【重賞回顧】第112回京都記念(GⅡ)

語り継ぐ、伝統。今をこじ開ける鍵を見つける歴戦の戦士

 

京都記念は今年で112回目を迎える。第1回は1942(昭和17)年5月。京都競馬場芝3500m、ハンデ戦で行われたというから、記憶している競馬ファンはほとんどいない。大相撲の優勝力士に双葉山の名前が残るほどの昔だ。

戦時中の中断を経て、京都記念は春と秋の京都開催名物レースになっていく。1983(昭和58)年を最後に秋の京都記念は廃止され、年1回の今の形になり、1994(平成6)年からは負担重量がハンデ戦から賞金別定に変更され、今のように中距離路線のトップ戦線の始まりになっていった。

歴代勝ち馬は春では第47回タケシバオー、第63回テンポイント、第93回テイエムオペラオー、第103回ブエナビスタなどがおり、秋の京都記念には第62回エリモジョージ(春の第65回も制覇)の名前もある。

賞金別定に変更された1994年から距離も芝2200mに固定。伝統のGⅡは真冬の淀の風物詩として今年112回目、誕生から77歳、めでたく喜寿を迎えた。

 

例年ドバイミーティングへの壮行レース的要素がある京都記念だが、今年はドバイを見据えてという出走馬が少なく、最近ではもっとも混戦模様を呈した。

1番人気ステイフーリッシュは同舞台の京都新聞杯勝ち馬。鞍上の指示を受けて自在に動ける機動性を武器に年明け緒戦の中山金杯2着から参戦する。

次位に支持されたのがマカヒキ。2016年のダービー馬も年が明けて6歳。何度か浮上の兆しをみせながら3歳ニエル賞以来未勝利という歯がゆい成績が続く。

内枠で好走が目立つノーブルマーズが久々に黒帽子。馬番4番より内ならば、メトロポリタンS、目黒記念、宝塚記念で2、2、3着と立ち回りの上手さを発揮する。

アルゼンチン共和国杯勝ち馬パフォーマプロミス、ホープフルS以来勝ち星から遠ざかるタイムフライヤー、AJCC勝ちダンビュライトなどタイトルホルダーが並ぶが、どこか突き抜けられない現状を打破したい馬たちが顔を揃えた。

 

ほぼ揃ったスタートから僅かにノーブルマーズが先頭を伺うスタンド前。外から押し寄せたのがサンデーレーシングの勝負服の3頭。ダンビュライト、タイムフライヤー、パフォーマプロミスだ。なかでももっとも外枠に入ったタイムフライヤーが勢いよく先頭に立っていく。後方を追走することが多いタイムフライヤーの逃げは和田竜二騎手がこの馬の現状のどこかを変えたいという意思の表れか。やや離れた2番手に収まったのはダンビュライト。こちらも近走は位置取りが安定しないなか、久々コンビ結成の松若風馬騎手がこの馬が力を出せる形を表現してみせる。

3番手パフォーマプロミス、その外につけたステイフーリッシュも今回は位置を取る競馬を選択。直後のインに潜むノーブルマーズは2角手前からやや頭をあげる仕草。外にケントオー、カフジプリンスが続く。この中団の後ろにハートレー、マカヒキが追走。その後ろにいたブラックバゴが向正面に入った地点から早くも前へ動き出す。後方はダッシングブレイズ、アクションスターが追走。最初の1000m通過は63秒3のスローペース。ダンビュライトが無理をしないので、タイムフライヤーはまんまとマイペースに落とす。

そこに後方から動いたブラックバゴが2番手ダンビュライトも交わし、タイムフライヤーに並んでくる。ここからのぼり坂。ブラックバゴの動きに反応したタイムフライヤーは13秒台を続けたラップを一気に12秒2まであげる。

レースはここで動き出す。一転して12秒台前半を刻んだため、中団以降で苦しくなる馬が出てくる。後方から外を回って進出するマカヒキや3番手に一旦下げたダンビュライトが盛り返し、インに入るパフォーマプロミス、まくったブラックバゴ、間に入るノーブルマーズ、ダンビュライトのさらに外を回るステイフーリッシュと一団で先頭のタイムフライヤーとの差を詰めながら4角の下りから直線コースへ入る。

