【重賞回顧】第79回桜花賞(GⅠ)

急流だけが激流にあらず。静かなる緩流のなかの激闘。これこそ儚い桜の舞台

 

生涯たった一度しか立てない桜の舞台。散りゆく花吹雪のなか、大輪を咲かせるものはたった1頭。そんな舞台で散っていった花を主人公にするのは気が引けるが、散ってこそ、さらなる大輪を咲かせたウオッカは忘れられない。

阪神競馬場コース改修後初めて行われた第67回桜花賞。

ウオッカはダイワスカーレットを射程圏に入れるクレバーな競馬を展開。しかし、ダイワスカーレットの鞍上安藤勝己は前にいながら後ろのウオッカにターゲットを絞っていた。ウオッカが並びかけるかかけないかという絶妙なタイミングでスパートをかけ、食い下がるウオッカに最後まで並ばせなかった。繰り出した上がり3ハロンはともに33秒6。同じ脚では前にいるダイワスカーレットが勝つのは当然のこと。これは完敗に近い黒星。そして、この黒星があったからこそ、ウオッカは日本ダービーを目指し、戦後初の牝馬ダービー馬に輝いた。

桜の舞台は切なく、儚い。しかし、儚くも散った馬のなかには後にさらに可憐な花を咲かす馬もいる。

2019年4月1日、ウオッカが天へ旅立った。桜を思い、ダイワスカーレットが浮かび、そして、第79回桜花賞を迎える。

 

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9月未勝利から4連勝、重賞3勝の2歳女王ダノンファンタジー。新馬戦でダノンファンタジーを完封したグランアレグリアは朝日杯FS以来の3歳緒戦が桜花賞という異例のローテーションで挑む。この2頭を追うのは阪神JF2着でクイーンCを勝ったクロノジェネシス、同じローテーションで3着、2着のビーチサンバ。ついでエルフィンSから直行のアクアミラビリス、アルテミスS勝ち以来勝ち星から遠ざかるシェーングランツ、チューリップ賞2着シゲルピンクダイヤ、フラワーC2着エールヴォア、アネモネS勝ちルガールカルムら、3歳牝馬18頭がたった一度の桜の舞台、第79回桜花賞へと駒を進めた。

 

例年散るか散らぬかと気を揉む仁川の桜は、今年はまさかの7分咲き。その桜を背景に向正面から桜花賞ははじまる。

好発を決めたメイショウケイメイ、ジュランビルを制してハナに立ったのはピンクの帽子大外18番のプールヴィル。秋山真一郎騎手の奇襲からはじまった。

好位4、5番手はインからホウオウカトリーヌ、グランアレグリアが並ぶ。直後に構えたクロノジェネシス、ダノンファンタジーが並び、ともに頭をあげるような仕草。明らかにペースが遅い。固まり、密集する馬群のなか、スムーズさを欠く馬が多くいる。クロノジェネシスも外からきたアクアミラビリス、ダノンファンタジーの動きに位置を下げた。直後にノーワン、ノーブルスコア、外からビーチサンバがじわりと位置をあげ、有力馬との差を詰める。アウィルアウェイも上がり、ノーブルスコアが下がる。そこに並ぶルガールカルム、やや間隔をあけて、エールヴォア、シゲルピンクダイヤ。後方にシェーングランツ、レッドアステル、フィリアプーラが続く。

 

前半800mは47秒7の緩流に落ち着かない馬が多く、外から上がる馬とインでスペースがなく下がる馬が交錯する、緩いなかでも厳しいレース。

流れが一変するのは4角手前の残り600m地点。4番手でなだめていたグランアレグリアのクリストフ・ルメール騎手が思い切って手綱を緩めたからだ。一気に先頭にいるプールヴィルに並び、プールヴィルが抵抗したことでピッチがあがった。このピッチにメイショウケイメイ、ジュランビルは脱落、後ろからダノンファンタジー、アクアミラビリス、ビーチサンバが追いあげ、最後の直線コースを迎える。すでに外から先頭に立ったグランアレグリアがプールヴィルを退け、外からラチ沿いに入り、後ろを離しにかかる。追いかけるダノンファンタジーが外からやって来る。後方にいたシゲルピンクダイヤが馬群にスペースができたインに飛び込み、進路を外に見出したクロノジェネシスが遅れて追う。

 

先頭はグランアレグリア、それを捕まえんとするダノンファンタジー。しかし、グランアレグリアとの差は全く縮まらない。追うダノンファンタジーは坂をあがると、やがて力尽きていく。先頭のグランアレグリアが後続を完封、2着にはシゲルピンクダイヤ、外からダノンファンタジーを捕らえたクロノジェネシスが3着に入った。

勝ち時計は1分32秒7(良)。桜花賞レコードだった。

 

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1~3着馬コメント

1着グランアレグリア(2番人気)

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新馬でダノンファンタジーを完封した実力を桜の舞台で爆発させた。新馬勝ち後は牡馬相手にサウジアラビアロイヤルCを勝ち、朝日杯FSでは1番人気に支持されながら、インから伸びきれずに敗戦。そこからレースを使わずに3歳緒戦の桜花賞を制した。中111日ぶりの桜花賞制覇は史上初。前半折り合いを欠く場面もあったが、後続を気にせず強気にスパートし、スピードを活かしたことで後続を完封。陣営、騎手ともに自信を持って挑んだ一戦だったのだろう。

 

2着シゲルピンクダイヤ(7番人気)

チューリップ賞2着ながら伏兵評価。スタートで遅れて後方を進みながら、渋滞する馬群に入らず、直線では空いたスペースを探しながら進路を作りつつ、追いあげ、最後はインからダノンファンタジーを捕らえた。和田竜二騎手らしい無駄のない騎乗。出遅れを味方につけた好騎乗だった。

 

3着クロノジェネシス(3番人気)

ダノンファンタジーを意識した先行策をとったものの、自らも緩い流れに折り合いを欠き、アクアミラビリスらが動いたところでスムーズ差を欠き、位置取りを下げてしまった。直線も一旦は前が壁、外に持ち出し、進路を作るのに戸惑った印象だ。最後の伸びはもっとも目立つものだっただけに、すでに2勝している東京で行われるオークスで逆転の可能性を感じさせた。

 

総評

ウオッカとダイワスカーレットが対決した桜花賞も前半800m47秒8の緩流だった。馬場改修後の桜花賞は平均ペースがやっとのレースが多く、18頭が桜の女王を目指すレースはタイトな馬群を形成する。折り合いやスペースに苦労し、順位を下げるケースが目立つ。逆を返せば、そのようなレースでいかにスムーズに走れるかどうかが鍵を握る。勝ったグランアレグリアも折り合いを欠いていた。ダノンファンタジーもクロノジェネシスも苦労していた。なかでもクロノジェネシスは先行策をとって対ダノンファンタジーに挑んだが、外から動く馬もいて、結局は位置取りを下げてしまった。その結果が3着。スローペースを下げながら3着したわけだから、これは強い競馬だったといっていい。

そう、桜の女王はグランアレグリアに輝いたが、もう樫の女王オークスへの戦いははじまっている。ここで負けたからこそ、さらなる大輪を咲かせる、ウオッカのような負けてから強くなるような名牝との出会いを我々は求め、競馬を、旅を続けていく。

 

 

(勝木淳)

(写真・かぼす)

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