【重賞回顧】第60回アメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)

伝統のGⅡ。奇跡のようで、決してそうではない、ドラマチック競馬の裏

 

冬の中山最終日を飾るはAJCC、アメリカジョッキークラブカップ。今年60回目を迎える名物レースだ。有馬記念から約1カ月、早くも古馬中距離路線が始動する。2000年以降、有馬記念の次走にAJCCを走り、勝ったのはヴェルデグリーンルーラーシップトーセンジョーダンネヴァブションアメリカンボスの5頭いる。

対して、菊花賞馬が次走に有馬記念ではなく、このAJCCを選ぶケースは珍しく、1977(昭和52)年グリーングラス以来あらわれていない。グリーングラスが勝ったのは東京芝2400m。中山に移ったのは1980(昭和55)年(勝ち馬カネミカサ)からで、現在と同じ条件の芝2200m戦になったのは1985(昭和60)年サクラガイセンが勝った第26回からだ。

 

グリーングラス以来のローテーションで挑むフィエールマンは当然ながら断然の1番人気に支持された。キャリア4戦目で菊花賞を勝った天才は今日がまだ5戦目。極上の切れ味を発揮できるだろうか。

対抗格には同世代のジェネラーレウーノが支持された。中山は京成杯、セントライト記念と重賞2勝、皐月賞3着と得意条件。先行力と自らレースを動かして力勝負に持ち込みたいところだ。

昨年の勝ち馬ダンビュライトは昨年の天皇賞(秋)で放馬のため除外、次走チャレンジカップ4着とリズムを崩しているが、昨年勝ったこのレース、父ルーラーシップも勝った舞台で復活を期す。

ほかにはサクラアンプルールシャケトラと中山重賞勝ち馬も顔を揃えた。

 

絶好枠を引いたジェネラーレウーノがハナに行くのではないかという予想があるなか、スタートから主導権を握りに行ったのがステイインシアトル。2017年の鳴尾記念を逃げ切った実績もあり、久々にハナを叩ける組み合わせということもあって、先行態勢をとった。

その直後のインにつけたのがジェネラーレウーノ。こちらも一番力を出せる競馬の形に持ち込んだ。3番手外から番手を伺うミライヘノツバサ、中山4勝のコース巧者だ。その後ろに控えたダンビュライトはパドックから落ち着きを取り戻し、レース中も北村友一騎手と折り合って運んでいる。

中団の外にシャケトラが位置し、インにマイネルミラノシャケトラの直後にフィエールマンが追走。

中山外回りの奥深い2角から向正面でペースは急落し、12秒台後半というゆったりと落ち着いた流れになった。3角手前の残り800m標識から徐々にステイインシアトルがペースをあげ、残り600mから11秒台にさらにペースアップ。ジェネラーレウーノステイインシアトルに並びかけ、さらにその外からシャケトラが積極的に動き始める。インから縫うようにダンビュライトも動き、フィエールマンは早めに動き出した組を追うように差をつめていく。

レース最速ラップが刻まれた残り400m地点、4角から坂下にかけてジェネラーレウーノステイインシアトルを捕らえに出るところを外から進出してきたシャケトラが脚色で上回る。直後からメートルダールが追いかけ、そのインからフィエールマンがあがってくる。

直線入り口で早々に先頭になったシャケトラ、抵抗するジェネラーレウーノ、外から伸びるフィエールマンメートルダール

ジリジリと着実にシャケトラとの差を詰めるフィエールマン、それを追うメートルダール。坂をあがってもシャケトラは捕まりそうで捕まらない。フィエールマンは差をつめ、馬体を並べるも、シャケトラは踏ん張る。馬体を並べて通過したゴール板、シャケトラが執念でわずかアタマ差フィエールマンを完封してみせた。3着はメートルダール。時計は2分13秒7(良)。

 

全着順

第60回アメリカジョッキークラブカップ(GⅡ)4歳以上オープン(中山・芝2200m)

着順
馬名
性別・馬齢
騎手
着差・タイム
1
シャケトラ
牡6
石橋脩
 2:13.7
2
フィエールマン
牡4
C.ルメール
アタマ
3
メートルダール
牡6
O.マーフィー
3/4
4
ジェネラーレウーノ
牡4
田辺裕信
1.1/2
5
◯地サクラアンプルール
牡8
蛯名正義
1.1/4
6
ダンビュライト
牡5
北村友一
3/4
7
◯地ショウナンバッハ
牡8
三浦皇成
1/2
8
ステイインシアトル
牡8
内田博幸
3/4
9
マイネルミラノ
牡9
柴田大知
2
10
ミライヘノツバサ
牡6
北村宏司
クビ
11
アクションスター
牡9
大野拓弥
クビ

 

 

1~3着馬コメント

1着シャケトラ(7番人気)

キタサンブラックが有終の美を飾った有馬記念で、その2番手を追走していたのがシャケトラだった。レース後に故障が判明し、1年1ヶ月の休養を余儀なくされた。その休養明けでの激走は周囲を驚かせた。4角手前から早めに動き出し、外からジェネラーレウーノらを封じる強気な競馬から直線ではフィエールマンの末脚もギリギリ凌ぐ強い競馬だった。戸崎圭太騎手から急遽乗り替わった石橋脩騎手はこうした強気に動いて後続を断ち切るような競馬が得意であり、シャケトラと見事にマッチングした印象だ。

 

2着フィエールマン(1番人気)

かつてラジオNIKKEI賞でとてつもない末脚を繰り出しつつ、逃げたメイショウテッコンを捕らえられなかったレースがあったが、今回はその敗戦を踏まえた早めに馬を動かすような競馬を心がけた。結果的に前にいたシャケトラを捕らえ切れなかったが、クリストフ・ルメール騎手らしい小回りに弱点を抱える馬のロスをなくす騎乗だった。坂をあがっても脚色は鈍ることはなく、休み明けとしては十分すぎるレース内容だった。

 

3着メートルダール(5番人気)

フィエールマンをマークするような位置から早めに動いて外から一旦フィエールマンを出し抜くような形を作ったが、直線ではフィエールマンに及ばなかった。中日新聞杯勝ち、新潟記念2着など中距離重賞で活躍する6歳、ここでも確かな力を披露した。

 

総評

シャケトラの角居勝彦厩舎が復帰早々に重賞タイトルを奪取した。競馬には不思議なことがよく起こるもの。自らの不注意とはいえ半年以上、競馬から離れてしまった角居勝彦調教師に重賞をプレゼントしたシャケトラ。自身は骨折で1年以上の休養からの復活だった。タイミングがタイミングなだけに競馬は不思議なことが起こると思ってしまうが、シャケトラは日経賞勝ちのほかに宝塚記念4着など中距離戦線で上位の力を持った馬。休養明けでも強気に攻める姿勢を心がけた競馬がシャケトラの能力を再び目覚めさせた結果でもある。そして、角居調教師が現場を離れることになった期間、中竹和也厩舎でチーム角居を守り抜いたスタッフの努力がこの結果を呼び込んだともいえる。

奇跡のような必然。競馬はドラマチックであり、人馬のたゆまぬ努力の結晶でもある。

 

 

(勝木淳)

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