【重賞回顧】第159回天皇賞(春)(GⅠ)

心に刻め、平成を締めくくる名勝負 

記録と記憶に残る名馬たちと肩を並べるのはどの馬か

 

改元を間近に控え、平成最後のG1が天皇賞とは、やはり競馬と皇室は縁がある。

平成元年の勝ち馬はイナリワン、騎手はデビュー2年目の武豊。

時代は、笠松からJRAにやってきたオグリキャップが、競馬界を沸かせた年だ。

オールドファンが語り草にする時代だろう。

31年の月日が経ち、数多の名勝負が繰り広げられてきた。

そして、天皇賞春の位置付けは、この30年で少しずつ変わったと言っていい。

同時期のドバイや香港といった海外レースへの遠征、レース番組の都合による長距離レースの少なさ、外厩を用いたローテーションのトレンドの変化……。種牡馬の実績とともなって、ステイヤーの減少なども重なり、出走馬の質が変わっていったと言わざるを得ない。これは時代をよく反映していると思う。

とはいえ、天皇賞は古馬の最高峰のレースに違いなく、三冠馬が圧倒的な強さを示すこともあれば、大波乱が起きることもしばしばとドラマは尽きない。

平成から令和に変わるの目前に、今年はどんな勝負が繰り広げられるのだろうか。

 

さて、今回の天皇賞、一つ残念な報せから始まる。

シャケトラの訃報である。

一週前の調教中に故障を発生し、予後不良となった。

1月のアメリカジョッキークラブCで昨年の菊花賞馬フィエールマンを降し、1年ぶりの復帰戦を勝利し、続く阪神大賞典を勝ち、天皇賞の有力馬として名を連ねていた。もしかしたら一番人気を争い、レースの主役になっていたかもしれない。

まさに、今がこの馬にとって一番輝くときだっただけに残念……無念である。

 

悲しい報せがあったとしても、競馬は止まらない。

平成最後のG1、天皇賞(春)は、昨年の菊花賞組みを中心に話が盛り上がっていく。

菊花賞馬フィエールマン。まだキャリア5戦、前走はシャケトラに惜敗の2着。盤石とは言えないものの、決め手ある走りで鞍上はルメール騎手と信頼できる。懸案だったGW中の輸送も一日前に到着出来て、体調も万全だ。

当時2着であり最強の一勝馬と言われるエタリオウ。なにしろ2着7回は強烈。シルバーコレクターはもう返上したい。

3着だったユーキャンスマイルは今年ダイヤモンドステークスを勝ち、長距離での走りには自信がある。

5着だったグローリーヴェイズは日経新春杯を勝利しており、淀の坂は攻略済みだ。(ちなみに4着は有馬記念を勝ったブラストワンピース)

菊花賞は14着だったが日経賞を逃げ勝ったメイショウテッコンも支持されており、レベルの高い4歳馬、こと今年の天皇賞(春)においてはシャケトラがいない今、年が明けてからの重賞勝利馬は4歳馬のみである。そして、G1優勝馬は菊花賞を上がり最速で勝ったフィエールマンただ一頭。

4歳馬以外で支持されたのは去年の当レース3着で凱旋門賞にチャレンジしたクリンチャー。あとは阪神大賞典3着のロードヴァンドール、京都記念4着で昨年11月のアルゼンチン共和国杯を勝っているパフォーマプロミスと次点で続く。どの馬もG1での成績は今一つだけに勢いのある4歳馬評価された格好だ。

 

強力な4歳馬の布陣に、先輩古馬が意地を見せられるかも見どころのひとつだ。

メディアに逃げ宣言をしていたヴォージュが展開のカギを握るだろうが、メイショウテッコンも前に行く馬だ。どの程度のペースになるか、長距離ではそこでの立ち回りでずいぶんと変わってくる。鞍上の腕の見せ所だ。

 

今年は例年よりも少ない13頭で争われることになったが、平成の締めくくりとして良いレースを期待したい。

 

 

レース回顧

 

