【重賞回顧】第19回チャンピオンズカップ(GⅠ)

突き破れ、そうはさせぬ。3歳VSダート界の猛者たちの攻防。鍵を握るのは誰だ?

 

鍛えに鍛え、数多くレースを使い、経験値を積み重ねつつ、頑健な馬体へと成長、砂を浴びても怯まず、ゴール前の叩き合い、我慢比べ、しのぎあいに打ち勝っていく精神を身につけていく。

ダート競馬では4歳ですらキャリアが浅いと称される。全国各地を転戦し、異なる競馬場で力を出し切る、強い心と丈夫な体を持つトップレベルの息は長く、その壁は芝戦線以上に分厚くて高い。

 

第19回チャンピオンズカップにもダート界のトップレベルが集結した。本賞金2億215万円のケイティブレイブは京都JBCクラシックを勝ったチャンピオンホース。8歳インカンテーションは中央ダートを中心に1億6500万円を稼ぐ古豪。今年は中央GⅠフェブラリーステークス3着と衰えなどない。ダートの本場アメリカから参戦するパヴェルは1億5480万円。今年6月にチャーチルダウンズでGⅠ勝ちがある。1億3725万円のノンコノユメは今年のフェブラリーステークスを勝ち、このレースも3年前の3歳時に2着がある。1億2070万円を稼ぐアポロケンタッキーは浦和記念から連闘。ローテーションを問わないタフネスさはダートトップレベルゆえだろう。

 

1億円超を稼ぐ壁に挑む3歳ルヴァンスレーヴは1番人気に支持された。南部杯でゴールドドリームを完封。壁を突き破るだけの素質を披露した。同世代のオメガパヒュームはシリウスステークスで古馬相手に重賞制覇し、JBCクラシックでケイティブレイブを追い詰めた。秋に中山と福島でオープン特別を勝ったヒラボクラターシュもいて、今年の3歳勢は壁を突き破る勢いがある。

 

1歳年上の4歳勢もダート界では新興勢力。平安ステークス勝ちのサンライズソア、武蔵野ステークス覇者のサンライズノヴァも一気にトップへ登りつめたいところだ。

 

ダートグレード常連、ダート重賞常連組、3歳、4歳勢が出揃った第19回チャンピオンズカップ。昨年の覇者ゴールドドリームの回避は残念だったが、今年の中央ダートチャンピオンを決めるに相応しいメンバーが顔を揃えた。

 

スタートからレースは競馬ファンの思惑とは異なる形となった。スタートが悪く、後手を踏むことが多かったルヴァンスレーヴがスタートを決め、2番枠を利して番手のインにとりついた。内枠で猛者たちに揉まれ、砂を被ることを回避したこの位置取りが勝敗を大きく分けた。前に行くと思われたサンライズソアは控え、ハナには1番枠のアンジュデジールが立った。

横山典弘騎手の逃げは常に後ろの組が嫌がる流れを意識する。ルヴァンスレーヴ以下を3、4馬身離したとみるやペースを落とす。外から3番手にとりついたのが外枠のヒラボクラターシュインカンテーション。直後のインにパヴェル、その外にサンライズソアが控え、その後ろの外にミツバ、間にケイティブレイブ、インにアスカノロマンが続く。

 

アンジュデジールは向正面を13秒台という遅いラップを交えつつマイペースで進んでいく。直線に坂が待つ中京では地方のダートのように早々に動けない。中団の後ろの外にいるオメガパヒュームもスパートをかけられる位置にはいるが、我慢している。センチュリオンアポロケンタッキーが続き、サンライズノヴァがインを追走。後方2番手、定位置にノンコノユメ、離れた後方にウェスタールンドがいる。

 

前半1000m通過61秒9の遅い流れのなか、アンジュデジールのマイペースのまま勝負どころを迎える。外から被されたくないヒラボクラターシュが4角を回ってやや外に出しながらアンジュデジールの外に並びにいく。この動きに合わせるように後ろの馬たちがやや外に持ち出しながら最後の直線コースに向く。馬群が外に流れた隙をついたのがドン尻にいたウェスタールンド。前との差をインぴったりを回って絶妙に縮める。

 

ルヴァンスレーヴは番手にいながら後方一気を決めていたような脚を繰り出す。アンジュデジールを一気に捕らえ、先頭に立つ。ベテラン勢はこの切れ味について来られない。ルヴァンスレーヴと同じくいつもと違う競馬で控えたサンライズソアが外から追撃。コーナリングで差を詰めたウェスタールンドがインからアンジュデジールを交わしてサンライズソアに並ぶ。ゴール前は4頭の争いになるが、抜けたルヴァンスレーヴはすでに勝負を決めている。2着争いは赤いシャドーロールのウェスタールンドがインから顔をのぞかせ、サンライズソアが3着。逃げたアンジュデジールが4着に残った。時計は1分50秒1(良)。

