【重賞回顧】第66回アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス(GⅡ)

G1馬4頭集まる前哨戦、切れ味自慢の追い比べ

前哨戦に集う少数精鋭

 

西で翌日に秋華賞が行われることもあり、アーモンドアイの三冠達成かと盛り上がる中、東では古馬牝馬のデッドヒートが繰り広げられていた。

 

府中牝馬ステークスはエリザベス女王杯の前哨戦である。1着に優先出走権が与えられる。もっとも、ここで勝つような馬は賞金を積んでいる実績馬であることが多く、大一番を前にした叩き台の役割が大きい。

 

今回の顔ぶれを見渡してみると、11頭立てと少し寂しいが、名前を見れば実績馬揃いで恐れ入る。

 

まずは勢いのある4歳世代がレースの中心だ。

特にディアドラについては評価が高い。

ちょうど1年前の秋華賞で重馬場の中、後方から堂々差し切る強い競馬。その後、エリザベス女王杯にチャレンジしたが、そこでは結果を出せず。しかし、年が明けて京都記念で叩いてドバイターフに果敢に挑戦。ルメール騎手を鞍上に迎え、3着同着と好走。帰国後、休養を挟んでクイーンステークスで4馬身差の圧勝。

秋の最有力女王候補として、このレースでも主役。

どのコースでもそつなくこなし、1800mや2000mでは負け知らず。唯一の不安は後方からの競馬での不発や届かずといった場合だ。

 

ディアドラの成長ぶりをただ見ているだけでは終われない2頭がいる。

同世代のソウルスターリングリスグラシューだ。

ソウルスターリングはデビュー時から鳴り物入り。春は横綱競馬で駒を進め、オークスを勝ち、その後、強い牡馬たちに混ざっての競馬の道を選ぶ。しかし、その中では結果を出せてはいない。今年は牝馬限定戦に戻ってきたが、3歳春のような強さがない。逆に3歳春、勝ち切れなかったディアドラに今では完全に抜かれてしまった。

世間もソウルスターリングに対する期待は大きく、人気はなかなか落ちない。

 

ライバル関係なら面白いのは、リスグラシューだ。

同い年のソウルスターリングディアドラと幾度となく対戦したが、まだ一度も勝てていない。桜花賞以来、常にディアドラの後塵を拝している。脚質が似ていて、それでいて一歩を及ばないのでは同じことをしても勝てない。工夫が必要だが、今回はどうか。

府中マイルではアルテミスステークス、東京新聞杯を勝ち、ヴィクトリアマイルも2着している。今回は1800mでコースも距離も守備範囲。そろそろ一泡吹かせたい。

 

レースを飾るのに忘れてはいけないのはG1馬の存在だ。

今年のヴィクトリアマイルを勝った、ジュールポレールはなにしろ、春ではマイル戦とはいえリスグラシューとの決着はすませている。涼しい顔で先頭を駆け抜けても不思議はない。

アドマイヤリードは17年のヴィクトリアマイル勝ち馬だ。近走、結果を出せていないので復活の兆しを見せられるだろうか。相手は強いが意地をみせたいところ。

 

伏兵として虎視眈々と勝利を狙う馬も面白い。

ペースを握るのはカワキタエンカの逃げっぷりだ。内枠をひいたクロコスミアも先行力があり、昨年の覇者でもある。この2頭が先頭からどのようなレースをつくるのか。ディアドラリスグラシューが後ろからいくだろうから、道中のペース配分次第では勝ち負けが見えてくる。

フロンテアクイーンは5戦連続2着、相手を気にせず、安定感ある走りで今度こそ勝ちきりたい。が、相手も強化されているので、まずはマイペースの走りを忘れないようにしてもらいたい。

 

なお、東の馬はソウルスターリングフロンティアクイーンだけだ。

東のレースだけにちょっとがんばってもらいたい。

 

先週の毎日王冠、京都大賞典と有力馬同士の熱い戦いが見られた。このレースにおいても牝馬限定戦とはいえ、世代のライバルをはじめ、G1馬、重賞常連組が軒を連ね、強い馬があっさり勝つのか、伏兵が勝利をさらうのか、目が離せないレースだ。

 

 

レース回顧

 

