【重賞回顧】第78回 皐月賞(GⅠ)

春の中山クライマックスはクラシック3冠ロード第1章。第78回皐月賞

 

今年も皐月賞が巡ってきた。

 

夏に始まったクラシックロードは豊かな秋から厳しい冬を経て、春に第1章を終える。皐月賞は長い第1章を完結させるレース。力関係に未知なる部分が多く、どの馬も3冠王者になる可能性を持っている。第1章の終わりではあるものの、無限に近い希望に満ちている。

 

有力馬ダノンプレミアムが回避を表明。大本命が皐月賞のゲートに入れないことは改めて競馬の難しさを教えてくれた。

 

そのダノンプレミアムに弥生賞で負けたワグネリアンは、7月の中京でデビューし、2歳時に東京スポーツ杯まで3連勝だった。東京スポーツ杯1分46秒6という記録からクラシック最有力と報じられた。ここまで先着を許したのはダノンプレミアムだけ。父は05年3冠馬ディープインパクト

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ステルヴィオは6月東京デビュー後、朝日杯でダノンプレミアムの2着、年明け緒戦のスプリングSでは中山で上がり34秒1の切れ味とパワーを見せた。こちらも先着を許したのはダノンプレミアムだけ。父の新種牡馬ロードカナロアは桜花賞でその血の凄みを見せつけた。

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DMMドリームクラブが初年度からクラシックへ送り込んだキタノコマンドール。暮れの阪神デビューから2連勝。2連勝でクラシックといえば、フサイチコンコルドを思い出す。すみれSでは4角で大外を上がって行く姿が印象的だ。父はワグネリアンと同じくディープインパクト

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名牝ビリーヴがアメリカから送ってきたジャンダルムは9月阪神デビューから連勝し、GⅠホープフルS2着、弥生賞3着と中山で堅実な走りを披露。父キトゥンズジョイはアメリカ芝中距離のチャンピオンホース。エルプラドからサドラーズウェルズに通じる。中山の芝が合わないわけがない。

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今や黄金ローテの共同通信杯を勝って参戦するオウケンムーンは8月新潟デビュー。父オウケンブルースリは春のクラシックには間に合わなかったが、夏に急成長して菊花賞を勝った。僅かな産駒頭数から皐月賞へオウケンムーンを送り込み、私たちを驚かせた。祖父のジャングルポケットはダービー馬。

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以下、8月新潟デビューのホープフルS馬タイムフライヤー、10月京都で始動したエポカドーロの父オルフェーヴルは11年の3冠馬。函館デビューのジェネラーレウーノ、夏の新潟最終日デビューのサンリヴァルなど、16頭がゲートに入った。

 

 

若駒に与えられた厳しい試練。風と雨と中山の馬場

 

船橋市がある湾岸地区は風に悩まされる場所でもある。春の気まぐれのような低気圧に襲われ、早朝から窓を叩く雨と家を揺らすほどの風に見舞われた。競馬場最寄の武蔵野線はダイヤを大幅に乱した。この地区に住む人は強風を感じると、まず鉄道の心配をする。中山競馬場はそんな場所にある。

 

幸いにも雨は朝に止み、風も午後には収まった。直接の影響はなかったが、中山の馬場にはその痕跡はくっきりと残されていた。

 

9Rの鹿野山特別は毎年皐月賞を占う重要なレースだが、その勝ち時計は2分1秒7(やや重)、かなり力の要る重い馬場になっている。

風と雨と中山の馬場、2015年生まれを代表する若駒たちは厳しい試練を乗り越えねばならない。

 

厳しい道だから引くという選択肢はない。若さとは振り向かないことだ。スタートから出ムチを入れて10月京都デビューのアイトーンがハナへ行く。大外から同じ週に京都で走ったジュンヴァルロと京成杯を押し切ったジェネラーレウーノが追いかける。

 

この3頭が後続をどんどん離して行く。3頭とも控えようとしない。アイトーンのペースに残りの2頭も競り合うようについていく。離れた4番手にいるエポカドーロが後ろの馬群を引っ張るような形になり、9月阪神デビューのケイティクレバーはその後に控え、外にサンリヴァル、直後に秋の中山組のマイネルファンロン。その後に夏の新潟から走るスリーヘリオスタイムフライヤー、門別で競走馬生活をスタートさせたダブルシャープが続いて、ジャンダルムオウケンムーンが並んでいる。ワグネリアンキタノコマンドールステルヴィオと有力馬は控えている。

 

飛ばす3頭はラップを11秒台から12秒台前半にキープして1000m通過は59秒2を計時した。馬場を考えればハイペースだ。だが、遅い速いは関係ない。前に行った組は前を走り続けるしかない。4番手エポカドーロはそんな3頭を無理には追わない。

 

