【重賞回顧】第35回エプソムカップ(GⅢ)

エプソムは雨が似合う。馬場が明暗を分けた第35回エプソムカップ

 

エプソムカップ、春の東京開催も終わりかとつい物思いに耽ってしまうオールドファンは多いだろう。かつては春の東京のフィナーレを飾る重賞だったが、開催日割が変わり、東京は6月一杯まで開催が続く。開催日割も変わったが、クラス再編成の時期も変化していき、かつては東京終了後の福島開催から4歳降級が実施されていた。ここ10年、エプソムカップを4歳馬が7勝と圧倒、降級直前と降級直後で様変わりした。

 

降級直前の4歳馬には降級待ちの馬もいたが、降級直後となれば、本賞金半額後もオープンに残る4歳馬はこの1年でオープン特別勝ち以上の結果を残している馬に限られる。オープン頭打ちは不在となり、これから先を十分展望できる馬が揃う。加えて4歳は賞金半額後なので、賞金加算必至の状況を迎えている。

 

1番人気ダイワキャグニーは3歳秋キャピタルS、今春メイSと東京の芝1600、1800のオープン特別2勝の東京巧者。エプソムカップは絶好条件。

 

2番人気サトノアーサーはクラシック戦線で期待された素質馬だが、きさらぎ賞、毎日杯と2着惜敗。2月洛陽S(京都1600m)を勝ち、賞金加算したが、本賞金1,800万円。

 

3番人気の5歳サーブルオールは年明け2戦2勝でオープンへ昇級。東京コースは1000万下で2勝を挙げる得意舞台。

 

4番人気は同じく5歳のハクサンルドルフ、ここ2戦出遅れや不利がありながらオープンで上がり最速の末脚。充実期を迎えている。

 

以下、6歳グリュイエール、2年振りに出走する5歳スマートオーディン、7歳アデイインザライフなど東京の重賞らしく末脚自慢が出揃った。

 

 

12年ぶりに天候発表は雨

 

エプソムカップと聞いて、道悪を浮かべるオールドファンも多い。入梅直後のこの時期は当然ながら雨が多く、エプソムカップも天候発表・雨や良馬場以外での施行が多かった。アメリカンボスが1番人気でこのレースを連覇した00年は雨の不良、03、04年マイネルアムンゼンの連覇はいずれも馬場はやや重、後藤浩輝が7番人気の伏兵トップガンジョーで勝った06年は雨の重馬場。翌年のエイシンデピュティが曇りのやや重、以来、不思議なことにエプソムカップは雨に見舞われず、良馬場続きだった。

 

18年第35回エプソムカップは12年ぶりに天候雨、重馬場で施行された。

 

雨の中、2角に置かれたスターティングゲートから飛び出す16頭。アデイインザライフが出遅れ、マカヒキが勝った日本ダービー以来、ターフを走るスマートオーディンがハナを奪い、レースを主導する。インからマイネルフロストが番手にいき、外からシャイニープリンス、中からベルキャニオン、内からブラックスピネルが先行集団を形成。中団にマイネルミラノサトノアーサーダイワキャグニーグリュイエールと人気勢が固まり、後方にバーディーイーグルサーブルオールエアアンセムゴールドサーベラスハクサンルドルフアデイインザライフと続く。

 

武豊騎手が久々の競馬なので気分を損ねないように走らせたスマートオーディンが刻んだペースは前半1,000m59秒6と雨、重馬場を考えればやや強気な流れ。残り1,000mで一度12秒を刻んでペースは緩んだが、そこから11秒9-11秒9と加速、4角でかなり外を回ったスマートオーディンに後続が殺到し、ガラ空きのインにマイネルフロストマイネルミラノが飛びこむ。距離を損しても馬場がいい外を回るか、馬場の悪い部分を承知で最短距離を狙う馬、道悪競馬は騎手それぞれの戦略に違いがあって趣き深い。ダイワキャグニーは馬群から抜けられず、手応えはあったが、進路を失ってインに入ったサーブルオールは荒れたインでもがき、外からグリュイエールサトノアーサーが抜け出す。力の要る馬場、道中の厳しい流れに最後の1ハロンは12秒5と失速。ゴール前はバテ合いの形相へ。それを一歩先に抜け出したアドバンテージを活かしたサトノアーサーがしのぎきり、待機策から直線大外に出して末脚に賭けたハクサンルドルフグリュイエールを交わして2着、グリュイエールが3着に粘り込んだ。勝ち時計1分47秒4(重)。

