【重賞回顧】第13回ヴィクトリアマイル(GⅠ)

雨に煙る府中、美しき牝馬の共演。まるで幻の絵画を見ているかのような。第13回ヴィクトリアマイル

 

19世紀後半、大英帝国の隆盛期はヴィクトリア朝と呼ばれる。それは1837年に即位したヴィクトリア女王の時代を示している。ヴィクトリアが女王になった当時、イギリスは他国の産業革命に追い上げられ、自国の不作の影響を受けて苦しい時代だった。ヴィクトリア自身が何かをしたわけではないが、そんな苦難から再度の栄光まで大英帝国の象徴として女王は君臨した。最後にはインド帝国の女帝になるヴィクトリアは誇り高き女性とも評される。

人々の敬意と誇りを背負った女性、ヴィクトリア。その名前を戴いた春の女王決定戦、ヴィクトリアマイル。女帝ヴィクトリアに負けず劣らずの名牝が歴代チャンピオンに並ぶ。

初代のダンスインザムードからウオッカブエナビスタアパパネヴィルシーナ、気品あふれる顔をした女王たちばかりだ。個人的には品と愛嬌と顔の小ささでアパパネが最も美しいと感じるのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。

 

1番人気リスグラシューは品性あふれる美人顔。昨年クラシックは2、5、2着と女王に一歩及ばずという成績。年明け東京新聞杯で久々に重賞を勝ち、重賞2勝はいずれも東京マイル。この舞台でこそ、悲願の女王戴冠を目指す。

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昨年の女王アドマイヤリードが続く2番人気。この1年勝ち星はないが、この舞台設定でこそ復活を期す。競馬場でも調教でもマスク姿の彼女だが、想像するにかなり美人だ。

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クロフネの娘で芦毛のアエロリットは東京マイルのNHKマイルカップでGⅠタイトルをつかんだ。古馬相手のクイーンステークスを逃げ切るなど快速ぶりを発揮した。中山記念ではしぶとい走りで2着、さらに力をつけている。こちらは黒いマスクがトレードマークだが、クロフネの娘らしいなんだか愛くるしい顔だ。

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阪神牝馬ステークスも含めて4連勝で重賞連勝中のミスパンテール。昨秋からの勢いで言えば出走馬中ナンバー1。堂々のGⅠ挑戦だ。こちらはややキツめの美人顔。気が強い内面を感じさせる美しきアスリートのようだ。

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昨年のオークス馬ソウルスターリングは毎日王冠や天皇賞(秋)と厳しい相手と戦って経験を積んだ。その中でみせた能力の高さを考えれば、ここで復活しても当然の結果と言える。顔も出走馬中で1、2を争う美人顔。フランケルの娘らしい内に秘めた闘志がその美貌をさらに際立たせている。

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愛嬌あふれるレッツゴードンキ、ちょっと控えめな雰囲気なレッドアヴァンセ、西園正都厩舎の星マークで隠されたジュールポレールは小顔で目元が印象的だ。この他も美人揃いのヴィクトリアマイルは雨のカーテンに包まれ、さながら1枚の絵画のようだ。

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美しき戦い、それは実に過酷で果敢なドラマ

 

霞む向正面のスターティングゲートから一斉に飛び出す18頭。鮮やかな編み込みでお馴染みのクインズミラーグロが大きく出遅れ、白いマスクからのぞく大きな瞳が目立つカワキタエンカがここ2戦の重賞同様に先手を取る。内からマスクの下に整った流星を隠しているレーヌミノル、外から凛々しい顔つきのリエノテソーロが好位にとりつき、3列目は内からレッツゴードンキ、かわいらしい顔をマスクで覆ったラビットランレッドアヴァンセアエロリットと固まって進む。外のアエロリットはやや積極的な様子だ。

その背後をミスパンテールジュールポレールが走り、ソウルスターリングアドマイヤリードも続く。後方に勝負服と同じマスクのエテルナミノルリスグラシュー、小顔でちょっとあどけなさを残すデンコウアンジュ、マスクの下から美顔が覗くメイズオブオナー、意志の強そうな瞳のワントゥワン、黒目が印象的なデアレガーロが構えてクインズミラーグロが最後尾を走る。

 

