【重賞回顧】第23回秋華賞(GⅠ)

運命に導かれて。史上5頭目の牝馬三冠馬誕生へ。第23回秋華賞

 

美しい鼻筋に白いシャドーロール、十字架がその美しさをさらに際立たせた。

距離が長いと思われたオークスを勝つために課したトレーニングで極限まで馬体を絞った反動からローズステークスは+24キロで出走、4着。490キロを超える馬体で秋に牝馬三冠を達成した女王。

その名はアパパネ。ハワイに生息する赤い鳥の名をもらった彼女は、十字架の一部を模る印象的な流星と父キングカメハメハ譲りの雄大でスマートな体、とても美しい馬だった。彼女は三冠達成までに3度負けている。新馬と3歳緒戦のチューリップ賞、秋緒戦のローズステークス。それでも三冠レースでは強かった。とりわけ最後の一冠、秋華賞は圧巻だった。京都内回り2000mを常に大外を回る安全運転から差し切ってみせた。

それから8年後、アパパネと同じく国枝厩舎のシンボルマークの白いシャドーロールを身につけた、吸い込まれるような瞳を持つ美しい牝馬が三冠に挑戦する。

第23回秋華賞はアーモンドアイの三冠達成だけが注目されたといってもいいレースだった。

 

競馬とは不思議なことを実現させる。

アパパネが三冠を達成した秋華賞で最後に追い詰めながら2着に敗れたアニメイトバイオの初めての仔、パイオニアバイオアーモンドアイと秋華賞に出走する。そして、同じレースを走ったレディアルバローザの仔、オールフォーラヴも駒を進めてきた。

振り返れば、この世代の牝馬クラシック路線の主役は2歳女王ラッキーライラックだった。自在性を武器にチューリップ賞を完勝。桜花賞はこの馬で決まりと言われた。しかし桜花賞2着、オークスは3着。アーモンドアイに完敗の競馬が続く。再び耀きを取り戻すべく秋華賞へ出走する。

前哨戦ローズステークスを勝ったカンタービレは武豊騎手と新コンビ結成。いかにも武豊騎手と手が合いそうな操縦性が武器だ。

そのローズステークスでスローペースに泣きながらも2着まで差を詰めたサラキア、同レース3着のラテュロス、夏の北海道で古馬相手に1000万下を勝ちあがったミッキーチャーム、夏を越してという意味では関屋記念で古馬を撃破したプリモシーンもいる。

スカーレットカラーの無念の取消により、出走頭数17頭が、はっきりと秋を感じる青空の下、京都競馬場に集った。

 

秋華賞の舞台、京都内回り2000mはスタンド前発走。スタンドからの声援に敏感な牝馬は反応してしまう。馬場入場時からアーモンドアイもエキサイトする気持ちを抑えられないようだった。

三冠を期待するどこか異様な空気の中、運命のスタートが切られる。

インから先行態勢のランドネを制して外からミッキーチャームがハナへ行く。オスカールビーが2番手につけ、ランドネがインの3番手。外からハーレムラインがあがり、サヤカチャンラテュロスラッキーライラックと続く。

隊列はすんなり決まり、前と離れない位置に中団馬群も続く、隙のない形になった。その中団にインからサラキアオールフォーラヴゴージャスランチが並び、その直後の外目にアーモンドアイがいる。アパパネのときと同じような中団やや後ろよりの外、揉まれにくい位置を走る。そして、アーモンドアイの直後のインにはカンタービレ。武豊騎手、アーモンドアイをマークする戦法を取ったのだろうか。

この後ろにダンサールトーセンブレス、道中からちょっと反応が悪いように見えるパイオニアバイオプリモシーンは後方2頭目、最後方にサトノガーネットがつける。

ミッキーチャームの作るペースは1000m通過59秒6。馬場や例年の秋華賞からみれば、平均よりやや遅めの流れだ。ミッキーチャームは1000m通過からペースを落とさず、11秒台というラップを刻み続ける。勝負どころでも先頭のまま、オスカールビーハーレムラインが脱落していく形になる。

大外を走るアーモンドアイも下がってくる馬がいたために、さらに外へ持ち出しながら4角を回ってくる。ラッキーライラック、追うカンタービレサラキアラテュロス、ライバルたちも伸びてはいるが、大外から飛んでくるアーモンドアイの走りに他馬がストップモーションにかかったように見える。それほどアーモンドアイの走りは全く違った。直線を向くと、独特の沈み込むような低くてしなやかな、猫のような走りは力強くて美しい。そして何度も手前を変える姿はなんだか愛らしい。