タイムフライヤーが粘りを欠き、ブラックバゴが先頭に立つが、すぐ外にダンビュライトが並びかける。内からパフォーマプロミス、行き場を失いかけたノーブルマーズが下がるタイムフライヤーとブラックバゴの間を狙う。外から襲いかかるステイフーリッシュとマカヒキ。残り200mでブラックバゴを競り落としたダンビュライトが先頭に立つ。パフォーマプロミスが脚をやや鈍らせながらも食い下がる。ステイフーリッシュが2番手からダンビュライトを追う。マカヒキがステイフーリッシュに食い下がり、3番手。さらに外からは遅れてケントオーもやってくる。

現状を打破する馬はどの馬なのか。歴戦の古馬たちの勝利という希望を掴まんとする叩き合いが続くも、最初に先頭に立ったダンビュライトがゴールまでギリギリ押し切り、先頭でゴールした。2着は外から伸びたステイフーリッシュ、さらに外にいたマカヒキがパフォーマプロミスを交わし、追いあげてきたケントオーを抑えて3着になった。時計は2分14秒8(良)。

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1~3着馬コメント 

1着ダンビュライト(6番人気)

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まずは落ち着いていたことが勝因だろう。天皇賞(秋)では極度のイレ込みから騎手を振り落としたほど気性が難しい馬。地元の競馬で輸送時間が短かったこともあるが、陣営が馬の気性を考慮した仕上げを施した結果だ。松若風馬騎手はこの馬とのコンビは3戦全勝と好相性。初手で2番手に収まり、ブラックバゴが動いた地点でもじっとしていられたのは松若騎手との相性があったからだ。その松若騎手はこれが嬉しいGⅡ初制覇。今後もコンビ継続となれば、中距離戦線で台風の目になるかもしれない。

 

2着ステイフーリッシュ(1番人気)

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こちらも位置取りはいつもより前。初手のポジション争いが結果につながった。馬場のいい外を走り、勝負どころも終始外から攻めた。直線の勢いはダンビュライトより上だったが、スローペースを味方につけたダンビュライトには一歩及ばなかった。こちらは展開に泣いた口で、強い競馬はしていた。走りに安定感が加わった。勝負強いステイゴールドの血に安定感。飛躍のときを迎えつつある。

 

3着マカヒキ(2番人気)

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今回も兆しをみせるものの、完全復活とはならなかった。どうしても後手に回りがちな脚質だが、溜めてこそ末がいきるタイプ。なんとも乗り難しい、もどかしさを抱える。もう6歳。頑なに長距離戦に出走しないが、切れるというより持続力タイプに変わっている印象もあるので、3000m級への挑戦もあっていいのではないか。

 

総評

現状を打破したい組の戦いはスタート直後から騎手の思惑が交錯するレースになった。スタート直後に攻めたタイムフライヤー、ダンビュライト、パフォーマプロミスのサンデーレーシング3騎は明暗をわけた。逃げたタイムフライヤーはマイペースも普段と違う競馬に戸惑いをみせ、ブラックバゴに途中で絡まれてペースを早めにあげざるを得なかった部分も痛かった。久々に番手競馬となったダンビュライトは持ち前の渋さをいかしてタイトル奪取。インにこだわったパフォーマプロミスは京都の馬場状態に泣かされた形に見えた。最短距離からスタミナを温存する作戦はよかったが、結果としては外が伸びる馬場で苦しいところを走ることになった。

競馬は連勝など滅多になく、まして古馬で勝ち続ける馬は稀有な存在。ほとんどの馬が常に今置かれている立場、成績を打破しないと先に進めない。先へ進むために、今なすべきことはなにか。馬に関わる人々の試行錯誤は尽きることがない。そして、尽きないアイディアのなかにこそ、先へ進む鍵が隠れている。競馬の主役は馬ではあるが、やはり馬を通じてみえてくる人間の姿もまた興味が尽きない。

 

 

(勝木淳)

(写真・かぼす)

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