【重賞回顧】第54回札幌記念(GⅡ)

大接戦。勝負を分けるコースの妙。第54回札幌記念

 

札幌競馬場の歴史はなかなか複雑だ。芝コースができたのは29年前の1989年。それ以前はダートコースのみで競馬をしていた。加えて、1974年までは左回りで競馬が行われていた。今のような右回りの芝、ダートの2コースという形になって30年経過していない。札幌記念は今年で54回目、ダートと芝両方で施行される歴史を持つ珍しい重賞だ。

かつてエアグルーヴを管理した名伯楽伊藤雄二調教師は頻りに真夏に有力馬が集まる札幌記念をGⅠにしたらどうかと話していた。私のような本州に住む人間には分からないが、北海道の夏は想像以上に涼しく、それも足早だ。標高が高い山岳部から雪の便りが届き、8月の3週目は夏の終わりではなく秋の始まり、そして長い長い冬への入口が。北海道の競馬ファンのために札幌記念をGⅠにしようじゃないかと師は主張したのではないだろうか。

 

今年の札幌記念もフルゲート、重賞勝ち馬が多数出揃った。

注目は2年前のダービー馬マカヒキだ。4歳シーズンは勝ち星に恵まれず、ジャパンカップ後に骨折が判明、9ヶ月ぶりの復帰戦を札幌記念と定めて調整された。

 

2番人気は春にマイラーズカップをレコード勝ちしたサングレーザー。安田記念5着とトップクラスでも戦えるだけの能力を証明。2000m戦のここは秋にどの路線を進むのかという意味で試金石となる。

 

3番人気のミッキースワローは3歳時にセントライト記念を勝ち、明け4歳シーズンはAJCC2着、GⅠ大阪杯5着、ベストの小回り2000m、この舞台で2つ目の重賞タイトルを狙う。

 

他にもエリザベス女王杯勝ちのモズカッチャン、香港クイーンエリザベスⅡ世カップ勝ちのネオリアリズムと今年も役者は揃った。

 

戦前から注目されたのは逃げ争い。最内枠を引いたマルターズアポジーと逃げ宣言をした大外枠のアイトーン、3歳ダービーでも見せ場を作り、逃げ戦法で連勝中のマイスタイルと活気あふれる流れが予想された。

 

札幌競馬場の芝コースはJRAで最もコーナーがコースに占める割合が大きい。ゴール板がかなり1コーナー寄りに設定されているのは、直線部分が短いためでもある。円形に近く、函館ほど高低差がないコースレイアウトは4角でインを回る先行馬に有利な舞台であり、コースロスが結果を分ける。逃げ馬にとってよりなんとしてでも逃げたいコースだ。

 

スタートを決めてラチ沿いを真っ直ぐ逃げるのはマルターズアポジー。正面直線部分を一杯に使う2000m戦においても枠の差は大きかった。大外枠のアイトーンは国分恭介騎手が出ムチを連打、手綱を激しく動かすもハナには行かれない。ネオリアリズムマイスタイルも番手を狙う。番手だけは死守しようとアイトーンの国分恭介騎手は1角を過ぎても手綱を押す。マルターズアポジーのマイペースにアイトーンが自然と絡む形になり、長い1、2角を過ぎてもマルターズアポジーはペースを落とせない。厳しいペースを避けるように間をあけてネオリアリズムマイスタイルが追走し、クロコスミアスティッフェリオが続いてインでサングレーザーがじっとしている。青葉賞馬ゴーフォザサミット、昨年の札幌記念の覇者サクラアンプルールアストラエンブレムミッキースワロー、新潟大賞典を勝ったスズカデヴィアスが中団馬群を形成。後方にサウンズオブアースナイトオブナイツマカヒキが位置し、モズカッチャンが後方待機。

 

1000m通過地点で流れは若干落ち着いたが、それでも通過タイムは59秒1と札幌としては厳しいペースになり、マルターズアポジーアイトーンも3角からの勝負所で思うようにペースが上げられず、そんな状況を感じたマイスタイルが早めにスパートし、アイトーンを交わしてマルターズアポジーに並びにいく。その後ろのネオリアリズムゴーフォザサミットスティッフェリオサウンズオブアースサクラアンプルールらが合わせてマクリ気味に上がったので、その後ろにいたマカヒキは大きな弧を描く札幌特有のコーナーで6頭以上外を回って進出した。対称的に周りが動いた時にインでじっとしているサングレーザーモズカッチャンマカヒキのさらに外へ行くのはロスが大きいと判断したのか、ドン尻から馬群に突っ込むような進路をとった。

