【重賞回顧】第13回キーンランドカップ(GⅢ)

札幌を知り尽くした人馬の共演。第13回キーンランドカップ

 

夏の競馬を盛りあげるためにJRAがサマーシリーズを始めた2006年、その路線整備のために重賞に格上げされたのがキーンランドC。今年で13回目、キーンランドCの歴史はサマーシリーズの歴史でもある。

2006年の初代サマースプリントチャンピオンのシーイズトウショウはキーンランドCに出走、2着で5ポイントを獲得。2010年はワンカラットが函館スプリントSとこのレースを連勝してシリーズを制した。2012年、パドトロワはアイビスサマーDとここを勝ってチャンピオンに輝いた。サマーシリーズは自然と北海道滞在と本州組に分かれて戦うことが多いので、パドトロワの戦歴は珍しい。これ以後、シリーズチャンピオンがここを使うことはないが、8月終わりのこのレースは次開催中山でスプリンターズSが行われることを考えれば、間隔的にも見逃せないステップレースでもある。

 

最終的に1番人気に支持されたナックビーナスは春の高松宮記念まで冬場のオープン特別や重賞をずっと使われ、常に先行して上位争いができるブレない馬。休み明けの函館スプリントSも安定の先行策から3着と変わらずブレない姿を見せた。タイトルはもう目の前。マジックマンJ.モレイラ騎手が今回は導く。

 

ナックビーナスと1番人気を争ったレッツゴードンキ、6歳シーズンもフェブラリーS5着、高松宮記念2着と奮闘が続く。折り合いを気にしなくていい1200m戦に戻して復活を期す。

 

続くムーンクエイクは春の京王杯SCをレコード勝ちして以来の出走になる。マイルから1400mを中心に使われた馬で、このスプリント路線が合うかどうか、今回はその試金石となる。

 

4番人気は函館で準オープンを勝ったダノンスマッシュ。春はNHKマイルC0秒4差7着という戦歴。単なる上がり馬ではない。3歳、素質溢れる上がり馬だ。

 

以下、安田記念以来のキャンベルジュニア、3歳トゥラヴェスーラデアレガーロなどスプリント戦としては様々な距離を走る多彩なメンバーが集まった。

 

スプリント戦のスタートには特有な緊張感が漂う。歴戦のスプリンターたちはどの馬もスタートが速いので、出遅れれば挽回が難しいからだ。スタート命のスプリント戦で抜群のスタートで飛び出したのがナックビーナス。短距離に強い香港を主戦としていたJ.モレイラ騎手、マジックマンのスタートに思わずため息が出る。

1馬身以上速いスタートを切ったナックビーナスを抑える必要もなく、モレイラ騎手も馬なりのままハナを切る。インからダノンスマッシュタマモブリリアンが番手を競い、オールインワンが外から続く。3列目のインにペイシャフェリシタ、外にキャンベルジュニアがスプリントの流れも難なく追走、間にデアレガーロがいる。

前半の600m通過は33秒7と馬場状態(やや重)を考えると速い。先行力があるナックビーナスだが、自身は34秒台で前半を走ることが多く、ハナにいった今回はやや厳しい流れになった。中団のインにクリーンファンキー、その外にレッツゴードンキ、さらに外からキングハート、後方にスターオブペルシャトゥラヴェスーラ、その後ろにティーハーフ、外を回るヒルノデイバローユキノアイオロス、最後方のムーンクエイクはやや追走に戸惑っている印象だ。

ナックビーナスを無理に追いかける馬はおらず、3角手前の600~800m地点で実は12秒0とペースを落としてナックビーナスは息を入れた。この1秒のペースダウンに後ろの組が反応しなかったことがこのレースの結末を決めたといい。直線に向いて再び加速したナックビーナスは後続を完全に振り切った。

札幌の直線は260m。札幌競馬場を知り尽くしたマジックマンは確信していたにちがいない。ここで振り切ればもう差して間に合う馬はいないことを。これまで重賞ではナックビーナスは先行してゴール寸前で負けてたが、今日は追いかける馬はいなかった。2着は番手争いを制したダノンスマッシュ、3着は2列目のインから抜けていたペイシャフェリシタキャンベルジュニアスターオブペルシャレッツゴードンキら差し馬勢は伸びたものの4,5着争いが精一杯だった。勝ち時計1分9秒4(やや重)。

