【重賞回顧】第70回朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)

たった1頭挑む牝馬。グランアレグリアはダノンファンタジーを超えるのか

 

男女が同じ舞台で覇を競うケースは多くはない。人間では男女で記録的な開きが生じるので分けて競技が行われるが、馬の世界も基本的には牝馬は牝馬限定戦で頂上を決める場合が多い。男馬相手に互角に戦える牝馬は珍しいが、人間ほど難しくもない。歴史を紐解いても牡馬に勝る名牝は多く、特に現代は世界的にエネイブルウィンクスアーモンドアイなど牝馬の時代ともいわれる。

 

こうした時代背景を象徴したレースが第70回朝日杯フューチュリティステークスだった。

単勝1倍台の圧倒的な1番人気に支持されたのは、牝馬のグランアレグリア。前週の阪神ジュベナイルフィリーズを勝って2歳女王になったダノンファンタジーを6月の新馬戦で圧倒し、男馬相手のGⅢサウジアラビアロイヤルカップを出遅れ、折り合いを欠き、抜け出して快勝という破天荒なレースも強さを際立たせた。陣営は牝馬限定の阪神ジュベナイルフィリーズではなく、朝日杯フューチュリティステークスへの出走を決断。グランアレグリアは牝馬ながら男馬相手の2歳チャンピオンへの道を歩むことになった。

 

これに対抗する牡馬勢は6月中京デビュー以来、オープン、重賞と3連勝中のアドマイヤマーズが筆頭格。2歳馬ながら父ダイワメジャー譲りの勝負根性で無敗街道を進む。同じく中京デビューから重賞2連勝中のファンタジストは距離を伸ばしながらの連勝という将来性を感じさせる戦歴。同じく中京でデビュー、アドマイヤマーズには敗れたものの、夏の新潟で未勝利、重賞を連勝中のケイデンスコール

 

以下、サウジアラビアロイヤルカップでグランアレグリアの2着だったドゴール、アイビーステークス3着のエメラルファイト、函館2歳ステークス馬アスターペガサスなど、2歳トップクラスが集結した。

 

グランアレグリアは内枠の2枠2番からスタート。ロスが少ない枠とはいえ、牡馬相手に揉まれる込むことを避けたい。前走で出遅れているだけにスタートは注目されたが、今回は見事に好スタートを切り、一旦はハナに立つ勢いを見せる。

外からイッツクールがハナを奪いに来るが、グランアレグリアはそうあっさりは引かない。インで突っぱねるような素振りを見せ、自分の目前のインには容易に入れない。

この2頭の直後のポジションを取ったアドマイヤマーズは戦前グランアレグリアの前にいると目されたが、今日はいつもより控える姿勢をみせた。そのインに1番枠からスタートしたクリノガウディーが続く。この先行集団からやや離れて、中団の外にディープダイバー、間にアスターペガサス、最内にドゴール。この後ろの列にファンタジストヒラソール。後方にスタートで遅れたニホンピロヘンソンコパノマーティンマイネルサーパスニホンピロヘンソンは外を前へ前へと動いていく。ケイデンスコールエメラルファイトソルトイブキが後方に続く。

 

前半800mは47秒7というスローペース。イッツクールグランアレグリアも折り合いながらじっくりと後続を引っ張る。アドマイヤマーズグランアレグリアの直後を追走。徹底マークの姿勢だ。4角からアドマイヤマーズのミルコ・デムーロ騎手の手が動き始める。前のグランアレグリアはまだ余裕の手応え。見劣ったかと思えたが、そうではなかった。早めにエンジンを点火させ、グランアレグリアに出し抜けを食らわそうとしていたのだった。アドマイヤマーズがインからグランアレグリアの外に進出する際に、後ろにいたディープダイバーが進路を失い、内にササる。そこにいたクリノガウディーが立ち上がりかける。

直線入り口、アドマイヤマーズグランアレグリアの外に進出、圧力をかける。グランアレグリアは逃げたイッツクールアドマイヤマーズに挟まれる形になり、そこを抜け出せない。アドマイヤマーズグランアレグリアを脚色で上回る。グランアレグリアはこのプレッシャーから逃げるようにラチ沿いへ進路を切り替えて立て直しを図る。