 

 

全着順

第19回チャンピオンズカップ(GⅠ)3歳以上オープン(中京・ダート1800m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ルヴァンスレーヴ
牡3
M.デムーロ
 1:50.1
2
ウェスタールンド
セ6
藤岡佑介
2.1/2
3
サンライズソア
牡4
J.モレイラ
クビ
4
アンジュデジール
牝4
横山典弘
1.1/4
5
オメガパフューム
牡3
C.デムーロ
2.1/2
6
サンライズノヴァ
牡4
戸崎圭太
クビ
7
ノンコノユメ
セ6
内田博幸
アタマ
8
ミツバ
牡6
松山弘平
クビ
9
ヒラボクラターシュ
牡3
四位洋文
1/2
10
アスカノロマン
牡7
太宰啓介
1.1/2
11
ケイティブレイブ
牡5
福永祐一
アタマ
12
センチュリオン
牡6
吉田隼人
3/4
13
インカンテーション
牡8
三浦皇成
1/2
14
◯外アポロケンタッキー
牡6
小牧太
ハナ
15
□外パヴェル
牡4
M.グティエレス
クビ

 

 

1~3着馬コメント

1着ルヴァンスレーヴ

2歳時から出遅れて後方一気を決めるレースが多かった馬が、大一番でスタートを決め、番手をとったことに驚かされた。結果的に流れが落ち着き、もっともいいポジションになった。3歳馬の内枠、ダートの猛者たちにもまれ込むことを嫌った作戦が当たった形ではあるが、前を走って、以前のようなしっかりとした末脚を繰り出されては他馬は太刀打ちできない。キャリアの浅さはときに脆さを見せることもあるが、ルヴァンスレーヴアーモンドアイと同じく脆さなど微塵も感じない力強さで勢力図を一気に塗りかえた。

 

2着ウェスタールンド

武蔵野Sである程度位置を取りにいった結果、馬群でスムーズな競馬ができなかったことを踏まえ、今回は後方待機策。スローペースで手応えがいい馬たちが進路を求めて外へ外へと進んだことがこの馬に味方した形になった。4角はインぴったりを進み、外を回る前の馬たちの距離を一気に縮めることに成功。直線入り口で中団にいたのは大きかった。藤岡佑介騎手の好プレーはこれだけではない。最後の直線でルヴァンスレーヴの真後ろを狙った点だ。中団に取りついてから進路を求めて外へと考えれば、外の馬群にまともに突っ込むことになる。しかし、ルヴァンスレーヴの真後ろにいれば、同馬が抜け出したあとに必ず進路ができる。そこを初めから狙っていたからこそ、サンライズソアを差し切れた。

 

3着サンライズソア

スタート直後の動きを見ると、ジョアン・モレイラ騎手は最初からハナなど行く気はなかったようだ。ルヴァンスレーヴもそうだが、GⅠで競馬の形を変えるのは勇気が必要だろうが、それを難なくこなすあたりはマジックマンの本領発揮だ。控えたことで、最後の直線ではしっかり脚を使うことができた。進路を求めて外を回ったことでウェスタールンドには先着されてしまったが、この競馬は今後を展望する意味でも大きなものになった。こちらもダート界ではまだまだ若い4歳馬。前途は明るい。

 

 

総評

1億を超える賞金を稼ぐ猛者たちを相手に3歳馬がダートGⅠを勝つのは容易ではない。現にこのレースを3歳馬が勝ったのはジャパンカップダート時代の06年アロンダイト以来12年ぶりのことだった。それ以前に3歳で勝った馬はクロフネカネヒキリ。いずれもダート界屈指のチャンピオンホース。ルヴァンスレーヴの未来は明るく、世界を意識して欲しい馬だ。

この秋は競馬において展開を読むことの重要さを説くようなレースがたくさんある。かつて大川慶次郎氏が競馬に持ち込んだ展開は予想の要でもあった。そして、この秋、展開を読めた騎手が活躍するケースが目立つ。このレースもアンジュデジールの横山典弘騎手がダートの猛者たちが最も得意な持久力戦に持ち込ませず、スローペースの上がり勝負という猛者たちが避けたい展開を組み立てた。そして、この展開に番手競馬で挑んだルヴァンスレーヴ、インが空き、ルヴァンスレーヴが先に抜けるところまで読んだ藤岡佑介騎手のファインプレーは光った。展開とは逆の競馬をしながら、2着まで来たウェスタールンドの実力もあったが、やはりあの進路取りがなければ、どうなっていただろうか。

展開を読み、予定調和を嫌い、大胆な競馬を試みる。騎手の腕と度胸が問われるようなGⅠレースがこの秋は非常に多い。

 

 

(勝木淳)

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