【重賞回顧】第33回根岸ステークス(GⅢ)

砂漠を駆ける歴戦の戦士たち。挑む新星、立ちはだかる猛者たちの群れ

 

極限まで水分を失った砂の上。

馬たちが走りぬけると、立ちこめる砂煙が北風に流されていく。

競馬界、冬の季語といえば、やはりダート競馬だ。芝とはまた違う世界がそこにはある。溜めを作り、最大速度を最後に賭ける芝の競馬とは対照的にダート競馬は溜めなど作らない。走りにくく、パワーで掻きこまないと前へ進まない砂の上ではスタートから一気に走り出す。加速にも時間がかかり、後手を踏むと追走に手一杯になる。スタミナが切れたものから脱落し、最後まで耐え抜いた馬が勝つ。激しい競馬が多いダート界、そこで一流にまで出世する馬たちはみな、頑健な体を作りあげる。500キロを超す馬たちのぶつかり合い、その迫力こそ、真冬の空に映える。

 

3週間後のGⅠを見据えた前哨戦、根岸ステークス。場所は本番と同じく東京競馬場。距離は200m短い1400m。東京ダート1400mはスピードとスタミナのトータルバランスが求められ、1600m戦より溜めがいらない極限の世界。陸上に例えれば、無酸素運動の限界といわれる400mのようなものだ。

 

東京1400m~マイル戦ならば現役屈指の力を見せるサンライズノヴァ(540キロ)。苦手なコーナー4つの1800m戦だったチャンピオンズカップは6着。今回は東京1400m戦。巻き返しが期待される。

東海ステークスのインティに続くのかと注目されるコパノキッキング(478キロ)は4歳セン馬の上がり馬。カペラステークスからの距離延長でここを突破すれば、一躍主役に名乗りをあげる。

昨年の武蔵野ステークス4着とコース適性を証明したユラノト(506キロ)、快速馬マテラスカイ(518キロ)、常にダート重賞で最後にいい脚を使うクインズサターン(476キロ)、2016年このレースとフェブラリーステークスを連勝したモーニン(522キロ)、NAR年度代表馬キタサンミカヅキ(528キロ)が船橋から参戦。ダート重賞路線常連の猛者たちが集まった。

 

向正面、ダートコースの上に置かれたスターティングゲートから飛び出す16頭。毎度のことながらサンライズノヴァがスタートで後手を踏み、隣のメイショウウタゲ(520キロ)も出遅れた。対照的に抜群のスタートを切ったのが大外枠のマテラスカイ。快速馬らしく大外枠でも一気にハナを奪う。レッドゲルニカ(546キロ)が直後の2番手に素早く取りつき、ノボバカラが3番手(506キロ)。この3頭が離し気味に先行。離れたインからユラノトが抜けてくる。この後ろの中団は集団を形成、ひしめき合う形になった。インに岩手から転厩してきたラブバレット(482キロ)、ワンダーリーテル(534キロ)、ラブバレットの直後にクインズサターン、間で砂を被るケイアイノーテック(468キロ)、その外にヤマニンアンプリメ(492キロ)、さらに外をコパノキッキングが追走。背後からキタサンミカヅキが進出、サンライズノヴァもキタサンミカヅキの動きに呼応する。みんな溜めなど作らない。置かれた組も待機などはせず、積極的に攻めあがる。

単騎で先頭を走るマテラスカイは前半600m35秒0とこの馬としてはゆったりとした走り。当然、後続も追走が苦にならない。

4角手前まではマテラスカイ、レッドゲルニカ、ノボバカラが後続を離していたが、コーナリングでこの3頭がやや不器用に外を回るなか、ユラノトがインからキレイなコーナリングで差を一気に詰めていく。直線でレッドゲルニカ、ノボバカラを離しに行くマテラスカイ、そのインを脅かすユラノト。ユラノトの進路を利用して進出するクインズサターン。マテラスカイがユラノト、クインズサターンに抵抗できず、伸びを欠き、ユラノトがマテラスカイを交わしに行くときだった。外から明らかに違う手応えで一気に伸びてきたのがコパノキッキングだ。後方でサンライズノヴァが伸びを欠き、モーニンが懸命に差を詰めるが、コパノキッキングは残り200m標識であっという間に勝負をつけた。食い下がるインのユラノト、クインズサターンも問題にせず、力強く先頭でゴールを駆け抜けたコパノキッキング。2着はユラノトが粘り、クインズサターンが3着になった。時計は1分23秒5(良)。

 

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1~3着馬コメント

1着コパノキッキング(2番人気)

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カペラステークスは鮮やかながら、展開がハマった大外一気の競馬だったため、距離延長と力を要する先行有利な馬場でどう出るかという向きもありながら、今回は完勝だった。置かれる心配は一切なく、中団の外を労することなく楽に追走し、直線は一気に弾けて勝負をつけた。距離延長によってかえって競馬が安定した印象さえある。短期免許で来日中のオイシン・マーフィー騎手は来日最終日に重賞初制覇。アイルランドの騎手ながら、ダート競馬を全く苦にしないタフガイの力強いアクションも印象的だった。

 

2着ユラノト(3番人気)

こちらはクリストフ・ルメール騎手らしい枠順を活かしたロスのない競馬内容が光った。まだまだダートのトップどころとは力勝負では分が悪いが、今日のような器用な立ち回りができる馬。東京コースへの適性は高く、今後も重賞戦線で通用するだろう。

 

3着クインズサターン(5番人気)

場所を選ばず、JRAのダート重賞では堅実に走る馬。今回も差して3着と現状の力は出し切れただろう。そこに加えてルメール騎手の競馬を利用するような四位洋文騎手の老獪さも目立った。インに拘り、ユラノトの動きに合わせ、ユラノトが作った進路を利用して抜け出してきた。走る馬の直後というのは進路が生まれやすい。当然、前を走る馬の優位を覆すのは難しいが、他馬を利用して自分の馬の力を出すための作戦というのもある。

 

 

総評

昨年夏の北海道シリーズでダート1000mを連勝。準オープン昇級緒戦で1400m戦出走も4着敗退。コパノキッキングの真価はそこからだった。1200m戦で準オープン、オープン、重賞を3連勝。それも追い込みあり、好位抜け出しありと、戦法が定まらない形も底知れぬものがあった。そして、根岸ステークスで久々出走の1400m戦も安定した危なげないレース内容で完勝した。ダート界は4歳勢が席巻しているが、ここに新たにコパノキッキングが加わった。本番のフェブラリーステークスは藤田菜七子騎手が騎乗することをオーナーが明言。夢はさらに広がる。

新星登場のダート界だが、芝路線以上にベテランたちは衰え知らず。完成されたダートのチャンピオンクラスは威圧感を感じるほどの巨体の持ち主ばかり。芝から転戦する馬のなかにはパドックで圧倒されて震える馬もいると聞く。雄大で力強い鎧をまとった猛者たちに挑む4歳勢。真冬のダート決戦が今から待ち遠しい。

 

 

(勝木淳)

(写真・かぼす)

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