勝木淳)

(写真・かぼす)

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