【重賞回顧】第66回京都新聞杯(GⅡ)

主導権はもう誰にも渡さない。第66回京都新聞杯

 

菊花賞につながるステップレースだと感じてしまう人は競馬ファンとしてはちょっとベテランの域に入る。1990年代まで京都新聞杯と言えば秋の京都を舞台に行われ、菊花賞の前哨戦だった。菊花賞の日程も変わり、京都新聞杯は春の京都へ移り、ダービーへと臨む最後の重賞というシチュエーションに変貌を遂げた。

 

前週の青葉賞がダービー馬をなかなか出せない中、京都新聞杯は春に移動した最初の年2000年、勝ち馬アグネスフライトが河内洋の夢を乗せてダービーを勝った。以後、ハーツクライインティライミトーセンホマレボシとダービー好走馬を何年か出し、2013年勝ち馬キズナがダービーも直線一気で勝ち切る。翌年サトノラーゼンはダービー2着。春の京都新聞杯もダービーに結びつく出世レース。見逃せまい。

 

3月阪神アルメリア賞を好時計で勝ちあがったフランツは近親にリンカーンヴィクトリーがいる良血馬。音無厩舎ゆかりの血であり、オーナーも同じ。騎手ミルコ・デムーロを合わせると昨年の青葉賞馬アドミラブルと同一トリオ。

 

きさらぎ賞2着以来のグローリーヴェイズは母メジロツボネ。レイクヴィラファームの生産馬。母系をたどれば、メジロライアンメジロラモーヌアンバーシャダイモガミノーザンテーストと熱い血が注がれている。

 

タニノフランケルはご存知ウオッカがアイルランドから送ってきた良血。500万下を勝ち、再びクラシック戦線へ。ウオッカをたどれば、小岩井農場の牝系に行き着く。タニノフランケルが背負う血は深い。

 

以下、葉牡丹賞でジェネラーレウーノの2着があるシャルドネゴールド、皐月賞大敗から巻き返しを期すケイティクレバー、ホープフルステークス3着のステイフーリッシュなど最後の最後にダービーの出走枠へ滑り込もうとする17頭が揃った。

 

 

イメージ一新。土壇場で逆転を狙うため、一か八かの賭け

 

京都芝2200mは重賞では古馬の京都記念とこの京都新聞杯のみ施行される条件なので、少し傾向はつかみにくいが、今年の京都記念のクリンチャー、昨年、一昨年連覇したサトノクラウンなどスタミナ豊富なタイプが強いレース。

 

スタートから逃げたメイショウテッコンはマンハッタンカフェ産駒らしくスタミナ勝負に持ち込む腹積もりのようだ。後続をやや離そうとするが、そこに離されずに番手をとったのがステイフーリッシュ。追い込みのイメージを覆す積極策だ。今年、クリンチャーガンコと積極的な競馬で活躍する藤岡佑介騎手に矢作芳人調教師が騎乗依頼した理由はここにあった。スタート抜群の藤岡佑介騎手は後方にいることが多かったステイフーリッシュを2番手に導いた。

 

対照的に1番人気のフランツは今回最後尾を走っている。2角でメイショウテッコンステイフーリッシュに離された後続馬群にタニノフランケルケイティクレバーアールスターと続き、レイエスプランドルリシュブールインターセクションユーキャンスマイルグローリーヴェイズアドマイヤアルバレノヴァールダブルシャープと一団が構える。先行した馬と控えた馬群がくっきり分かれる隊列が進む。

 

前半1000m58秒5を記録後、ラップが極端な落ち方をする。坂下から上り坂で13秒2、12秒6とメイショウテッコンが息を入れ、藤岡佑介騎手がすかさずステイフーリッシュを促し、労せずメイショウテッコンとの間合いを詰める。後続もこの地点からじわじわと動いていく。

 

後続が押し寄せる下り坂から再びペースをあげるメイショウテッコンステイフーリッシュは遅いラップの地点でメイショウテッコンを射程内に入れていたが、他馬はこの速いラップの下りで追い上げねばならないので、当然ながら苦しい走りを強いられてしまう。

 

藤岡佑介騎手はこの状況にニヤリとしたはずだ。なぜなら、このレースはこの時すでにステイフーリッシュに主導権が渡ったからだ。直後にいたタニノフランケルケイティクレバーの走りに余裕がないのはその証拠だ。この組は厳しいラップを超えねば前との差が詰められない。一瞬だが間を置いて大外を追い上げるのがアドマイヤアルバフランツはドン尻から懸命に追いかけるが、思うように加速していかない。

 