先頭で逃げ込もうとするミッキーチャームも抵抗するが、及ばなかった。馬場の外を伸びる姿にアパパネが重なった。

アーモンドアイが史上5頭目の三冠牝馬に輝き、逃げたミッキーチャームが2着、アーモンドアイを追ったカンタービレが3着。勝ち時計は1分58秒5(良)。

 

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全着順 

第23回秋華賞(GⅠ)3歳オープン・牝馬(京都・芝2000m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
アーモンドアイ
牝3
C.ルメール
 1:58.5
2
ミッキーチャーム
牝3
川田将雅
1.1/2
3
カンタービレ
牝3
武豊
1
4
サラキア
牝3
池添謙一
3/4
5
ラテュロス
牝3
秋山真一郎
ハナ
6
◯外ランドネ
牝3
戸崎圭太
クビ
7
プリモシーン
牝3
北村宏司
ハナ
8
ゴージャスランチ
牝3
横山典弘
1.1/4
9
ラッキーライラック
牝3
北村友一
クビ
10
サトノガーネット
牝3
浜中俊
クビ
11
トーセンブレス
牝3
藤岡佑介
アタマ
12
パイオニアバイオ
牝3
柴田善臣
3.1/2
13
ダンサール
牝3
M.デムーロ
1/2
14
オールフォーラヴ
牝3
幸英明
1.1/4
15
ハーレムライン
牝3
大野拓弥
4
16
オスカールビー
牝3
川須栄彦
2.1/2
17
サヤカチャン
牝3
高倉稜
3.1/2
取消
スカーレットカラー
牝3
岩田康誠
 

 

 

1~3着馬コメント

1着アーモンドアイ(1番人気)

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シンザン記念から桜花賞を勝ったローテーションも異例だが、オークスから直行で秋華賞というのも異例であり、事前にはそこを弱点にあげる向きもあった。オークスからの直行ローテーションはかつて01年テイエムオーシャン、06年カワカミプリンセスが成功している前例あるローテーションだった。しかしながら、このレース選択で三冠達成、国枝厩舎の仕上げの確かさも光る。アパパネアーモンドアイも新馬で負けた。アパパネは前哨戦でよく負けたが、その経験もまた前哨戦を飛ばして三冠を達成したアーモンドアイに生きているのではないか。当日+14キロ。アーモンドアイアパパネのような逞しさが加わってきた。

 

2着ミッキーチャーム(5番人気)

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戦前は逃げ争いが激しくなるのではと報じられたが、結果的にはスタートから行く気を見せたこの馬がペースを握り、ギリギリ平均ペースという落ち着いた流れを演出した。しかし、後半1000mからペースアップし、GⅠに相応しい厳しいレースもまた演出した。後半600mは11秒5-11秒8-11秒-9、京都内回り2000m戦としては逃げ切ってもおかしくない時計でまとめた。札幌でつけてきた力の確かさを証明したレースだった。

 

3着カンタービレ(3番人気)

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こちらはローズステークスから一転した待機策。これも武豊騎手はスタートから行く気を見せていないので、策だったのだろう。道中はアーモンドアイの真後ろのイン。勝負どころで外を回るアーモンドアイに対してその仕掛けについてきながら、インを突いて出し抜けを計ろうという作戦だったのだろう。残念ながら力及ばなかったが、自身の武器である自在性は見せつけた。

 

 

総評

牝馬クラシックはアーモンドアイの三冠で終幕。春まで主役だったラッキーライラックは調整の狂いや乗り替わりなど秋はツキに見放された印象であり、まだまだ本領を発揮する舞台が回ってくるだろう。オークス上位組には故障も多かった。改めてクラシックロードを戦い切り、三冠全てを勝つことの凄さを感じる。

その三冠馬アーモンドアイは早くもジャパンカップを視野に入れているという。

思えばアパパネの父はキングカメハメハアーモンドアイの父ロードカナロアの父、アーモンドアイの祖父もまたキングカメハメハ。逞しく雄大な体はキングカメハメハから受け継いでいる。そして、母フサイチパンドラから注がれるサンデーサイレンスの血がしなやかな走りを生んでいる。さらにアパパネを三冠に導いた国枝栄調教師が管理する。

運命に導かれた三冠馬、アーモンドアイ。その物語はまだこれからも続いていく。

 

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(勝木淳)

(写真・よしフォト)

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