11頭そろったスタート。リスグラシューが手綱を引いて後方に構える。

ディアドラもゆったりとしたスタートで徐々に後方へ。

逆に先頭争いは激しい。外からぐいぐい上がってくるのがカワキタエンカ。内から1枠を活かして好スタートのクロコスミア、間にソウルスターリングキョウワゼノビア

カワキタエンカの脚が止まらない。1馬身、2馬身差をつけ、ハナを切る。

単独の2番手はクロコスミアだが、ちょっと口を割って走っている。

続いて1馬身後ろにキョウワゼノビアソウルスターリング

さらに1馬身離れて並んで走っているのがジュールポレールフロンテアクイーン

2馬身差でメイズオブオナー。外から最後方にいたリスグラシューが徐々に進出していく。

後方グループはミスパンテールアドマイヤリードディアドラと1馬身ずつ差をつけ、様子を窺っている。

先頭のカワキタエンカがいつの間にかリードを広げ、6馬身ほど。大逃げのような格好となった。後続の隊列はそのまま、カワキタエンカ1頭が気持ちよく一人旅を続ける。

3コーナー中間くらいで差は10馬身以上ついた。

残り800m、1000m通過が58.1秒。

速い。誰の目にもカワキタエンカが飛ばしすぎなのは明らかだ。

しかし、4コーナーでも10馬身以上ある。これは届くのか。ディアドラにしてもリスグラシューにしてもまだまだ後方だ。

4コーナーから直線に入って、カワキタエンカのペースも落ち、後続もペースアップしており、差は6~7馬身に縮まった。

しかし、依然としてカワキタエンカは先頭を走り、その差は大きい。

しっかりと詰められるのか。後続グループの先頭はクロコスミアジュールポレールの伸びがいい。内のソウルスターリングは反応がよくない。キョウワゼノビアは力尽きたように下がっていく。外からフロンテアクイーンも伸びてくる。その後ろにリスグラシューがいて、さらにその後ろにディアドラがいる。

残り200m。まだ先頭はカワキタエンカ。差は3馬身くらいだ。

坂を上って、一挙に脚色のいい馬たちがカワキタエンカを飲み込む。

内からジュールポレールクロコスミアも粘っている。外からフロンテアクイーンリスグラシューが併せ馬になって勢いがある。

しかし、そのさらに外、ディアドラが一気にあがって、内にいる5頭をまとめてかわしてゴールイン。

最後の最後で切れ味鋭い差し脚が爆発し、あっという間に差し切った。

残り100mから、一気に形勢が逆転したレースだった。

 

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全着順

第66回アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス(GⅡ)3歳以上オープン・牝馬(東京・芝1800m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ディアドラ
牝4
C.ルメール
 1:44.7
2
リスグラシュー
牝4
M.デムーロ
クビ
3
フロンテアクイーン
牝5
蛯名正義
1/2
4
ジュールポレール
牝5
幸英明
1.1/4
5
クロコスミア
牝5
岩田康誠
1.1/4
6
カワキタエンカ
牝4
池添謙一
クビ
7
アドマイヤリード
牝5
田辺裕信
クビ
8
メイズオブオナー
牝4
福永祐一
2.1/2
9
ミスパンテール
牝4
横山典弘
1.1/4
10
ソウルスターリング
牝4
北村宏司
ハナ
11
キョウワゼノビア
牝5
田中勝春
2

 

 

1~5着馬コメント

1着 ディアドラ

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直線坂下まではあやしい雰囲気であったが、200mを越してギアが一段階あがり、ゴールまで一気にまとめて差し切った。

平坦コースでの実績が多かったので、府中の坂はどうかという面もあったが、難なくこなし、鮮やかな追い込みを決めた。次はジャパンカップだろうか。1800m~2000mあたりがちょうどよさそうにはみえるが、大きなレースでも活躍を期待したい。

 

2着 リスグラシュー

道中、ディアドラの前にいたが、直線ではフロンテアクイーンに競り勝ったのはよいものの、ディアドラには並ぶ間もなく交わされた。レース運びでは遜色ない。マイルでの重賞勝ちがあるように、マイルでは牡馬相手にも勝ち切れるため、今後は得意コースでの巻き返しをしていきたい。

 

3着 フロンテアクイーン

3着、2着、2着、2着、2着、2着、ときて、3着。ゴール前でリスグラシューに競り負けた。勝ち切れないというべきか、今回は相手を考えると健闘したというべきか難しい。安定したレースをみせるだけに、今後も活躍が期待できそうだ。

 

4着 ジュールポレール

なんとか掲示板を確保し、G1馬の面目を保ったかたちだ。次はマイルチャンピオンシップだろうか。直線での反応はよかっただけに本番に向けて、ここを叩き台にして臨みたい。

 

5着 クロコスミア

カワキタエンカの2番手に進み、最後はカワキタエンカよりも先着する。普通のレースなら勝ち負けだろうが、今回は相手が悪すぎた。先行力でいえば今後も注意が必要な馬の1頭だろう。

 

 

総括

 

カワキタエンカの大逃げに始まり、直線入っても、ディアドラは最後方、万事休すかと思われたが、一気に坂を駆け上がって涼しい顔でゴールを先頭で駆け抜ける。なんと爽快な競馬なのだろう。

切れ味勝負になると、苦しいのはソウルスターリングだ。このような展開は苦手なのだろう。

リスグラシューは勝ちにいく競馬でカワキタエンカ以下をつかまえにいったのはいいが、圧倒的なディアドラの末脚に屈した。

この同世代の3頭の争いはまだまだ続きそうだが、今後の進路が気になるところだ。

牡馬に混じって戦うのか、牝馬限定戦で女王を目指すのか、またはマイル路線に向かうのか。

それぞれの舞台で輝きをみせ、今後、再会したときは勢力図が変わっているのだろうか。

まずは目の前の大きなレースに向けて各自がんばってもらいたい。

 

 

(みすてー)

(写真・Katies Gem)

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