【重賞回顧】第54回京王杯2歳ステークス(GⅡ)

超絶スローペース! 手綱をみると分かる緊迫と平穏。第54回京王杯2歳ステークス

 

都心から東京競馬場へ向かう場合、京王線は圧巻の利便性を誇る。

新宿から特急で府中まで行くとすると、停車駅は明大前、調布、府中しか止まらず、20分で到着する。府中競馬正門前駅に行くならば、東府中で乗り換えることになるが、特急と準特急は東京競馬開催時と有馬記念の日は東府中に臨時停車してくれる。新宿発午前9時から14時台のみなので開門ダッシュ派は乗れないが、やたらと競馬に優しい路線だ。

競馬場線の始発東府中は大正期に開業した八幡前(武蔵国府八幡宮)駅が改称した駅で、昭和10年開業の臨時競馬場前駅と統合したことで今の東府中駅となる。競馬場線開業は昭和30年4月29日。この年のダービーを勝ったのがオートキツ。10番人気。二本柳俊夫騎手が乗っていた。その子は二本柳俊一元調教師、孫が二本柳壮元騎手。ご存知、競馬一族。

京王本線から競馬場線に乗り換える。ゆったりとした車内、ほぼ全員が競馬新聞を広げている。ただおとなしく競馬場へ向けて発車を待つ風景は未来永劫変わらないだろう。

 

さて、京王杯は春と秋に2回施行される。どちらも芝1400m。新宿から府中まで20分でつなぐ特急のごとくスピードコースで行われる。

秋の京王杯は2歳ステークス。今年は出走馬8頭とやや寂しい顔ぶれながら、重賞タイトルホルダーが2頭、いずれもスピード勝負に強そうだ。

小倉2歳ステークスを好発から抑えて抜け出すという大人びた競馬で勝ったファンタジスト。キャリア2戦2勝。競馬センスの高さはロードカナロア産駒の走る馬らしい。

函館2歳ステークスで追い込みを決めたアスターペガサスもキャリア2戦2勝。アメリカ生まれのジャイアンツコーズウェイ産駒、このキャリアで500キロを超える馬体は今年亡くなったアイアンホースの異名をもつ父の産駒の特徴が出ている。

重賞勝ち馬2頭を抑えて1番人気に支持されたのがアウィルアウェイ。こちらもキャリア2戦2勝。デビュー戦阪神芝1200mで豪快な大外一気を決め、夏の新潟ダリア賞でも同じように後方から差し切り勝ち。新種牡馬ジャスタウェイが秘める可能性を表現する1頭であることは間違いない。

以下、デビュー3戦2勝、小倉2歳ステークスでは崩れたが、フェニックス賞まで連勝したキンシャサノキセキ産駒シングルアップ、2戦1勝のロードカナロア産駒ココフィーユ

3戦1勝マツリダゴッホ産駒カルリーノ、2戦1勝キンシャサノキセキ産駒メイショウオニテ、6戦1勝のナカヤマフェスタ産駒ラバストーン、以上8頭によって争われる。

 

スタートで後手を踏みがちなアウィルアウェイも今日はまずまずのスタートを切った。揃ったスタートから先行態勢はメイショウオニテココフィーユココフィーユが引いてすんなりとメイショウオニテがハナに立つ。

この2頭からやや間隔を開けて、カルリーノファンタジストが続き、その後ろのインにいるアウィルアウェイはやや行きたがる素振り。外はアスターペガサス、その間にシングルアップが入る。最後方にラバストーンが追走する。

前半600mは38秒0という超がつくスローペース。どの騎手も懸命に馬をなだめている。馬群が4コーナー入り口に差しかかるとさらにペースは落ちて、1400m戦では珍しい13秒2というラップが刻まれる。

