【重賞回顧】第23回NHKマイルカップ(GⅠ)

想定外を乗り越えて腹を括った直線一気、鞍上と共に勝ち取った悲願のG1初制覇

誰が勝ってもおかしくないNHKマイルカップ

 

想定通りにいかないことというのは世の中の常だろう。

ましてや勝負事、競馬ではゲートが開いてからはなにがおこるかわからない。

 

3歳マイル路線の頂点を決めるNHKマイルカップも今年で23回目。歴史に名を残す名馬が勝った年もあれば、まさかの人気薄が1着に飛び込んでくることもそれこそ何度もあった。

今年はどんなレースになるだろうか。

実はレースが始まる前から情勢は動き出していた。

 

2週前、武豊騎手に騎乗停止処分が下った。

これにより、騎乗予定だった前哨戦であるニュージーランドトロフィー2着である有力馬ケイアイノーテックに騎乗できないことになった。代役には藤岡佑介騎手が指名された。

1週前にはアーリントンカップをレコード勝ちしたタワーオブロンドンの英国遠征計画が報道された。調教過程でも順調さがアピールされ、レースの中心的存在だ。

毎日杯2着のギベオンは陣営がダービーに向けた進路も検討しているという。

ロックディスタウンに騎乗する池添騎手はここを勝つと史上2人目の3歳GⅠ完全制覇だ。オルフェーヴルの娘だけに凡走後の激走があってもおかしくない。

ミスターメロディは初芝のファルコンSでも適性の高さをみせた。ニュージーランドトロフィーの勝ち馬カツジ、桜花賞で無念の競馬だったプリモシーン、兄姉が活躍した舞台で期待される、パクスアメリカーナレッドヴェイロンルーカスも虎視眈々と戴冠を狙う。

その中で、1番人気に支持されたのはタワーオブロンドン。実力は頭一つ抜けているというのがもっぱらの評価であった。このレースを手土産にその名の通りに英国に乗り込めるのか、そういった雰囲気があったことは否めない。

 

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想定外を乗り越えた直線一気

 

レース当日、想定外の事態は次々起こる。

 

パドックでロックディスタウンが急に立ち上がり、そのまま派手に転倒した。

何事もなかったようにレースに向かうロックディスタウンにオルフェーヴルの子らしいなと感じるよりも、馬体検査はしなくて大丈夫なのかと見ている方が不安、心配になる出来事だった。

そして、本馬場入場に向かう途中、ギベオンが落鉄。蹄鉄を履き替え、1頭だけ返し馬が遅れた。

NHK交響楽団による丁寧な演奏のファンファーレに安心したのも束の間、問題はゲートインだ。1頭ずつすんなりと入っていく様子にほっとする。

 

しかし、スタート後、3頭が遅れをとる。

人気の一角、プリモシーンカツジケイアイノーテックの3頭だ。

また想定外のことが起きた。

 

逃げるであろうカシアスはテンで飛ばさず、その代わりに先頭に向かったのはダノンスマッシュ。内から先頭に迫り、テトラドラクマがハナを奪い、そのまま半馬身先頭で走り続ける。続いてフロンティアファストアプローチ、外から先頭に接近するのはミスターメロディギベオンカシアスがつづいて、内から出遅れて後方にいたカツジが脚を伸ばして一気に先頭集団へ上がってくる。出遅れを取り戻そうと早めの動きだ。外からはロックディスタウンもあがっていく。

最初の600m通過タイムは34.4。

先頭集団が大きな塊となっていた。スローのように見えて意外と速い。中団はほとんど差がなく、これも一団に。パクスアメリカーナリョーノテソーロレッドヴェイロン。そのやや後ろにタワーオブロンドンが内に進路をとり、ひっそりとしていた。

後方に控えているのはアンコールプリュプリモシーンルーカス、そして、ケイアイノーテックデルタバローズ

3コーナーから4コーナーへ。

先頭はテトラドラクマダノンスマッシュが譲らない。

まだタワーオブロンドンは身動きがとれない馬群の中だ。最後方からはケイアイノーテックが動きだす。

直線の攻防、テトラドラクマダノンスマッシュが一瞬先頭を争うが、脚色は鈍っていた。その2頭を置いていくようにミスターメロディが飛び出す。

しかし、負けじとギベオンが間から先頭に踊り出す。

坂を上がりきっても、1番人気タワーオブロンドンの姿は見えない。

外から脚色よく伸びてくるのはレッドヴェイロン、内にパクスアメリカーナもいるが、レッドヴェイロンには追い付けない。先頭のギベオンに迫る勢い。

さらに猛烈な勢いで今日の主役は俺だとばかりに最後方にいたケイアイノーテックが一気に迫りかかる。4頭が固まってゴール前に並んだ。

場内に響く実況がこの日一番大きな声をあげた。

「ケイアイ ノーテック!」

GⅠ2着7回の鞍上が有力馬への乗り替わりのチャンスで、素質馬を栄冠へと導いた瞬間だった。

 