残り400m標識から12秒7と一旦、ペースが落ちた。アイトーンジュンヴァルロの脚が上がりはじめてペースを維持できなくなっていった。ジェネラーレウーノが3頭から抜け出しにかかる。そして、その落ちたペースをエポカドーロは見逃さない。戸崎圭太騎手は周りに馬が来ない幸運に思い切りエポカドーロを馬場の大外に持ち出す。馬場のいい所を知っているからだ。ジェネラーレウーノを捕らえる。最後の坂も関係なく力強く走って、食い下がるサンリヴァルを置き去りにしてゴールを目指した。後方組が懸命に追うが、中山の馬場が彼らの切れ味を削いでいく。

 

エポカドーロがクラシック第1章の終わりに凱歌をあげた。勝ち時計2分0秒8(やや重)上がり600m37秒3は中山の馬場がいかに試練だったかを教える。2着は食い下がったサンリヴァル、雁行3頭の中にいたジェネラーレウーノが3着に粘りこんだ。

 

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全着順

第78回 皐月賞(GⅠ)3歳オープン(芝2000m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
エポカドーロ
牡3
戸崎圭太
 2:00.8
2
サンリヴァル
牡3
藤岡佑介
2
3
ジェネラーレウーノ
牡3
田辺裕信
1.3/4
4
ステルヴィオ
牡3
C.ルメール
クビ
5
キタノコマンドール
牡3
M.デムーロ
ハナ
6
グレイル
牡3
岩田康誠
ハナ
7
ワグネリアン
牡3
福永祐一
1.1/2
8
アイトーン
牡3
国分恭介
1
9
○外ジャンダルム
牡3
武豊
アタマ
10
タイムフライヤー
牡3
内田博幸
3/4
11
ケイティクレバー
牡3
浜中俊
クビ
12
オウケンムーン
牡3
北村宏司
1.1/4
13
マイネルファンロン
牡3
柴田大知
3/4
14
○地ダブルシャープ
牡3
和田竜二
1
15
ジュンヴァルロ
牡3
大野拓弥
4
16
スリーヘリオス
牡3
柴田善臣
8

 

 

1~3着馬コメント

1着エポカドーロ(7番人気)

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オルフェーヴルは厳しい環境下でこそ真価を発揮した。雨不良のダービーで馬場を苦にせず真っ直ぐ走った姿がエポカドーロに重なる。苦しい流れを自ら動いて抜け出したのは能力の証だ。スプリングステークスで同じような苦しいレースをした経験が活きたのだろう。中山の馬場を読み切って4角で大外を選んだ戸崎圭太騎手の好プレーも光った。生産したのは、三石でほぼ一人で牧場を営む田上徹さん。皐月賞前日に母ダイワパッションが新たな命を産み落としたことで、なんとか中山競馬場に駆けつけられたそうだ。オルフェーヴルの父ステイゴールドは、未だに日高に活力を与え続けている。きっと、晩年を過ごした日高への感謝を忘れていないにちがいない。

 

 

2着サンリヴァル(9番人気)

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関西馬ながらデビュー2戦目からずっと中山2000mを使われ続けた経験が活きた。コース巧者ぶりは厳しい流れの中でも最後まで伸び続けたところに見える。この春も中山で好調だった藤岡祐介騎手はこの日も自信を持って乗っていた。GⅠタイトルを獲る日も近い。父ルーラーシップはダービーには間に合ったが、本格化したのは古馬になってからだった。母父アグネスタキオンは皐月賞で伝説を作った名馬。祖母ウメノファイバーはオークスを勝っている。

 

 

3着ジェネラーレウーノ(8番人気)

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先行した3頭の中で唯一掲示板確保の3着。ハイペースを一旦は抜け出したスタミナは高く評価していい。混戦向きのしぶとさと意外性がある。雁行を避けるように絶妙にコントロールした田辺裕信騎手のペース判断が冴えた。未勝利から3連勝で重賞ウイナーになった力を発揮しただけに低評価すぎたかもしれない。

 

 

総評

 

クラシックロード第1章に与えられた試練は想像以上だった。天候は回復したが、嵐が馬場に与えた影響は大きかった。力が要る馬場に先行3頭が作った厳しいペース、後方に控えたステルヴィオキタノコマンドールワグネリアンらは仕掛けのタイミングが難しくなり、結果的に持ち味の末脚を存分に発揮できなかった。この敗戦を糧に第2章で巻き返してくる可能性は高い。

しかし、勝ったエポカドーロは厳しい競馬を前から乗り切って最後まで伸びただけに実力十分だ。2、3着のサンリヴァルジェネラーレウーノも強い競馬をしていて、クラシック第2章日本ダービーが早くも楽しみになった。この結果、エポカドーロサンリヴァルジェネラーレウーノステルヴィオキタノコマンドールがダービーへの優先出走権を獲得した。残り13枠をかけた新章が幕を開ける。

 

 

(勝木淳)

(写真・よしフォト)

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