 

全着順

第13回キーンランドカップ(GⅢ)3歳以上オープン(札幌・芝1200m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ナックビーナス
牝5
J.モレイラ
 1:09.4
2
ダノンスマッシュ
牡3
北村友一
2.1/2
3
ペイシャフェリシタ
牝5
田辺裕信
クビ
4
◯外キャンベルジュニア
牡6
M.デムーロ
1.1/4
5
スターオブペルシャ
セ5
内田博幸
1/2
6
レッツゴードンキ
牝6
岩田康誠
同着
7
トゥラヴェスーラ
牡3
福永祐一
クビ
8
デアレガーロ
牝4
横山典弘
1/2
9
ムーンクエイク
セ5
C.ルメール
クビ
10
ユキノアイオロス
セ10
丸山元気
1.1/4
11
ティーハーフ
牡8
国分優作
1.1/4
12
クリーンファンキー
牝5
武豊
ハナ
13
タマモブリリアン
牝5
古川吉洋
クビ
14
◯地ヒルノデイバロー
牡7
四位洋文
3.1/2
15
キングハート
牡5
S.フォーリー
1/2
16
オールインワン
牡5
戸崎圭太
1/2

 

 

1~3着馬コメント

1着ナックビーナス(1番人気)

1200m戦で安定して先行できる馬だけに抜群の好スタートを切ったのは不思議ではないが、そのあとハナにいったのは好判断だった。前半600m33秒7は自身のペースとしては厳しかったが、前走の函館スプリントSでは33秒4で先行していただけに無理でもなかった。ただ、ハナに行ったり、先に抜け出して1頭になると、ちょっとふわっとする癖がある馬で、恐らくナックビーナスに乗った騎手はみんなそこをケアしながら乗っていたはずである。ハナを切らせてしっかり走らせた点はマジックマンJ.モレイラ騎手の真骨頂なのだろう。セーフティリードと思えば、勝負どころを迎える前の後ろが追いかけにくい地点でこっそりペースを落として息を入れる、彼がマジックマンと言われる所以はここにあった。キーンランドカップ3回目の出走で重賞初勝利。中山は元々得意舞台であり、この安定感とハナに行って後続を完封したことでスプリンターズSの鍵を握ってくるだろう。

 

2着ダノンスマッシュ(4番人気)

函館準オープン勝ちがあるとはいえ、まだまだキャリアが浅いスプリンターであり、それだけに無理にナックビーナスを追いかけられなかったのだろう。自身はインの番手を取ってセンスあるところを見せることができた。ナックビーナスがペースを落としたところで反応できるようになれば、馬も騎手もさらに一段ステップアップが望める。

 

3着ペイシャフェリシタ(9番人気)

最後にダノンスマッシュとの競り合いに屈したが、こちらは函館で調教を見ているプロのトラックマンが絶賛するほどのデキのよさを発揮したようだ。今年に入って1200m戦では流れに乗って安定した成績を収めるようになっていて、先行力を活かせる流れならこれからも重賞でも活躍できるだろう。

 

総評

逃げたナックビーナス、インの番手にいたダノンスマッシュ、3列目のインにいたペイシャフェリシタ。上位にきた馬は全てインをきれいに回ってきた馬たちだった。札幌競馬場はコーナーが大きな競馬場であり、そんなコースの1200m戦となれば、インを回るメリットは絶大である。結果的にインを回った組と外を回った組で明暗を分けた。ラップは33秒7-35秒7と前半が2秒速い前傾型だったが、差した組は掲示板が精一杯。このコースは本当に面白い。

このレースの勝ち馬にはスプリンターズSの優先出走権が与えられる。秋を展望するステップレースながら、それはスプリンターズSに限らず、色々な路線を望むステップレースだった。出走馬の中にはキャンベルジュニアムーンクエイクなどマイル路線で活躍しそうな馬もいて、キーンランドカップはそれぞれの始動戦。秋は本当に目前に迫っている。

 

 

(勝木淳)

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