前半800m46秒8とカワキタエンカのマイペース。どの馬も気分良さそうに追走する。直線に向いてカワキタエンカや好位勢を外から交わしにいくアエロリット。道中の積極的な走りそのままに果敢に先頭へ向かう。アエロリットはそう簡単に止まらないスピードの持続力というセールスポイントを府中の直線で存分に活かす。そこにレッドアヴァンセが挑む。しかし勢いはレッドアヴァンセながら、交わせそうでなかなか捕らえられない。アエロリットが食い下がっているからだ。早く振り切りたいレッドアヴァンセアエロリットの叩き合いはこのレースの最速ラップをマークする。

レッドアヴァンセアエロリットに抵抗されているうちに外からジュールポレールリスグラシューがやってくる。アエロリットを振り切ったレッドアヴァンセに外の2頭へ抵抗する余力はなかった。最後のスポットライトはジュールポレールリスグラシューに当てられた。ゴール寸前のハイライト、リスグラシューの猛追を気力でハナだけ凌いだジュールポレールが主演の座を勝ち取った。リスグラシューはまたもGⅠ2着敗退。勝ち時計は1分32秒3(やや重)。3着はレッドアヴァンセが粘りこんでいた。

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全着順

第13回 ヴィクトリアマイル(GⅠ)3歳オープン・牝馬(東京・芝1600m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ジュールポレール
牝3
幸英明
 1:32.3
2
リスグラシュー
牝3
武豊
ハナ
3
レッドアヴァンセ
牝3
北村友一
クビ
4
アエロリット
牝3
戸崎圭太
1/2
5
ミスパンテール
牝3
横山典弘
1.1/4
6
レッツゴードンキ
牝3
岩田康誠
1/2
7
ソウルスターリング
牝3
C.ルメール
アタマ
8
アドマイヤリード
牝3
M.デムーロ
1.3/4
9
ワントゥワン
牝3
藤岡佑介
クビ
10
レーヌミノル
牝3
和田竜二
クビ
11
メイズオブオナー
牝3
福永祐一
1.1/4
12
デンコウアンジュ
牝3
蛯名正義
クビ
13
◯外ラビットラン
牝3
川田将雅
ハナ
14
カワキタエンカ
牝3
大野拓弥
1.1/4
15
◯外リエノテソーロ
牝3
吉田隼人
1/2
16
デアレガーロ
牝3
池添謙一
クビ
17
エテルナミノル
牝3
四位洋文
1/2
18
クインズミラーグロ
牝3
藤岡康太
1.1/2

 

 

1~3着馬コメント

1着ジュールポレール(8番人気)

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昨年の3着馬だけに力は十分にあった。しかし、昨夏に降級し準オープンを勝ってから賞金加算ができず、本賞金2,100万円は出走馬中17番目だった。待望の賞金加算がなんとGⅠ勝利。阪神牝馬ステークスでゴール前大きな不利を受けたが、今日は中団からスムーズな追走、直線も外へ出して能力を引き出した幸英明騎手も溜飲を下げただろう。母サマーナイトシティサダムパテックの半妹だけに今後もマイル路線なら崩れないだろう。

 

2着リスグラシュー(1番人気)

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これで3度目の2着、どうしてGⅠを勝てないんだろうか。父ハーツクライらしいと言えばそれまでだが、今回も不利なく能力を出しているだけにゴール板でハナだけ捕らえられないのは陣営ももどかしいだろう。東京マイルへの適性は出走馬ナンバー1だけに痛い敗戦だ。しかし、いつもどんな環境でも必ず力を出し切る姿は美しい。

 

3着レッドアヴァンセ(7番人気)

前哨戦の阪神牝馬ステークス2着の勢いそのままに好走。今回はアエロリットの底力に手を焼いた印象。早めにアエロリットを競り落とせれば、後ろから来る馬たちにもう少し力を残して抵抗できていただろう。それでも3着を確保しているのは地力強化の証。この春の勢いに底力がついてくればさらに活躍できるだろう。

 

 

総評

あいにくの雨は第13回ヴィクトリアマイルをさらに儚く美しく彩った。淑女たちの競演はただ綺麗なだけではなく、厳しい競走になった。特に直線入り口から叩き合ったレッドアヴァンセアエロリットのつばぜり合い、ゴール前のジュールポレールリスグラシューの叩き合いは熾烈なる女の意地の張り合いのようだった。前半800m46秒8後に対して後半800mは45秒5、静寂の幕開けから怒涛のクライマックスへ。

今年も女帝ヴィクトリアのような美しさと力強さ、気高さを表現した淑女たちによる極上のドラマだった。

 

 

 

(勝木淳)

(写真・よしフォト)

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