藤岡佑介騎手は握った主導権をここで他に渡すつもりはなく、メイショウテッコンを早々に捕らえてステイフーリッシュを先頭へ立たせる。まだまだ手応えは十分だ。追いすがってくるアドマイヤアルバ、直線で行き場を失いかけたシャルドネゴールドが馬群を突き破って走る。しかし、もうステイフーリッシュは射程圏内からは外れている。藤岡佑介騎手の思惑に応えるようにステイフーリッシュが力強く駆ける。上り坂で奪った主導権を握ったまま藤岡佑介騎手とステイフーリッシュは先頭でゴール板を通過、ダービーへの出走権も手中に収めた。

2着アドマイヤアルバ、3着シャルドネゴールド、時計は2分11秒0(良)。

 

全着順 

第66回 京都新聞杯(GⅡ)3歳オープン(京都・芝2200m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ステイフーリッシュ
牡3
藤岡佑介
 2:11.0
2
アドマイヤアルバ
牡3
岩田康誠
1.3/4
3
シャルドネゴールド
牡3
H.ボウマン
ハナ
4
グローリーヴェイズ
牡3
浜中俊
3/4
5
メイショウテッコン
牡3
松山弘平
クビ
6
ユーキャンスマイル
牡3
荻野琢真
ハナ
7
アルムフォルツァ
牡3
池添謙一
1/2
8
インターセクション
牡3
荻野極
1.3/4
9
ケイティクレバー
牡3
四位洋文
1/2
10
フランツ
牡3
M.デムーロ
3/4
11
レイエスプランドル
牡3
藤岡康太
1.1/4
12
リシュブール
牡3
福永祐一
ハナ
13
アールスター
牡3
松若風馬
クビ
14
レノヴァール
牡3
北村友一
1.1/2
15
◯地ダブルシャープ
牡3
和田竜二
1/2
16
ロードアクシス
牡3
酒井学
クビ
17
◯外タニノフランケル
牡3
幸英明
クビ

 

 

1~3着馬コメント

1着ステイフーリッシュ

暮れのGⅠホープフルステークスで最後に追い込んで3着に入り、3歳シーズンで期待されたが、年明けの共同通信杯は馬体減とイレ込みで競馬に参加できなかった。矢作調教師は皐月賞から目標を切り替えた。これが見事に立て直しを成功に導いた。主戦の中谷雄太騎手の落馬休養を受けて藤岡佑介騎手にスイッチした選択もあの先行策を見れば大正解だと言える。これで藤岡佑介騎手は今年、京都記念(クリンチャー)、日経賞(ガンコ)、京都新聞杯(ステイフーリッシュ)と中距離GⅡだけで重賞3勝目。積極的な作戦が功を奏している。

3角手前でラップが落ちたとはいえ、前半1000m58秒5というやや速い流れを先行して抜け出した内容はダービーでも自信をもって挑める。

 

2着アドマイヤアルバ

伏兵ながら直線でステイフーリッシュをただ1頭追い詰めた。父ハーツクライらしく勝ち切れない競馬を続けているが、500万下を勝ち、GⅡ2着ときっかけをつかんだ印象。今後も厳しい流れなら浮上してくる底力型。先週のレインボーラインもそうだが、岩田康誠騎手の手綱も冴えている。

 

3着シャルドネゴールド

葉牡丹賞で皐月賞3着ジェネラーレウーノの2着の後、暮れの阪神で青葉賞2着のエタリオウを下して500万下を勝った素質馬。年明けの毎日杯では7着敗退したが、ここで巻き返してきた。ただし、4角でややスムーズさを欠いていた点が悔やまれる。ステイフーリッシュのように自分で主導権を奪えない現状は歯がゆいだろう。

 

 

総評

ステイフーリッシュが京都新聞杯を勝ったことで、父ステイゴールドは産駒を送った全世代で重賞制覇という偉業を達成した。06年マーメイドステークスのソリッドプラチナムから12年。父ステイゴールドは産駒を送り始めた頃は牝馬に活躍馬が多く、やや非力な印象もあったが、今やこうして牡馬にも力強い走りをする馬もいる。偉大な父だ。ステイフーリッシュは近親にブラックホークピンクカメオと東京マイルGⅠ勝ち馬がいるスピード、スタミナ兼備の血統だ。ステイゴールドの勝負強さも加われば……、可能性は高い。

 

人気のフランツグローリーヴェイズタニノフランケルはこのチェンジオブペースを求められる厳しい流れに力を出し切れなかった。京都2200mらしいスタミナを問われる流れと春の京都らしい高速馬場が合わなかったのだろうか。今後は秋を見据えて再チャレンジに切り替えていきたい。

このレースの10分後に行われた東京のプリンシパルステークスをコズミックフォースが制し、これでダービーへの道はほぼ完結。さあ、競馬の祭典日本ダービーへ。

 

 

(勝木淳)

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