当然ながら直線に向いてもどの馬も手応えは楽なまま。こうなれば、東京競馬場は究極の切れ味比べになる。メイショウオニテも余力を残して先頭のままだ。ココフィーユが並びかけ、カルリーノアスターペガサスが外からやって来る。これらの争いの最中、空いたインから突っ込んでくるのがファンタジスト。さらにインに入ったアウィルアウェイ。この2頭が叩き合いながら一気に先頭に立つ。一歩前に出たファンタジストだが、アウィルアウェイも食い下がり、徐々に徐々にファンタジストに迫ってくる。この叩き合い、最後の最後に並んだところがゴール板だった。

結果はハナ差ファンタジストアウィルアウェイの猛追を凌いでいた。3着はカルリーノ。時計は1分24秒7(良)。

 

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全着順

第54回京王杯2歳ステークス(GⅡ)2歳・オープン(東京・芝1400m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ファンタジスト
牡2
武豊
 1:24.7
2
アウィルアウェイ
牝2
M.デムーロ
ハナ
3
カルリーノ
牡2
三浦皇成
2
4
ココフィーユ
牝2
戸崎圭太
クビ
5
◯外アスターペガサス
牡2
福永祐一
クビ
6
メイショウオニテ
牡2
秋山真一郎
クビ
7
シングルアップ
牡2
松山弘平
3.1/2
8
ラバストーン
牡2
江田照男
4

 

 

1~3着馬コメント

1着ファンタジスト

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デビュー2戦同様に高い競馬センスが光った。どの馬もかなり折り合いを欠きながらの追走で、張りつめた手綱から緊張感が伝わるなか、武豊騎手は独特の長手綱でこの馬との呼吸を合わせ、勝負どころではただ1頭だけ手綱に緩みが見られた。この遅い流れでは、直線のロスは致命傷。迷わずインへ行き、瞬発力勝負にケリをつけた。アウィルアウェイがさらに内から迫るとさらに伸びるようなところもあり、まだ距離の融通も利きそうだ。

 

2着アウィルアウェイ

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スタートは悪くなったが、今日もミルコ・デムーロ騎手は後ろへ一旦下げた。折り合いを気にする故であるだろうが、下げてインに入れたのは結果的に正解だったかもしれない。馬群に入ってもエキサイトしていたが、遅い流れを考えれば外ではもっと厳しかっただろうし、インに入ったことで距離ロスを防ぎ、瞬発力勝負でも後方にいるハンデを最小限に抑えられた。ファンタジストには及ばなかったが、繰り出した上がり32秒8はコース取りが助けた面もある。2歳でこの記録を出せるのは素質の高さのあらわれでもある。

 

3着カルリーノ

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1、2着がインから攻めたのに対し、こちらは外へ行った。この違いは着差に響いたが、距離ロスしながらも前にいた組を捕らえて3着に上がってきたのは力の証。函館2歳ステークスで負けたアスターペガサスには今度は先着。血統的には距離延長は分からないが、短い距離なら十分やれるところを披露した。

 

 

総評

勝ち時計1分24秒7は翌日の2歳未勝利牝馬限定戦より2秒も遅い時計だった。競馬の時計は速ければいいわけではないが、この時計の遅さは色々と考えさせれるものだ。もちろん、こうした遅い流れでも折り合って走れるファンタジストのようなセンスも大切だ。インを突いた人気2頭は遅い流れに対処するセオリーのようなものが見られたが、ただ引っ張りながらスタミナと距離をロスする競馬は考え直してほしいところでもある。

明るい話題をしよう。重賞勝ち馬がこの京王杯2歳ステークスを勝ったのは1996年マイネルマックス(当時は京成杯3歳ステークス)以来22年ぶりだった。この時期のまだまだ能力比較が十分ではないなかで、重賞を2つ勝つのは難しいのだろう。ファンタジストは久々の京王杯2歳Sを勝った重賞2勝馬となった。マイネルマックスは暮れの2歳(当時3歳)チャンピオンに輝いた。ファンタジストもきらりと光るセンスで私たちをあっと驚かせてくれるだろうか。

 

 

(勝木淳)

(写真・よしフォト)

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