 

全着順

第35回エプソムカップ(GⅢ)3歳以上オープン(東京・芝1800m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
サトノアーサー
牡4
戸崎圭太
 1:47.4
2
ハクサンルドルフ
牡5
川田将雅
1/2
3
グリュイエール
牡6
福永祐一
3/4
4
サーブルオール
牡5
C.ルメール
1/2
5
エアアンセム
牡7
藤岡佑介
2.1/2
6
ベルキャニオン
牡7
石橋脩
クビ
7
ゴールドサーベラス
牡6
 大野拓弥
クビ
8
バーディーイーグル
牡8
三浦皇成
ハナ
9
マイネルフロスト
牡7
柴田大知
クビ
10
ブラックスピネル
牡5
石川裕紀人
2.1/2
11
マイネルミラノ
牡8
丹内祐次
3
12
スマートオーディン
牡5
武豊
クビ
13
トーセンマタコイヤ
牡7
柴田善臣
1/2
14
ダイワキャグニー
牡4
横山典弘
クビ
15
アデイインザライフ
牡7
北村宏司
5
16
シャイニープリンス
牡8
勝浦正樹
大差

 

 

1~3着馬コメント

1着サトノアーサー(2番人気)

待望の、いや遅すぎたぐらいの重賞タイトル獲得。3歳からクラシック最有力候補と言われながら、ここまで未タイトルだったのは不思議なぐらいだ。降級で本賞金1,800万円、ここで勝てなければ思うようなローテーションを組めなくなる状況だっただけに関係者は安堵しただろう。ディープインパクト産駒らしい切れ味が武器だと思われていたが、今年に入ってあげた2勝はやや重と重馬場、実は力が要る馬場、道悪でこそ力を発揮するタイプ。

 

2着ハクサンルドルフ(4番人気)

じわじわと力をつけ、重賞連対を果たした。昨秋東京の極悪馬場でも準オープンで上がり最速の脚を使って差し切り勝ちをした道悪巧者。オープン昇級後も僅差のレースを続け、力をつけたことを証明。厳しい流れと上がりかかる展開を味方につけたとはいえ、確実に上がり最速が使える安定性は今後も武器になる。

 

3着グリュイエール(5番人気)

4歳春から2年間も屈腱炎のため休養し、休み明けで準オープンを快勝してオープン昇級を果たした不屈の馬。3歳から大事に使われており、まだ14戦目。ようやく自身の力を発揮しはじめたところ。これからも無事に走り、能力を披露してもらいたい。

 

 

総評

 

ここ数年、エプソムカップは4歳が強い。賞金面の事情もあるが、クラシック戦線で期待されながら力を発揮できなかった馬たちが復活する舞台でもある。10年セイウンワンダー、12年トーセンレーヴ、13年クラレント、16年ルージュバック、そして今年のサトノアーサー。実力馬の復活というテーマが隠されており、今年もその通りの結果となった。対照的に同じ4歳ダイワキャグニーは14着大敗。こちらは戦前からいわれていたように道悪によって力を出し切れなかったようだ。

 

春の東京はほぼ雨に降られず開催が続いていた。好天の下でレースが行われるのは歓迎だが、異様に硬い馬場と怖くなるほど連発される速い時計は考えさせられる。決まってGⅠレース後に出走馬の故障の知らせがもたらされ、本当にこれでいいのかと立ち止まりたい気分になる。競馬は単に馬の脚の速さを比べるものではない。もし、単純な速さ比べであれば、馬場状態、コースレイアウト、距離も負担重量も不要な概念である。何より、速さ比べならば十数頭が一緒に競走する必要もない。競馬はそうした安易なものではなく、ただ時計が速くある必要が本当にあるのか。競馬ファンはこの部分も考えてみたい。12年ぶりの雨の重馬場だったエプソムカップを振り返れば、こうした速さだけでは決まらないレースの色合いを感じられるのではなかろうか。

 

 

(勝木淳)

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