【重賞回顧】第53回共同通信杯(GⅢ)
クラシック戦線に名乗りをあげろ、2歳王者に挑む素質馬たち
土曜は延期、日曜は無事開催も少頭数の一戦
先週は京都、今週は東京での降雪で開催が危ぶまれ、実際に土曜競馬が月曜に順延になった。
雪が残って日曜日の開催にも影響があるのか、と思えば案外、雪はあまり降らず、日曜の東京は朝から快晴だった。
共同通信杯は歴史あるレースだ。
雪といえば、一つ思い出すのが、ダート1600mへ変更になった1998年の開催。
勝ったのは当時ダートで2戦2勝のエルコンドルパサー。2着も、ダートで2戦2勝のハイパーナカヤマ。1着から2着まで2馬身と楽勝だが、さらに3着には6馬身差をつけた圧勝劇だ。無敗馬同士の決着で、オッズもガチガチの低配当。
芝で活躍してる馬にいきなりダートを走れというのは無茶だよなあ……と思うが、ダートで連勝したエルコンドルパサーのこの後の芝での活躍はみなさんご存知のとおり。
今年の雪はなにか伝説をつくるかな、という淡い期待を寄せながら、馬柱を眺めると、ある意味、滅多にないことが起きている。
クラシックの登竜門、伝統の共同通信杯に出走しているのは7頭だけ。枠連の発売もなく、複勝も2着払いと寂しいかぎりではないか。たしかに例年10頭くらいではあるものの、7頭は少ない。
外厩制度が整いつつあり、有力馬がトライアルを使わず直行するということも要因の一つと言われているが、だったら鬼の居ぬ間にクラシックへの切符を狙うのも悪くないのではないだろうか。
しかし、鬼の居ぬ間にと書いたが、今回に限ってはそうはいかない。
2歳時にデイリー杯、朝日杯FSを制し、最優秀2歳牡馬に輝いたアドマイヤマーズの参戦だ。
無傷の4連勝でここまで駒を進め、3歳になった今、ここから始動する。
サートゥールナーリアと双璧と評されたクラシックの大将格。ここは当然のように勝ち負けを期待したい。
また、別路線を歩んできたクラージュゲリエも、札幌2歳ステークスでニシノデイジーと差のない競馬、のちに京都2歳ステークスを勝ち、G1には挑まなかったものの、実績十分。少頭数の競馬も経験があり、速い上がりもつかえ、ここでも上位評価だ。
しかし、先週のきさらぎ賞を思い出してほしい。
決して、2歳時の実績で着順が序列するわけではないこと。
そして、今回もダノンの刺客がいる。
ダノンキングリーだ。
2戦2勝で前走は中山で3馬身半つけて快勝した素質馬だ。
直前の10Rバレンタインステークスで半兄ダノングッドが6番人気で2着と勝ち負けしているのも、なんだか予感を感じさせる。
素質といえば、1戦1勝の馬だ。
特にフォッサマグナは新馬で後ろから一気に2馬身半ちぎり、素質の片鱗をみせた。この時の2着ランスオブプラーナはきさらぎ賞で波乱を演出した。鞍上にルメール騎手を迎え、ここを勝って一気にクラシックの中心に行くか注目だ。ルメール人気もあるのか、2番人気に支持された。
2歳最優秀牡馬という肩書きを背に、アドマイヤマーズは素質馬たちを蹴散らすことが出来るのか、試金石の一戦だ。
レース回顧
ゲートは揃ってきれいなスタート。
ゲバラがあえて手綱を引き、最後方につける。
先頭に立つのはアドマイヤマーズ。堂々と馬群を引っ張る。
2番手にフォッサマグナ、少し口を割って走っている。
ダノンキングリーが3番手、それぞれ1馬身差ずつ離れて追走する。
そこから2馬身あいてクラージュゲリエ。また2馬身あいてマードレヴォイス、外にホッカイドウ競馬から参戦のナイママ。
最後方はゲバラ。
3コーナーを前に、アドマイヤマーズを先頭にした隊列はほとんど変わらないが、ナイママがポジションをあげてくる。フォッサマグナは落ち着きを取り戻して、先頭にじわじわと接近。
1000m通過が1分1秒04とゆったりとしたペースで4コーナーへ向かう。馬群はぎゅっと詰まり、ほとんど差がない。外から仕掛けていくのはナイママだ。ぐいぐいと押されていく。
直線に入って、アドマイヤマーズのリードは1馬身あるかないか。しかし、まだ馬なりで持ったまま。
坂を上がるところで3番手だったナイママは失速、代わりに内からダノンキングリーが伸びてくる。
外にまわった馬たちの手応えはまだこれからといったところ。
アドマイヤマーズがようやく追い出されるが、脚色がいいのは内ラチ沿いから伸びてきたダノンキングリー、いとも簡単に2歳王者に並ぶ。
アドマイヤマーズの鞍上も焦ったように追いまくるが反応が今一つ。伸び脚鮮やかなのは、白い帽子ダノンキングリー、2歳王者を交わし、さらに差をつける。
アドマイヤマーズは懸命に追われるが、追いつけない。
後続は3馬身差がついて3着争い。フォッサマグナが粘っているが、外からクラージュゲリエがようやく追い込んでくる。
先頭はダノンキングリー。アドマイヤマーズが差し返そうとするが、ダノンキングリーの脚色は衰えず、1馬身半の差を守ったままゴールイン。
3着にはクラージュゲリエがなんとか確保。2着から4馬身差がついていた。
1~3着馬コメント
1着 ダノンキングリー
上がり最速で2歳王者を降し、無傷の三連勝で皐月賞への道を切り開いた。こういった上がり勝負ならめっぽう強いかもしれない。ディープインパクト産駒らしいといってしまえばそうなのだが。皐月賞は厳しい競馬になる分、多頭数の流れる競馬などの経験もしたいところだが、次走の予定はどうだろうか。
2着 アドマイヤマーズ
速い上がりを使われると勝ち切るのはなかなか難しくなるようだ。しかし、3着には4馬身の差、実力は十二分にある。土がついてしまったが、いずれ競馬は負けるもの。本番で勝てばいいという気持ちで課題を見つけてもらいたいところだ。
3着 クラージュゲリエ
なんとか後方から外をまっすぐ追い込んで3着確保。差をつけられてしまったが、素質は充分。自己条件に戻るか、トライアルに挑戦するかになるが、いい脚をつかうので、次はいい勝負になるだろう。
総括
7頭立て、というのはなかなか寂しい。
しかし終わってみるとやはり人気サイドでの決着。しかも、2着から3着まで4馬身の差があることを見ると、実力差がはっきりしたところだ。
アドマイヤマーズは結果如何は問わず、皐月賞へ向かうということだが、NHKマイルカップへ、という報道もある。ダノンキングリーはどうするのか、気になるところだ。2か月おきのレースをしているから、直行でちょうどよいのかもしれない。
クラージュゲリエ以下はまだわからない。今後のトライアル次第では浮上してくる可能性もある。
雪の影響はあまりなく、無事開催できた今年の共同通信杯。
伝説的なことはおこらなかったが、2歳王者の3歳戦初戦で2着に敗れ、新たなスターとなるかダノンキングリーがクラシック戦線をより一層盛り上げてくれそうだ。
2歳女王ダノンファンタジー、きさらぎ賞勝ち馬ダノンチェイサー、そして共同通信杯はダノンキングリー。
今年はダノンの馬が手強い。
最後に。
少頭数でもいい、普通に競馬が開催できることがなによりだということを書いておきたい。
(みすてー)