【重賞回顧】第68回スプリングステークス

はじまりも終わりも横一線。抜け出さなければ、次へは進めない。実力拮抗の最終トライアル

 

2回中山、阪神はクラシックトライアル開催。その最終日を飾るスプリングステークスは皐月賞トライアルの最終便。次開催初日に毎日杯があるので、まだ3歳馬に賞金を加算させる機会はあるものの、皐月賞は3回中山最終日、中3週しかない。1カ月後に迫るクラシックへ思いを馳せる。彼岸を迎え、桜ももう咲く、春にしては寒さ残る中山競馬場に皐月賞出走をかけた牡馬16頭。例年通りの混戦模様だ。

 

3勝馬は重賞2勝のファンタジスト。こちらは賞金面では皐月賞の出走枠は確保。距離延長に対応できるかが鍵を握る。

続く2勝馬は出走権利がどうして欲しい組。内からコスモカレンドゥラ、ヒシイグアス、エメラルファイト、ディキシーナイト、シークレットラン、ロジャーバローズ。

1勝馬では朝日杯FS2着のクリノガウディー、きさらぎ賞2着タガノディアマンテ、京成杯5着のリーガルメインなど重賞実績がある組もいる。クリノガウディーを除けば、皐月賞出走に足る賞金を持っていない。

 

スタートを決めたのはクリノガウディー。2番枠を活かして先行態勢を作る。外からコスモカレンドゥラ、ヒシイグアス、ディキシーナイトらも殺到する。中山芝1800mは1角が鍵。ダッシュを効かせ、勢いをつけねば先手を取り損ねる。小回りだからこそ欲しい先手。だから殺到する。みんな権利が欲しいのだ。外枠のロジャーバローズも前にズラリとできた4頭の壁の直後を目指す。この壁の直後のインにさっと収まったのはエメラルファイトだ。最内枠だったファンタジストは逆にじわっと外めに持ち出して1角に入る。

 

先手を奪ったのはクリノガウディー。藤岡佑介騎手は混戦模様のレースでは積極的に競馬を組み立てる。直後の外、壁を作りにくいところにヒシイグアス、インにコスモカレンドゥラ、外から並びかけるカラテ、この4頭から引いたのはディキシーナイト。石橋脩騎手はコーナーで巧みに馬を引く。一旦引くというのはリスクが高い行為だが、石橋脩騎手は迷わない。それをマークする形でロジャーバローズとエメラルファイトが並ぶ。

 

やや馬群が切れて、フィデリオグリーンが追走、直後の外にファンタジスト、インにリバーシブルレーン。リーガルメイン、タガノディアマンテ、ユニコーンライオンと続き、シークレットラン、ニシノカツナリ、ゲバラが後方で固まる。

 

1000m通過は60秒ジャスト。12秒0もしくは12秒1というラップが続くイーブンペースでレースは進む。4角でヒシイグアス、コスモカレンドゥラ、ロジャーバローズ、ディキシーナイトがクリノガウディー目がけて並ぶ。直後のインにいたエメラルファイトがロジャーバローズの動きに乗じて、ラチ沿いからさっと外に出す。

直線入り口で外からやってきたディキシーナイト、さらに外からエメラルファイトが追いかける。インでは逃げたクリノガウディーとヒシイグアスが競り合う。コスモカレンドゥラ、カラテは後退。一旦仕掛けを遅らせたファンタジストとタガノディアマンテが大外を強襲する。

 

待ち構えるは中山の急坂。

クリノガウディー、ヒシイグアス、ディキシーナイト、エメラルファイトの4頭が横にずらりと並び競り合っている。さあ、皐月賞への切符をもぎ取る馬はどの馬だ。横一線の叩き合いから坂をあがって前に出たのはディキシーナイトとエメラルファイト、外から迫るファンタジスト。ディキシーナイトの脚色が少しだけ鈍り、エメラルファイトがそれを捕らえようというところに追ってくるファンタジスト。その猛追を凌いだエメラルファイトが1着、ディキシーナイトを捕らえたファンタジストが2着。そして、ディキシーナイトが3着。この3頭に皐月賞への優先出走権が与えられた。勝ち時計は1分47秒8(良)。

 

1~3着馬コメント

1着エメラルファイト(10番人気)

本賞金900万円のこの馬にとって欲しかった優先出走権を獲得。賞金加算にも成功した。久々に重賞を勝った石川裕紀人騎手の手綱捌きは見事だった。ポイントはスタート直後。すぐ外からディキシーナイト、インからヒシイグアスが先行態勢をとり、自身も先行集団の壁に入っていきそうなところを馬に負担をかけずに引いた。先行有利のコース、横一線のメンバー構成、獲りにいかねばならない出走権。この状況のなかで、冷静にスムーズにさっと引き、4頭の壁を利用し、最短距離を走れるインをとった。見事な判断と制御力だった。そのインからロジャーバローズの動きに合わせて4角手前で外に持ち出した時点で、もっとも余力ある状態で、進路を確保し直線に向いた。馬の力を最大限引き出す、これ以上ないほどの騎乗だった。

 

2着ファンタジスト(1番人気)

3勝馬の同馬の課題は距離だった。1200、1400mで重賞連勝、マイルだった朝日杯FSでは4着と勢いを欠いた結果。距離をこなせるか、その一点だった。最内枠に入ったので、距離ロスを避ける競馬をするかと思えば、武豊騎手は馬場状態を読んだのか、戦前から距離によほど自信があったのか、エメラルファイトとは対照的にコーナーまでに外のポジションを狙った。終始外めを走りつつ、スムーズに折り合い、直線では急坂も距離の壁も感じさせない走りでディキシーナイトを捕らえた。揉まれ弱いなど別の要因がある可能性はあるが、外を回る競馬で最後まで伸びたわけだから、距離は問題ない。

 

3着ディキシーナイト(7番人気)

2勝馬だが、オープン勝ちがあるので本賞金は1600万円。皐月賞出走は可能だろうが、早いうちにその先のGⅠも確実にするには賞金加算が必要だった。1400mのクロッカスステークスを勝っているので、距離課題もあった。4頭並んだ先行集団から一旦引いて、外から進出する器用な競馬を展開したが、一旦先頭からゴール寸前で脚色が鈍った。皐月賞の権利を得たが、ファンタジストほど距離課題を克服したとはいえないかもしれない。

 

総評

スタート直後、4頭横一線の先行集団、直線を向いた直後にも同じような横一線の叩き合いがあった。いかに力が拮抗したレースだったか、それを象徴するような横一線のシーンが目立った。4角から急坂で記録された11秒6は中山の平均ペースを考えると、それなりの記録。一気に駆けあがって先頭に立ったエメラルファイトは皐月賞でも侮れない存在だ。そして、この坂をあがった直後の挙動こそ中山では見逃せない部分でもある。距離にして100m弱しかないが、ここに色々な適性が出る。一気に伸びたファンタジストも目立つ脚色は坂をあがった直後の平坦部分。坂下から一気に来られれば、エメラルファイトも捕らえることができた。平坦だから伸びた可能性は否定できない。最後に3着になったディキシーナイト、平坦部分で伸びたファンタジスト。中山の坂をあがった残り少しの地点は、様々なヒントを教えてくれる。

 

 

(勝木淳)

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