 

直線半ば、伏兵勢のサクラアンプルールスティッフェリオサウンズオブアースらが抜け出そうとするが、思うように伸び切れない。そこへ外からマカヒキが鋭く伸びる。ダービー馬復活勝利かと思われたとき、勝負所でインでじっとしていたサングレーザーが伸びあぐねる馬たちの間隙を縫うように抜けてくる。それに抵抗するマカヒキ、馬群を抜けながら最後はマカヒキの外に進路をとったモズカッチャンも猛追。

 

3頭がキレイに並んだゴール板。マカヒキをハナ差捕らえたのがサングレーザーモズカッチャンはこの2頭に僅かに及ばなかった。時計は2分01秒1(やや重)。

 

 

全着順

第54回札幌記念(GⅡ)3歳以上オープン(札幌・芝2000m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
サングレーザー
牡4
福永祐一
 2:01.1
2
マカヒキ
牡5
C.ルメール
ハナ
3
モズカッチャン
牝4
M.デムーロ
アタマ
4
サウンズオブアース
牡7
藤岡佑介
3/4
5
スティッフェリオ
牡4
丸山元気
1.3/4
6
◯地サクラアンプルール
牡7
吉田隼人
ハナ
7
ゴーフォザサミット
牡3
蛯名正義
1.1/4
8
クロコスミア
牝5
勝浦正樹
3/4
9
マイスタイル
牡4
田中勝春
2
10
ナイトオブナイツ
牡5
池添謙一
1/2
11
アストラエンブレム
セ5
藤岡康太
1/2
12
スズカデヴィアス
牡7
三浦皇成
クビ
13
ミッキースワロー
牡4
横山典弘
2.1/2
14
ネオリアリズム
牡7
J.モレイラ
1/2
15
マルターズアポジー
牡6
柴田善臣
クビ
16
アイトーン
牡3
国分恭介
9

 

 

1~3着馬コメント

1着サングレーザー(2番人気)

距離適性を計る一戦で結果を出した。前が引っ張る流れの中、インでやや行きたがるような素振りを見せるが、福永祐一騎手のとにかくインにこだわった戦略が見事に決まった。コーナーが大きい札幌芝コースではこれ以上ないロスなき作戦だが、前が詰まるリスクを抱えることにもなる。案の定、レースが動いたときに通過順位を落としたが、必ず抜けられるという自信すら感じられる落ち着きで馬群を捌いてみせた。マカヒキとの着差はハナしかなかっただけに、福永祐一騎手の戦略が導いた勝利ともいえる。

 

2着マカヒキ(1番人気)

以前からこの馬の武器は最後の爆発力を活かすこと。C.ルメール騎手もその武器を最大限に発揮させるように心がけた。ただ、前の組も積極的に動いたために札幌コースでは最も苦しい大外を回すことになった。並みの馬なら伸び切れないコース取りだが、短い直線を真っ直ぐ駆けてきた姿にダービー馬の力は示した。サングレーザーが来ると差し返すような仕草もあり、まだまだ力は落ちてはいない。今日は舞台が札幌コースだった分、サングレーザーに及ばなかったというところだろう。

 

3着モズカッチャン(4番人気)

M.デムーロ騎手らしい決め打ち騎乗だった。4角でマカヒキの外に行かずに馬群に突っ込んだのは好判断だっただろう。あの大外ではさすがに上位には来れなかった可能性は高いからだ。ただし、ドン尻から馬群に突っ込んだことで進路探しに苦心、最後は大外に出てから猛烈に伸びているだけに惜しい競馬だった。ドバイ帰りでも崩れず走り、この秋、牝馬路線では目が離せない存在だ。

 

 

総評

札幌競馬場という舞台設定を考えてこのレースを見つめると、やはり競馬にとってコースレイアウトは重要なものだと分かってくる。競馬はコースの個性によってさらに面白いものになっている。外を回りながらも先に前へ出たのはマカヒキだった。馬群を捌いた分、遅れたのはサングレーザーだった。しかし、結果はサングレーザーが間に合った。例えば、これが東京競馬場だったら、結果は同じだっただろうか。コーナーロスがない分、踏み遅れ気味だったサングレーザーとコーナーロスをしながらもエンジン全開だったマカヒキ。   

果たして、結末は同じだっただろうか。競馬にたらればは禁物だが、想像することは極めて重要だと思う。これが東京競馬場だったらと想像する、すでにその行為が天皇賞(秋)を見つめる事を意味する。そう、秋はもうすぐそこだ。

 

 

(勝木淳)

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