【重賞回顧】第59回きさらぎ賞

明暗を分ける淀の雨。ここにもあったクラシックの分岐点

 

中9週。

皐月賞を10週間後に控えた牡馬クラシック戦線。きさらぎ賞から直行すれば、中9週。春は、冬の背後からじっくりと一歩一歩迫ってきている。そうは言いつつ、レース当日は節分、その翌日は立春。暦の上では春だが、まだまだ厳しい寒風に見舞われる季節。寒中競馬はやがて訪れる春に向けて力を蓄える場であり、春に生き残りをかけたサバイバルレースでもある。皐月賞まで中9週。勝ちあがり、賞金を加算するためにレースに出走できる機会はもう限られつつある。

 

きさらぎ賞といえば、名馬の登竜門。ダービー馬スペシャルウィーク、菊花賞馬ナリタトップロード、サトノダイヤモンドが勝ち馬に並ぶ。京都芝1800m、この舞台で最後まで力強く走りきれること、それはクラシックを占う指標にもなる。

 

出走馬8頭。このレースに強いディープインパクトの子どもが3頭エントリー。ホープフルステークスでは直線で進路を失って敗戦を喫したヴァンドギャルド。セレクトセールで2億円以上の価格で取引されたダノンチェイサーは、2勝目を中京500万下特別こうやまき賞であげ、参戦する。3頭目のメイショウテンゲンは、母は現役時代7勝したメイショウベルーガ。阪神未勝利戦では直線で外へ外へ逃避、外ラチ沿いまで行きながら差しきった。

現役時にこのレースに参戦、2番人気3着と敗戦を喫したオルフェーヴルの子どもは2頭出走。新馬、500万下連勝中のエングレーバー、エリカ賞3着のタガノディアマンテ、ともに仲良く内枠に入った。

関東から意欲の西下を果たしたアガラスは父ブラックタイド、母父ブラックホークという金子真人ブランドから生まれた馬。東京スポーツ杯では上がり最速の脚を繰り出し、ニシノデイジーの2着。賞金をぜひとも加算したい。

スクリーンヒーロー産駒のコパノマーティン、ケープブランコ産駒のランスオブプラーナ、どちらも前走短距離戦から参戦。頭数が少ない間隙をついて賞金加算を目論む。

 

レース前に雨が降り出した。

天候発表が雨、もしくは小雨のきさらぎ賞は珍しく、2002年メジロマイヤーが勝ったときが小雨だった。騎乗していたのは飯田祐二騎手(現在は調教師)。もう17年前のことだ。

雨に煙る向正面奥のシュートからスタートする8頭。好スタートから楽にハナに立ったのはランスオブプラーナ。競りかける馬はいない。同じくスタートを決めたダノンチェイサーがその外にすっと並び、2番手の位置にすんなり収まる。周回コースとの合流点でこの2頭は隊列を決める。内からエングレーバーが3番手をとり、外にコパノマーティン、さらに外から並ぶヴァンドギャルドは壁が作れず、やや走りが収まらない様子。じわりと順位をあげ、ダノンチェイサーの後ろ3番手まで押しあげていく。

後方はアガラスとメイショウテンゲンの外枠2頭が併走、最後尾にタガノディアマンテが位置している。

長い向正面ではヴァンドギャルドの走りが収まりそうで収まらない。1000m通過61秒2のゆったりとした流れ。牡馬クラシック路線は少頭数レースが多く、どのレースもこうして前半は静かに流れる。折り合いをつけ、しっかり位置をキープする走りが求められる。

3角から4角付近、先頭を走るランスオブプラーナはじっくりとラップをあげていく。ダノンチェイサーは京都のアップダウンで無理はしない。一旦、ランスオブプラーナに差をつけられる。3番手ヴァンドギャルド以下、アガラス、メイショウテンゲン、エングレーバーがダノンチェイサーに迫り、馬群が密集していく。クラシックを狙う以上、取りこぼすわけにはいかない。だから、どの騎手も射程圏内を意識している。

