【重賞回顧】第70回阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)

良血ズラリ。天才少女はどの馬か?少女たちの激しい戦い

 

人間も幼少期、小学生ぐらいまでは男女の体格に差はなく、精神面の発達では女の子の方が明らかに早い。

馬の世界も同じだ。牡馬は2歳のときは前に行く脚がなく、後方から最後に能力の片鱗を見せて差を詰めてくるような晩成型がいるが、牝馬は早い時期から能力を発揮し、天才少女と称される馬が時代ごとにいる。完成度が高い2歳牝馬女王決定戦、阪神ジュべナイルフィリーズはしばしば天才少女が出現する舞台だ。

 

1番人気はダノンファンタジー。6月東京の新馬戦は翌週朝日杯フューチュリティステークス出走のグランアレグリアには負けたが、秋復帰後は未勝利勝ちから前哨戦ファンタジーステークスを上がり最速で差し切った。ディープインパクト牝馬らしい切れ味とレースセンスの高さを感じさせる。

 

2番人気クロノジェネシスはすぐ上の姉に紫苑ステークス勝ちのノームコアがいる良血。夏の終わりの小倉でデビュー戦を勝ち、秋の東京オープン特別アイビーステークスでは男馬相手に上がり3ハロン32秒5の切れ味を披露した。

 

3番人気シェーングランツは札幌で未勝利戦を勝ち、このレースと相性がいいアルテミスステークスで後方から豪快に直線一気を決めた。母はスタセリタ、2年前にこのレースを勝った天才少女ソウルスターリングの妹だ。

 

シェーングランツに負けたものの、流れを考えれば正攻法から強い競馬をしたビーチサンバが4番人気。母は重賞4勝、桜花賞2着のフサイチエアデール。兄フサイチリシャールは2歳チャンピオンと、血統背景だけなら申し分ない天才少女だ。

 

ウオッカの5番仔タニノミッションも血統背景では負けていない。母は06年のこのレースを勝ち、翌年の日本ダービーを制した後、牡馬相手に安田記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップを勝った、天才少女から歴史的名牝になった馬。兄弟は少しスピードが足りなかったり、成長が遅かったりしていたが、スピード系の父の間に生まれたタニノミッションは素軽さを感じさせる。

 

以下、連勝中のレッドアネモス、デイリー杯2歳ステークスでアドマイヤマーズと叩き合ったメイショウショウブなど、若く夢と可能性を秘める牝馬たちが暮れの仁川に集結。翌年の桜の頃まで続く長い戦いの中間試験に挑む。

 

向正面のゲート入りはゆっくり慎重に行われる。キャリア2、3戦の馬が多い2歳牝馬GⅠではゲートに細心に注意が払われる。そのスタートではクロノジェネシスがタイミングが合わずに出遅れて、後方からレースを進めることになった。比較的内目の枠の馬たちがスタートよく前を占めた。最内の1番枠に入ったベルスールが包まれるのを嫌い、先頭に立ち、その外に勢いよくメイショウショウブが並んでくる。直後にスタークォーツ、その外にウインゼノビアラブミーファインも差を詰める。直後にプールヴィル。どの馬も騎手とのコンタクトで若干ケンカ気味だ。やはり、まだまだ幼い女の子たち、一気に飛び出して行きたがる。

内枠のかかり気味な先行勢に外からさらに行きたがる組がやってくる。ローゼンクリーガーレッドアネモスグレイシアらが被せにきて、ウインゼノビアあたりが位置を下げていく。内枠が飛び出し、外から被せにいく、落ち着かない先行争いが作ったペースは前半800m47秒0の平均的な流れになった。

中団のインにジョディー、直後のタニノミッションが外からビーチサンバがやってくると行きたがる素振りを見せた。サヴォワールエメが外から追走し、直後のインにシェーングランツが控え、外に並んでくるのがダノンファンタジー。折り合いに気を使うために、馬の直後でなだめようとする騎手心理が集まって、馬群は先頭から中団までひと塊になって進んでいる。この馬群からやや離れてクロノジェネシストロシュナが最後方を進む。

 

平均的な流れ、折り合いに専念する騎手たち、ひと塊の馬群は動くことなく、直線を迎えようとしている。ベルスールの外にメイショウショウブラブミーファインが進出し、プールヴィルは狭いインに潜り込んだ。後方では大外をクロノジェネシスが仕掛けながらあがっていき、それに反応してダノンファンタジーが内から併せにいく。

