【重賞回顧】第14回ヴィクトリアマイル(GⅠ)

極限の世界でみせる華麗なる攻防。歴史に刻む大レコード劇

 

JRAのGⅠのなかで2番目に新しいレース、ヴィクトリアマイルは今年で14回目を迎えた。スピードとスタミナ、どちらかが欠けては勝てない東京競馬場の芝1マイルを舞台にあまたの名牝たちが美しき強き姿をみせてきた。

 

第1回はダンスインザムードが先行して抜け出すという彼女のスタイルを披露し優勝(1分34秒0)。ダービー馬ウオッカを破ったエイジアンウインズは第3回(1分33秒7)。そのウオッカは翌年の第4回(1分32秒4)できっちりタイトルを手中に収めた。前年覇者のブエナビスタと前年3冠馬アパパネが激突した第6回は勝ち時計1分31秒9に東京競馬場がどよめいた。連覇は2度、第8回(1分32秒4)、第9回(1分32秒3)のヴィルシーナ、ストレイトガールは第10(1分31秒9)~11回(1分31秒5)。歴史は浅いが波乱が印象深いのもこのレース。12番人気のコイウタが勝った第2回(1分32秒5)、第10回は12番人気ケイアイエレガント、18番人気ミナレットが2、3着、確定成績の発表に東京競馬場が沸いた。

 

そして、第14回ヴィクトリアマイル。立夏を過ぎた東京競馬場は初夏を思わせる爽やかな風が流れていた。絶好の馬場状態はレース前から速い時計が出ることを予感させた。

 

向正面1マイル標識、スタートを決めたのは阪神牝馬S2着のアマルフィコーストだったが、外から強引にハナを奪ったのはアエロリットだった。昨年の安田記念で1分31秒3を記録している快速牝馬は1月米国遠征のダメージなど感じさせないスピードを見せる。先頭に立ってから400~800mで10秒6-10秒8の猛ラップを刻み、アマルフィコーストを寄せつけない。3番手外に阪神牝馬Sを勝ったミッキーチャームがつけ、強気なスピード勝負に応戦する。そのインコースに6歳牝馬クロコスミア、2年連続エリザベス女王杯2着と底力勝負に滅法強いベテランは経済コースで虎視眈々。中団前の外に2年前のオークス馬ソウルスターリング、間に1番人気ラッキーライラック、その直後のインに東京新聞杯2着と東京マイルを主戦場とするレッドオルガが続く。馬群の真ん中に3冠未出走ながら世代トップレベルと評されるノームコア、その前に同期のカンタービレ、後方馬群のただ中に牡馬相手にマイル重賞で好走するプリモシーンがいる。

 

アエロリットが離し気味にリードを奪い、前半800m44秒8を記録。その後もペースは緩まず、1000m通過56秒1、1200m1分7秒3とスプリント戦かと見間違えるようなラップが刻まれる。アエロリットのスピード競馬にアマルフィコースト以下は深追いできず動くに動けない。

 

ハイペースながら淡々とする不思議な雰囲気のまま、レースは最後の直線を迎える。先頭のアエロリットは自身の持ち味を発揮、スピード任せに強引なぐらい後ろを引き離しにかかる。追いかけるのは3番手にいたミッキーチャームだ。その差をジリジリと詰めるも、アエロリットの脚色が鈍らず、捕らえきれない。替わって追うのはラッキーライラック、ソウルスターリング、その間からクロコスミア。1列後ろのレッドオルガはミッキーチャームとソウルスターリングの間を狙うも、進路を阻まれる。その攻防の外からノームコアとプリモシーンがやってくる。

 

残り200m。アエロリットを巡る攻防が極限に達する。ラッキーライラックがアエロリットを捕らえる。そのインから底力をみせるクロコスミア、それでもまだ抵抗する姿勢を貫くアエロリット。この3頭を飲み込まんとするノームコアが先頭に並ぶ。それを追うプリモシーン。ラッキーライラックとクロコスミアも最後まで必死に抵抗する。なだれ込むように駆け抜けたゴール板。最後に前に出たのはノームコア、2番手は外のプリモシーン、僅差の3着争いはラッキーライラックをクロコスミアが下した。勝ち時計はストロングリターンのレコードを0秒8更新する1分30秒5(良)だった。

 

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1~3着馬コメント

1着ノームコア(5番人気)

3歳クラシック路線ではフラワーC、フローラS3着、紫苑S1着とトライアルのみの出走に留まったが、エリザベス女王杯2番人気5着、愛知杯1番人気2着と世代上位の力を見せていた。2000m戦以上で強い競馬が多かったため、マイル戦への対応が鍵だったが、アエロリットが作る厳しい流れのなか、極端に置かれることなく追走、最後の直線では抵抗する先行勢を相手に最後まで伸び続けた。スピードとスタミナ、総合力を発揮した。

 

2着プリモシーン(4番人気)

こちらも同世代4歳牝馬の一頭。桜花賞、NHKマイルCとマイル路線を選択、夏には古馬男馬相手に関屋記念を優勝。その後やや足踏みしたが、再び男馬相手のマイル戦ダービー卿CTで好走、その勢いをここでも発揮した。出足の鈍さから置かれる競馬が多かったが、今回はスタートも五分、中団後ろ寄りの位置でスムーズに流れに乗れた点が大きい。マイルであれば、確実に末脚を使える馬で、今後もこの路線で力を発揮するだろう。

 

3着クロコスミア(11番人気)

牝馬路線で常に力を発揮するクロコスミアだが、6歳という年齢と東京マイルという舞台で嫌われたのか、今回も低評価での好走だった。いつも低評価ながらあっと言わせる好走を続ける意外性、これが父ステイゴールドの血だろう。底力勝負の厳しい場面でこそ活かされる血にまたも驚かされた。

 

総評

レースは4歳世代ノームコア、プリモシーンのワンツー決着。1番人気ラッキーライラックは最後にアエロリットを自力で捕まえ、かつて世代ナンバーワンの評価を受けていた意地を見せた。この厳しいレースを演出したアエロリットに触れたい。

スタートは速くはなかったが、横山典弘騎手は先手を奪ったアマルフィコーストに2馬身の差をつけられながら、手綱を押して押して無理をしてでもハナを奪い返した。番手では味がない、先手を奪ってこそ力を出す馬。だからこそ、スタートで遅れても諦めず先手を取りに行った。少しでも後手を踏むと、作戦を変更し、出たなりの競馬をする騎手も多いが、この横山典弘騎手とアエロリットのこだわりこそ見逃せない。スピードを存分に活かす競馬を試みたからこその勝ち時計1分30秒5なのだ。加えて、ただ猛ペースで逃げただけではなく、残り200mまで後続を寄せつけない持続力で抵抗した点も見逃せないだろう。父クロフネらしいスピードと持続力を備えるアエロリットが主役になった直線の攻防は苛烈で、GIに相応しい熱戦となった。三度目覚めたクロコスミアの父ステイゴールドの血もアエロリットが引き出したものでもある。馬と馬が競うレースでは、こうした馬同士が作用し合って、生まれる底力というものがある。

 

 

(勝木淳)

(写真・かぼす)

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