直線入り口から一気に後ろを突き放すランスオブプラーナ。この瞬間にそれを見逃さずに捕らえに出るダノンチェイサー。ヴァンドギャルドはこの時点でダノンチェイサーの加速に対応できない。後方にいたタガノディアマンテが溜めに溜めた末脚を爆発させ、ダノンチェイサーに迫る。残り200m、苦しくなったランスオブプラーナ、それを交わしにいくダノンチェイサー。その直後まで迫るタガノディアマンテ。ヴァンドギャルドもタガノディアマンテと競る形になって伸びる。粘りこもうと必死に走るランスオブプラーナを交わしたダノンチェイサーが後続を完封。最後にランスオブプラーナを交わしたタガノディアマンテが2着。3着争いはランスオブプラーナとヴァンドギャルドの間で写真判定に持ち込まれたが、ハナだけランスオブプラーナがヴァンドギャルドを押さえていた。勝ち時計は1分49秒0(良)。

f:id:umauma-free:20190204210724j:plain

f:id:umauma-free:20190204210743j:plain

 

1~3着馬コメント

1着ダノンチェイサー(3番人気)

f:id:umauma-free:20190204210802j:plain

スタートを決めて2番手をキープ。周囲の動きに動じず、逃げ馬の動きにもつられず、動きべきところで反応できる。センスの高さを示した。距離に対する不安も言われたが、高いセンスがあれば、クラシックは十分戦えるだろう。ペースを合わせて走るのは3歳の若駒には難しいものだが、ダノンチェイサーはそれを完璧にできる。こうした武器はクラシックを戦う上で大切になる。

 

2着タガノディアマンテ(6番人気)

8頭立ての6番人気ながら2着。初勝利をあげた東京戦もそうだが、こちらはオルフェーヴル産駒らしい荒々しさが武器。ドン尻待機から直線では脚色でヴァンドギャルドを完封していた。器用な競馬は望めないが、爆発力はこの父の最大の武器。兄にタガノトネールがいる血統でダートで活躍する馬が多く、今日はこの雨と時計を要する京都の芝を味方につけた印象。混戦になれば浮上する可能性はある。

 

3着ランスオブプラーナ(7番人気)

直線入り口ではダノンチェイサー以下を一度は突き放し、なんとか逃げ込みたかったが、残り200mで脚があがってしまい、ダノンチェイサーとタガノディアマンテに交わされてしまった。それでもヴァンドギャルドには先着を果たし、3着。松山弘平騎手は先行する馬に乗せるとその腕を発揮する。スタートを決めて、マイペースの隊列を作り、後ろが勝負に来る前に先に動いて物理的な差を生み出し、そのリードを守りきろうとする。強気に攻める騎乗スタイルは松山騎手の武器だ。

 

総評

勝ち馬ダノンチェイサーはこれで賞金を加算。皐月賞出走は確実といっていい。こうしてクラシックは勝ちあがり形式のトーナメントのようなもの。2着以下に敗れた馬たちは中9週のなかでどこかのレースを使い、ふたたび賞金加算をしなければいけない。負けたら終わりではないが、負けるごとに苦しくなるのがクラシック。今回は見事に展開がはまったランスオブプラーナが賞金加算できなかったのは痛恨だろう。稼げるときに稼いでおく、冬の重賞戦線はクラシックを戦う馬にとってそういった意味で重要なのだ。

センスあふれるダノンチェイサーと馬場を味方にできたタガノディアマンテ、展開がはまったランスオブプラーナ。そして、4着に敗れたヴァンドギャルド以下。きさらぎ賞の結果がこれらの馬たちの明暗を分ける。それがクラシック戦線の厳しさだ。

 

 

(勝木淳)

(写真・ゆーすけ)

競馬の楽しさを、すべての人へ。
ウマフリとは?
ウマフリ本誌はこちら。
ウマフリブログ
コラボ企画・ご寄稿も大歓迎!
お問い合わせ