【重賞回顧】第36回エプソムカップ(GⅢ)

VS4歳。夏はVS3歳だけではない。今年は4歳世代からも目を離せない

 

東京競馬場芝1800mはGⅠレースが施行されないのが不思議なほどのチャンピオンコース。共同通信杯東京スポーツ杯はいずれもクラシックに直結する重賞であり、毎日王冠府中牝馬SはGⅠの前哨戦として好メンバーが揃う重要なGⅡレース。エプソムカップはGⅠシーズンの末期、谷間の重賞という位置づけではあるが、4歳馬の活躍が目立ち、クラシック活躍組に遅れをとった馬が反転攻勢に出るきっかけにもなっている。

 

エプソムカップ出走馬がパドックに出るタイミングで雨脚が強まった。内馬場に掲げられたユニオンジャック、やはりエプソムは雨が似合う。昨秋から開催時にほぼ雨が降らなかった東京競馬場の芝にとっては恵みの雨。異常事態と言ってもいい高速馬場もこの雨でひと休みというところだ。

 

1番人気ソーグリッタリング。今春は準オープン、オープンと連勝。桜花賞戦線にも乗ったソーマジックが母、父は今春の東京競馬場で躍動するステイゴールド。5歳にしてようやく本格化を迎えた印象がある。

2番人気はセントライト記念勝ちがあるミッキースワロー。AJCC2着があるも、やや器用さに欠ける馬で、前走新潟大賞典2着で再度きっかけをつかんだ。

以下、プロディガルサン、ダノンキングダム、レイエンダ、アンノートル、サラキアら重賞タイトルを目指す組が続き、復活を期すタイトルホルダーのプレスジャーニーなど混戦模様を呈していた。

 

レースはスタート直後に大きなポイントがあった。大きく出遅れたアップクォークを除き、ほぼ一線のスタート。そのなかでやや速かったサラキア、レイエンダ、ダノンキングダム。3頭どの馬もすぐに手綱を押さえ、控える素振りをみせる。以前は大逃げもあったダノンキングダムだが、府中Sで抑える競馬で結果を出しているだけあって、今日も行きたくない。後ろから押して先手を取ろうという馬もおらず、サラキアの丸山元気騎手、レイエンダのC.ルメール騎手、手綱を短く持って引っ張りきりの両ジョッキーがお互いに牽制、ハナを譲り合っているようだ。結局はやや、抑えがきかなさそうなサラキアが押し出されてハナに立った。レイエンダはその直後の外2番手に収まっていった。

 

2頭の直後にストーンウェア、ダノンキングダムは外の4番手、2頭の間にソーグリッタリングが入っていく。中団外に壁ができずに折り合いを欠き気味なアンノートル、間にカラビナ、インにプロディガルサンが続く。

後方馬群の外にプレスジャーニー、インにショウナンバッハ、一列後ろにミッキースワロー、ハクサンルドルフ、出遅れたアップクォークが続く。

 

1000m通過は63秒9。本来は逃げ戦法をとらないサラキアのペースがあがるはずもなく、道中は12秒台後半の緩やかなラップが続く。後続も折り合いに専念、動く馬はいない。サラキアは4角手前の残り600mから11秒0と1秒以上のペースアップを図る。インは馬場が悪いのか、そこを避けて馬場の真ん中を回って直線コースに出てくる。

 

典型的な上がり3ハロン勝負になり、どの馬も手応えよく外めを回って進出するなか、外を追走していたプレスジャーニーが4角でただ1頭インを突き、前との差を一気に詰める。後続の手応え以上に前のサラキアとレイエンダの手応えがよく、後続はじわじわと2頭にリードを広げられてしまう。粘るサラキアを外から捕らえるレイエンダ。インからプレスジャーニー、プロディガルサン、外から追撃態勢に入ったソーグリッタリング、遅れながらショウナンバッハが差を詰める。残り200m、坂をあがってからの攻防で先頭に立ったレイエンダが、抵抗するサラキアとの叩き合いを制し、重賞初制覇を遂げた。2着は逃げて粘ったサラキア、3着は外を伸びたソーグリッタリングがあがった。勝ち時計1分49秒1(やや重)。

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1~3着馬コメント 

1着レイエンダ(5番人気)

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おなじみダービー馬レイデオロの弟。3歳春後半から夏にかけて連勝、セントライト記念2着で本格化の気配を感じさせたが、その後はやや競馬で位置取りを下げる場面が目立ち、精彩を欠いていた。ここ数戦のイメージを払拭するようにスタートを決め、ハナに立つかと思わせるほどの行きっぷり。サラキアを行かせて、スローペースの2番手という絶好位置をとれた点が勝因だろう。降級制度廃止により、オープンに在籍できたことも大きい。出走しなければタイトルは取れない。今後もローカル重賞戦線では4歳馬がポイントになるだろう。

 

2着サラキア(7番人気)

ローズS2着、秋華賞4着の好素材。京都金杯阪神牝馬Sも小差だっただけに好走は不思議でもなんでもない。しかし、同日に牝馬限定のマーメイドSがありながら、牡馬相手のエプソムカップ出走を決めた陣営の戦略も見事だった。距離適性を考えてのものだろうが、人気が示すように当然周囲のマークも甘くなる。押し出されたものではあったが、意を決してハナに立ち、マイペースで進めたのもマークの甘さゆえのもの。心理面まで含め、エプソムカップ出走は吉と出た。

 

3着ソーグリッタリング(1番人気)

こちらは展開に泣いた。もう少し強気に乗ってもよかった印象。控えたことで展開の不利を受け入れる競馬になったが、それでも後方から1頭だけ最後まで伸び続けており、負けて強しの競馬だった。ステイゴールドは今春の東京芝の特注種牡馬。4着ショウナンバッハも含め、この不利な流れに逆らえたのは血の勢いも大きい。

 

総評

残念ながら取り消したソウルスターリング、馬場に泣いたミッキースワロー、馬場の悪いインを急襲したプレスジャーニーの5歳重賞ウイナー、ソーグリッタリング、ダノンキングダムら同世代の重賞タイトルを目指す組は結果的に降級しているはずの4歳レイエンダ、サラキアに屈してしまった。前半1000m63秒9、上がり32秒9の究極の上がり勝負を逃げた馬と番手にいた馬が入れ替わった結果ではあるが、この2頭はいずれも新ルールによってここに出走できたわけで、ルール改正が明暗を分けた部分もある。そうは言いつつ、ルール改正の是非などはここで問うべきではなく、ルールが改正された以上、今後はこのように4歳馬が夏の重賞戦線で活躍するであろうことは頭に入れておきたい。

5歳勢も有力馬は展開や馬場の影響に泣いた馬が多く、今後はより強力布陣になるであろう4歳包囲網をきっと突破できるだろう。この激突は今年から始まる夏の風物詩になる。

 

 

(勝木淳)

(写真・かぼす)

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