【重賞回顧】第53回フィリーズレビュー(GⅡ)

胸締めつけられる桜への最終トライアル。残すチケットはたった3つ

 

クイーンカップ、チューリップ賞に2歳牝馬路線のトップクラスが出走。桜花賞トライアルは今週が佳境だ。同日のアネモネステークスと合わせ、残る優先出走権は5。牝馬クラシッククライマックスはやはり桜花賞。生涯一度の桜の舞台、それは出られるのであれば、是非とも出たい、華やかなりし夢舞台。出走を約束された切符は5枚。フィリーズレビューには3枚の切符が用意される。

たった3枚の切符を巡る18頭の競走は、胸が締めつけられるような苛烈な切ない攻防が繰り広げられた。

 

抜けた馬はおらず、戦前はほぼ横一線といっていい評価であり、人気は単なる順番にすぎず、優劣の意味を一切なさない。フィリーズレビューとはこういうレースだという典型のようなメンバー構成だった。

 

スタートを決め、先制攻撃に出たのは小倉で未勝利勝ちをおさめたアスタールビー、京王杯2歳ステークス2着以来のアウィルアウェイ、暮れの阪神で2勝目をあげたイベリスの3頭。1番人気に支持されたアウィルアウェイは意図的にこれまでのレースとは異なる先行態勢をとる。そこに絡む内のアスタールビー、外のイベリス。先行争いから落ち着く気配はない。アウィルアウェイに引く素振りはない。抑えて下げれば、馬群に入る。ストレスを回避しつつ、潜在能力にかける。

 

この3頭の後ろも馬群のまま進んでいく。引いて落ち着かせるより、強気に攻める姿勢がうかがえる。

オープンの紅梅ステークスを勝った3勝馬メイショウケイメイ、同条件で2勝目をあげたジュライビルが併走。直後のインに紅梅ステークス2着のプールヴィル、外に併せる小倉で500万下を突破したラミエル。中団に前開催京都で未勝利を勝ったノーワン、東京で2勝目をあげたココフィーユ、小倉2歳ステークス2着のアズマヘリテージ、2勝馬エイティーンガール、フェアリーステークス2着ホウオウカトリーヌと固まって追走。

 

前半600m34秒9の平均的で淀みない流れのなか、後方にいる馬は折り合いを欠き気味だった。連勝でオープン入りを果たしたキュールエサクラ、阪神ジュベナイルフィリーズ9着のレッドアネモスの外枠勢は騎手がなだめながら進み、内にいるキュールエミヤビも馬群のなかで抑えられている。

後方は小倉で未勝利を脱出したウォーターエデン、阪神ジュベナイルフィリーズ以来のラブミーファインは大外枠ながらインに潜り込む。その外にオープン入り後は冴えないレースが続くウィンターリリーが最後方。

 

引かない先行集団、追いかける組も様子をみたりはしない。追いかけねば、3着以内に入らなければ、桜の舞台には立てないからだ。4角手前ではジュランビルが外から並び、先頭は内からアスタールビー、アウィルアウェイ、イベリス、ジュランビルの4頭が横一線の併走状態のまま、直線コースに突入する。過酷なサバイバルが始まった。

 

地力を証明せんと強気にアウィルアウェイが間から先頭に立とうとするところにイベリスが外からねじ伏せんと併せてくる。叩き合う2頭の外から遅れまいと食らいつくジュランビル。アウィルアウェイを競り落とし、先頭に躍り立つイベリス。食らいつくジュランビルも苦しい。待ち構える阪神の急坂。一気に駆けあがろうとするイベリスだが、ここで脚色が鈍る。坂が確実にスピードを削いでいるのだ。叩き合い、もがく3頭の外からやってきたのはプールヴィル。さらにインの狭いところを半ば強引にこじ開けるノーワン。前が壁だからと待っていてはレースは終わる。レースが終われば、桜花賞への道が絶たれてしまう。であれば、強引であっても割らなければいけない。前に出なければその先へ進めない。外からきたプールヴィルのエネルギーを借りて息を吹き返すジュランビルも3着以内を目指して追撃。インをこじ開けたノーワン、外のプールヴィル。イベリスを交わすジュランビル。たった3枚の切符をかけた激しい戦い。

 

プールヴィルとノーワンがまったくハナを並べたところがゴールだった。一旦はノーワンが出たかに見えたが、ゴール板ではプールヴィルが限界までクビを伸ばして飛び込んだ。

 

長い写真判定の結果、1着はノーワンとプールヴィルの同着。3着はジュランビル。この3頭にしか桜花賞の優先出走権は与えられなかった。勝ち時計1分22秒0(やや重)。

 

 

1~3着馬コメント

1着同着ノーワン(12番人気)

1番枠という与えられた条件を最大限に活かし、インの中団という揉まれるポジションにつけながら、しっかりリラックスさせて馬を走らせ、最後は進路を迷わずにアスタールビーとアウィルアウェイの間に定め、そこを抜け出した。坂井瑠星騎手の初重賞制覇はテクニックと若さあふれるファイトだった。結果的にはこの騎乗によって制裁を受けてしまったが、そこを恐れてチャレンジしないままでは重賞を勝てないだけでなく、ノーワンの桜花賞への道が閉ざされてしまう。一発回答、前途ある若い騎手の挑戦を讃えたい。

 

1着同着プールヴィル(3番人気)

枠なりのロスがない追走だったが、当然、直線では前にいるアウィルアウェイら先行集団4頭の壁にぶち当たる。この壁に当たることをしっかり読み、手数をかけず、絶妙なタイミングで外へ持ち出した秋山真一郎騎手の巧みな騎乗が目についた。直線ではほぼ真横に馬を動かしている。タイミングがひとつズレれば、外に馬がいて押し込められるところだった。このあたりの勘のよさが秋山騎手の真骨頂。夢中で追う坂井瑠星騎手を横目にしっかりゴール板でクビを下げるように計っていた。このタイミングひとつで同着に持ち込んでいる。つまり、同着に持ち込んだのは秋山騎手。ゴール板手前もゴール板過ぎもノーワンが前に出ていた。

 

3着ジュランビル(6番人気)

先行するアウィルアウェイらに早めに強きに並びかけ、イベリスに前に出られながらも、後ろからきたプールヴィルを利用して馬にファイトを促した。松若風馬騎手も味な競馬をしてみせた。手応えでも一旦はここまでかと思わせたものの、最後まで奮闘して3着。最後の切符をもぎ取った格好だ。

 

 

総評

先週の弥生賞と同じく雨のなかで行われた桜花賞へのトライアルレース。やや重に悪化した馬場状態がさらにレースを厳しいものにした。このレースはとにかく前への意識が非常に強くなる。今年も4頭が4角で並び、それぞれが抜け出そうとした残り400~200mが11秒3。スピード比べから自分こそが抜け出そうとする姿。この11秒3が最後の坂で明暗を分けた。前の組は苦しくなり、直後にいたプールヴィル、ノーワンが争う。最後の3枚目を追いかけてジュランビルが下がらずに踏みとどまった。今年も厳しいレースだった。直後のアネモネステークスでルガールカルム、レッドアステルが優先出走権を獲得。桜花賞の舞台を約束された切符はこれで売り切れ。出走権を確保できなかった組は残念だが、これで終わりではない。前を向くしかない。前を向き続ける姿こそ、美しい。

 

 

(勝木淳)

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