一旦前に出たアドマイヤマーズは阪神の坂にも負けない力強い走りで先頭を走る。その外から追いかけてきたのは4角で一旦、進路を失ったクリノガウディーだ。外に切り替えてアドマイヤマーズを追う。グランアレグリアを競り落とし、気を抜きかけたアドマイヤマーズだったが、後ろからクリノガウディーが来たことで、再び闘志に火がついた。この根性がこの馬の強さ。クリノガウディーに接近されることなく、先頭でゴール。追ったクリノガウディーグランアレグリアの抵抗を振り切って2着。そのグランアレグリアは3着となった。時計は1分33秒9(良)。

 

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全着順

第70回朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)2歳オープン(阪神・芝1600m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
アドマイヤマーズ
牝2
M.デムーロ
 1:33.9
2
クリノガウディー
牝2
藤岡佑介
2
3
グランアレグリア
牝2
C.ルメール
1/2
4
ファンタジスト
牝2
武豊
1.1/2
5
ディープダイバー
牝2
川田将雅
1.1/4
6
エメラルファイト
牝2
W.ビュイック
2.1/2
7
◯外アスターペガサス
牝2
福永祐一
1.1/2
8
ヒラソール
牝2
岩田康誠
1/2
9
イッツクール
牝2
松田大作
1/2
10
マイネルサーパス
牝2
丹内祐次
3/4
11
コパノマーティン
牝2
坂井瑠星
1.1/4
12
ドゴール
牝2
津村明秀
クビ
13
ケイデンスコール
牝2
C.デムーロ
ハナ
14
ソルトイブキ
牝2
四位洋文
2.1/2
15
ニホンピロヘンソン
牝2
浜中俊
1.1/4

 

 

1~3着馬コメント

1着アドマイヤマーズ(2番人気)

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ダイワメジャーに3歳時に騎乗していたM.デムーロ騎手はお父さんに似ていなくて真面目だとコメントしていたが、父ダイワメジャー最大の武器だった後ろから競りかけられても絶対に負けないという闘志と根性を見事に受け継いでいる印象。道中の走りでは尻尾を立たせるように走っており、ムチに反抗する素振りを見せるなど、まだまだ若さが残る。気性的に若いところも父ダイワメジャーに似ている。そして、父ダイワメジャーが真価を発揮したのは古馬以降。この馬もまだまだ未完成であり、来年以降楽しみな存在だ。

 

2着クリノガウディー(9番人気)

東京スポーツ杯では先行して伸びきれず7着に敗れたが、今回は最内枠を活かしてスムーズな先行態勢を作れたことが大きい。4角でディープダイバーに寄られて進路がなくなる不利から外に進路を切り替えての追撃は見せ場十分。スローペースで前に位置した馬しかレースに参加できないような流れになった点も味方した。しかし、最後にグランアレグリアを差したのは能力の証だろう。

 

3着グランアレグリア(1番人気)

出遅れ、折り合いを欠くという競馬内容は今回はかなり改善され、好スタートから番手追走という流れを思えば理想的な競馬ができた。しかし、直線入り口でイッツクールアドマイヤマーズの間に挟まれる形になった途端に手応えが悪くなった点は、やはり牝馬の難しさを感じさせた。クリストフ・ルメール騎手がラチ沿いに飛び込ませ、立て直しながらアドマイヤマーズを追ったが、力尽き、及ばなかった。この挑戦によって精神的なリズムを崩さなければ、来年の桜花賞戦線有力候補であることは変わらない。

 

総評

勝ち時計1分33秒9は先週の阪神ジュベナイルフィリーズより0秒2速く、グランアレグリアの時計は1分34秒3だった。当然、単純な比較こそはできないが、グランアレグリアが全能力を発揮していないのは確かなところだろう。ただし、前後半800mは47秒7-46秒2の完全なるスローペース。上位は道中5番手以内の馬が独占するような緩い流れだったことは特筆すべきだ。アドマイヤマーズクリノガウディーグランアレグリアも自らに流れが味方した部分があるだけに、来年のクラシック戦線の勢力図は未知である点は忘れないでおきたい。まだまだクラシックの戦いは長く、険しい。4着ファンタジストなど流れが味方しなかった組の巻き返しも十分に考えられる。

 

 

(勝木淳)

(写真・ゆーすけ)

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