直線では内の先行勢からベルスールが一旦抜けかけるが、メイショウショウブがそれを制して先頭に立つ。馬群からビーチサンバが抜けだし、追ってくる。後方勢は大外からダノンファンタジークロノジェネシスが併せ馬で追い込んでくる。シェーングランツは行き場がなくなりかけては進路を切り替え、踏み遅れている。ダノンファンタジークロノジェネシスの勢いが明らかにメイショウショウブを上回る。ビーチサンバもこの併せ馬に応戦し、食い下がる。遅れたシェーングランツがその後ろを追ってくる。クロノジェネシスダノンファンタジーの前へ出ようとしたところ、ダノンファンタジーが差し返すように前に出て、クロノジェネシスに抜かせない。この瞬間に勝負がついた。ダノンファンタジーが1着、クロノジェネシスが2着、最後まで食い下がったビーチサンバが3着。勝ち時計1分34秒1(良)。

 

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全着順

第70回阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)2歳オープン・牝馬(阪神・芝1600m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
ダノンファンタジー
牝2
C.デムーロ
 1:34.1
2
クロノジェネシス
牝2
北村友一
1/2
3
ビーチサンバ
牝2
福永祐一
クビ
4
シェーングランツ
牝2
武豊
3/4
5
プールヴィル
牝2
秋山真一郎
1/2
6
メイショウショウブ
牝2
池添謙一
2
7
◯外タニノミッション
牝2
浜中俊
1/2
8
サヴォワールエメ
牝2
藤岡康太
クビ
9
レッドアネモス
牝2
戸崎圭太
ハナ
10
トロシュナ
牝2
北村宏司
クビ
11
メイショウケイメイ
牝2
古川吉洋
クビ
12
ローゼンクリーガー
牝2
藤岡佑介
1.3/4
13
ウインゼノビア
牝2
松若風馬
2.1/2
14
ラブミーファイン
牝2
丸山元気
クビ
15
グレイシア
牝2
田辺裕信
クビ
16
ジョディー
牝2
四位洋文
3.1/2
17
ベルスール
牝2
B.アヴドゥラ
1.1/2
18
スタークォーツ
牝2
荻野極
1.1/2

 

 

1~3着馬コメント

1着ダノンファンタジー(1番人気)

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パドックではテンションが高そうな姿だったが、その辺を察知したクリスチャン・デムーロ騎手は馬の気に任せつつ、ストレスを感じさせない後方の外を走らせ、馬との呼吸を計った。シェーングランツの外に並びながら、勝負どころではクロノジェネシスの進出に反応し、併せ馬に持ちこんだ。坂をあがって、クロノジェネシスに勢いで上回れかけたが、そこで馬を叱咤し、もう一度反応させて、差しかえしたあたり、馬の能力や気力の強さもさながら、C.デムーロ騎手の手腕も大きかった。馬も折り合いに苦労する馬が多いなか、外をスムーズに走り、素直に力を出し切る完成度の高さも特筆すべきだ。

 

2着クロノジェネシス(2番人気)

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まずスタートのタイミングが合わなかったのは痛い。本来はもう少し前で立ち回っても末脚がしっかりしている馬。道中ダノンファンタジーの前にいればと思ってしまう惜しいレースだった。外から早めに動いて、ダノンファンタジーにプレッシャーをかけたかったが、ダノンファンタジーに反応され、押し込めきれなかった。完成度ではダノンファンタジーに負けたが、一旦は前に出るような確かな末脚は目を引いた。来春の再戦が楽しみになる内容だった。

 

3着ビーチサンバ(4番人気)

今日は1、2着馬に力負けの印象。ただし、外の併せ馬には手応えで見劣ったが、それでもそこから食い下がるしぶとさは目についた。こちらも底力が問われる平均的な流れのなかで血統の強さを垣間見せた。アルテミスステークスで先着されたシェーングランツは完封しており、こちらも春に向けて一段階パワーアップできれば、今日の結果を覆せる。

 

総評

4着シェーングランツがインから密集した馬群を抜けてくるのに手間取ったように、まだまだ経験少ない2歳牝馬。不器用なレースになってしまった組も多い。そのシェーングランツは馬群を抜けて、思いっきり走ると、アルテミスステークスで見せたような切れ味を披露しており、こちらも来春が楽しみではある。

かつてこのレースを走った母が産んだ子どもが走るのも魅力のひとつだ。良血がその血の凄さを披露するケースもあれば、まだまだその血の力を発揮できないような幼さを見せることもある。まだまだ、2歳暮れはキャリアの始まり。これから春に向けて成長を遂げる馬もいるだろう。反面、阪神ジュべナイルフィリーズは同じ舞台だけに桜花賞に直結するレースでもある。このレースの1、2着のダノンファンタジークロノジェネシスはこの結果から桜花賞の有力候補であることは間違いない。

 

 

(勝木淳)

(写真・ゆーすけ)

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