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全着順

第23回 NHKマイルカップ(GⅠ)3歳オープン(東京・芝1600m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ケイアイノーテック
牡3
藤岡佑介
 1:32.8
2
ギベオン
牡3
M.デムーロ
クビ
3
レッドヴェイロン
牡3
岩田康誠
アタマ
4
◯外ミスターメロディ
牡3
福永祐一
3/4
5
プリモシーン
牝3
戸崎圭太
クビ
6
パクスアメリカーナ
牡3
川田将雅
1.1/4
7
ダノンスマッシュ
牡3
北村友一
クビ
8
カツジ
牡3
松山弘平
1.3/4
9
◯外デルタバローズ
牡3
石橋脩
ハナ
10
カシアス
牡3
浜中俊
クビ
11
◯外リョーノテソーロ
牡3
吉田隼人
1.1/4
12
タワーオブロンドン
牡3
C.ルメール
クビ
13
フロンティア
牡3
内田博幸
クビ
14
テトラドラクマ
牝3
田辺裕信
クビ
15
ファストアプローチ
牡3
蛯名正義
3/4
16
ルーカス
牡3
H.ボウマン
3
17
アンコールプリュ
牝3
藤岡康太
1/2
18
ロックディスタウン
牝3
池添謙一
大差

 

 

1~5着馬コメント

1着 ケイアイノーテック 3歳牡 藤岡佑介騎手 6番人気

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出遅れながらも、見事な直線一気でゴボウ抜き。上がり33秒台はこの馬1頭だけだ。

藤岡佑介騎手は乗り替わりのチャンスをものにした。スタートで行き遅れたので腹を括ったとはレース後の藤岡騎手の言葉だが、予定外の出遅れを逆手にとった作戦が功を奏した。母ケイアイガーベラはダート重賞で活躍した馬だけに血統だけではない競馬の面白さを感じる。中距離路線にも視野に入れるというので今後の進路も気になるところだ。

 

2着 ギベオン 3歳牡 M.デムーロ騎手 2番人気

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先頭集団がみな脱落した中、早めに直線抜け出し、攻防の主役となっていたが、ゴール前に勝ち馬の末脚に屈した。2着まで粘りこむところは中距離路線を戦ってきただけのスタミナがある。

次戦はダービーに行くのか、注目したい。

 

3着 レッドヴェイロン 3歳牡 岩田康誠騎手 9番人気

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半兄クラレントと同じ着順を確保。前に粘るギベオンと外から差してきた勝ち馬とも、それほど差はない。今は人気薄でも、これからのマイル重賞で活躍が期待される1頭だ。余談だが同日の9Rに半姉のレッドオルガが同じ1600mの湘南S(1600万下)を勝っていた。翌週には姉レッドアヴァンセが同じ舞台のヴィクトリアマイルを走る。こちらも注目だ。

 

4着 ミスターメロディ 3歳牡 福永祐一騎手 7番人気

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ダートで勝ち上がり、初めての芝でありながら、勝ち切ったファルコンS。芝のマイルでの走りも初めてながらもGⅠの直線で見せ場をつくり、ギベオンとともにハイラップでも粘り込みを果たす。今後はダート兼用になるのかは不明だが、今流行りの二刀流も面白いのではないだろうか。

 

5着 プリモシーン 3歳牝 戸崎圭太騎手 5番人気

出遅れたことで展開が味方したのか、これが本来の実力だというのか、牡馬に混じって掲示板を確保。桜花賞が残念な競馬だっただけに、力はあることを見せてくれた。なかなか想定通りにはいかないだろうが、自分の競馬ができればけっして牡馬にだって見劣りしないことを証明してくれた。

 

 

総括

海外遠征が発表されていたタワーオブロンドンが直線、馬群に阻まれ、なおかつ不利まで受けてまったく競馬をしていない。大勝負に大本命が競り合いに参加できていないのは残念な限り。だが、勝負事である以上、こういうこともある。想定通りにはいかないものだ。

一方で出遅れという想定外のことがあったにもかかわらず、腹を括って直線一気に賭けた藤岡佑介騎手の導きによって、ケイアイノーテックはライバルたちをまとめて差し切ることができた。

藤岡佑介騎手と言えば、弟康太騎手もNHKマイルカップ(2009年ジョーカプチーノ)が初GⅠ。同じ頃、兄佑介騎手はスーパーホーネットでマイルGⅠを連続2着しており、悔しい思いをしたに違いない。

あれから十年近く経ち、もう若手というより中堅の世代になっていく藤岡佑介騎手。

想定外の乗り替わりでつかんだチャンスを見事ものにした。

今後の騎乗予定はわからない。

しかし、ケイアイノーテックと藤岡佑介の名前は残っていく。

想定通りにいかなくても、勝つことで名前が残っていくのが勝負であり、競馬なのだ。

 

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(みすてー)

(写真・かぼす)

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