13頭揃ったスタート。

人気のフィエールマン、エタリオウは揃って後方待機を選択。

勢いをつけてハナを主張するのは青い帽子の2頭、内からヴォージュ、外からメイショウテッコン。

1週目の3コーナーへ。ヴォージュがすんなりとハナに立つ。

2番手はメイショウテッコン。1馬身離れて、ユーキャンスマイル、ロードヴァンドール、カフジプリンスが3番手集団。

坂でカフジプリンスが少し下がって、後ろのチェスナットコート、ケントオーと同じ位置までやってくる。

その1馬身後ろにクリンチャーとグローリーヴェイズが並んで、後方2馬身離れてリッジマンとフィエールマン。

そして、驚いたことにさらに6馬身以上離れてエタリオウ。極端な最後方待機。

1週目の4コーナー。先頭はヴォージュ。2馬身離れて単独でメイショウテッコン。

1000m通過が59秒8。

スタンド前には長い隊列に変わっていった。大きな拍手が沸き起こる。

レースは後半戦に。2回目の1コーナーをヴォージュが先頭で通過していく。2番手はロードヴァンドール。

1番人気フィエールマン、位置取りをあげて中団まであがっている。

エタリオウは変わらず、離れた最後方。

2コーナーを周ってくる頃、またフィエールマンが動いた。

位置取りをあげて4、5番手集団までやってくる。

ペースを読んでの自在性をみせるルメール騎手。

後ろには3馬身離れてクリンチャー、グローリーヴェイズと内外並んでいる。

1馬身半差、リッジマン、ユーキャンスマイルと控える。

最後方はケントオーとエタリオウ。

ようやくエタリオウのギアが上がっていき、隊列を詰めていく。

3コーナーの坂へ向かって、徐々に隊列が狭まってくる。

2000m通過は2分04秒ほど。中間はかなりのスローペース。

勝負どころの3コーナーの坂、ヴォージュが差のない先頭。メイショウテッコンとカフジプリンスが馬体を寄せてきている。すぐ後ろにいるのはフィエールマン。

馬群は完全に一団となって坂を下っていく。

エタリオウが最後方からぐいぐいと上がっていく。

ロングスパートのはじまりだ。場内が沸きあがる。

4コーナーの入り口、ヴォージュは失速。

先頭はカフジプリンスだが、外からフィエールマンが不気味なほど静かに追いかけてくる。

大外をまくってくるのは最後方にいた黒い帽子のエタリオウ。

勝負の4コーナー。役者は揃った。

直線に入って、フィエールマンとエタリオウの間から伸びてきたのはグローリーヴェイズ。

後ろから猛追するエタリオウ。

フィエールマンはグローリーヴェイズの呼びかけに呼応するがごとく、併せ馬に。

この2頭が伸びる――!

エタリオウはもう届かない、がんばっての3着争い。

残り300m、平成最後の名勝負はフィエールマンとグローリーヴェイズの叩き合い。

3馬身、4馬身とどんどん3番手を突き放して二頭の競り合い、叩き合い。

若干、フィエールマンがリードするがグローリーヴェイズも巻き返す。

ゴール前、フィエールマンが体半分ほどリードしてゴールイン!

ルメール騎手の完璧な騎乗で導かれたフィエールマンが平成最後のG1を制した。

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1~5着馬コメント

1着 フィエールマン

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なにしろルメール騎手の騎乗が完璧だった。ペース配分の読み方、位置取り、そして仕掛けどころ。フィエールマンも注文に応じる自在性の走りで期待に応えた。ルメール騎手もディープインパクト産駒としても8大競争完全制覇。平成の終わりに大記録を打ち立てる。

母はフランス馬だけに凱旋門賞遠征もプランにあるとか。夢は新しい時代につながっていく。

 

2着 グローリーヴェイズ

フィエールマンとの叩き合いに、最後は競り負けた。ここは勝った馬が強かったというべきだろう。仕掛けどころも悪くなく、少なくとも3着までに6馬身差つけていることから、この馬の実力も相当。時代の終わりに見せ場をつくった。今後、中・長距離路線での活躍に期待したい。

 

3着 パフォーマプロミス

エタリオウの追撃を振り切って、3着。前の2頭には離されてしまったが、1~5着まで4歳馬以外はパフォーマプロミスのみだ。先輩古馬の意地をみせられたか。

 

4着 エタリオウ

さすがに道中、後ろすぎた。M,デムーロ騎手はこの馬の難しさを語っており、極端な戦法で挑むしかなかったのかもしれない。とはいえ、誰がどうみても後ろすぎだと思う。

ただ、もっと前で競馬したからといって、前の2頭に追いついていたかというと疑問が残る。ちょっとフィエールマンが完璧すぎた。この馬ととしてはロングスパートをがんばっており、4着まで到達した能力の高さをみせた。

 

5着 ユーキャンスマイル

エタリオウほどではないが、この馬も道中、後方に位置し、4コーナーからエンジンをかけていった。結果は4着から3馬身離れ、勝ち馬から1秒5の差をつけられた5着。少し実力差を感じる結果になった。

 

 

総括

G1馬が1頭しかない天皇賞春とは……と質の低さを嘆く節もあったが、フタをあけてみれば例年のような記憶に残る名勝負になった。

ヴォージュが逃げ、エタリオウが極端な後方に位置し、フィエールマンが徐々にペースをあげていくという、道中にも動きがありハラハラ度が高かったのではないだろうか。

3コーナーの京都の坂からロングスパートをかけるエタリオウの姿で場内の歓声が一段と大きくなったのが印象深い。そして4コーナー。

フィエールマンが馬なりで先頭に立ってすぐ、グローリーヴェイズがしかけて、その後ろに黒い帽子のエタリオウが必死の追い込み。

だが、勝負はフィエールマンとグローリーヴェイズの一騎打ちへ。

一つの時代が終わる最後のG1として申し分ない叩き合いを制したのは菊花賞馬フィエールマン。ディープインパクト産駒の宿題といわれていた天皇賞春を制した。

平成最後の天皇賞は名勝負といえるだろう。

 

ただ、一つ思うのは、やはり故障のことだ。

調教中のシャケトラは冒頭触れたが、レース中にも直線入り口にてヴォージュが故障発生で競争を中止している。そして、レース後はパフォーマプロミスの骨折が報じられた。

名勝負の影には競走馬の苦労と苦悩が折り重なっている。

 

時代が変わる。

どんなに時代が変わっても、

競馬は無事に全馬が走り切り、いいレースをしてもらうのが一番だ。

 

余談だが、

最後の直線の勝負……シャケトラがいたらなあ、と。

シャケトラの存在を心に刻み、目を瞑ると幻のレースで名勝負を繰り広げている。

 

 

(みすてー)

(写真・ゆーすけ)

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