【重賞回顧】第26回函館スプリントステークス(GⅢ)

競馬の夏、はじまる。

JRA北海道シリーズの開幕はサマースプリントシリーズ緒戦の函館スプリントステークス。しかし、華々しい函館競馬の開幕に水を差すような事態が発生した。

既報の通り、厩舎で馬に与えられる飼料添加物、いわゆるサプリメントのなかに禁止薬物が混入していたことが判明、出馬表決定後の事案に対してJRAは該当するサプリメントを摂取した可能性がある該当馬を競走除外にする措置をとった。土日で156頭の競走除外は競馬史上前例がない大事件へと発展した。

原因の究明、再発防止については今後の対応に委ねるが、函館スプリントステークスでは競走除外6頭、13頭が7頭立てになってしまった。除外されたのはシュウジ、ライトオンキュー、リナーテ、ダノンスマッシュ、トウショウピスト、タマモブリリアンの6頭。高松宮記念4着のダノンスマッシュの除外により、7頭立てながら混戦模様となった。

 

1番人気はタワーオブロンドン。京王杯SCレコード勝ちを含む重賞3勝は実績最上位。初の1200m戦と小回り函館への対応が課題とされていた。

昨年の函館2歳Sを勝ったアスターペガサスは以後振るわない成績だったが、前走葵Sで久々に1200m戦に出走し2着と復調気配を見せる。以下、ペイシャフェリシタ、ダイメイフジ、カイザーメランジェと続く。

 

当日の函館は発達した低気圧が通過する予報が出ており、大雨まで予想されたが、天候の発表は小雨、馬場状態はやや重で迎えられた。

有力馬の除外だけではなく、先行馬も除外されてしまったため、レース展開は読みにくい状況のなかでスタートが切られた。

スタートを決めた馬が行くという状況下で先行態勢をとったのがカイザーメランジェとアスターペガサスの外枠2頭。前走で差して好走したアスターペガサスは一歩引き、カイザーメランジェがハナに立った。タワーオブロンドンもスプリント戦のスタートに不安はあったが、互角なスタートを決め、無理せず一旦引いていく。

3番手のインにペイシャフェリシタ、その外にダイメイフジが併せていく。後方3頭は引いたタワーオブロンドン、サフランハート、最後方から11歳のベテラン、ユキノアイオロスが追走している。

前半600m通過は34秒4。オープン、重賞のスプリント戦としては完全なるスローペース。タワーオブロンドンも緩流に楽に追走していたが、さすがにこの流れではと判断したのか、4角で大外を回りながら追い上げていく。

カイザーメランジェも余裕十分で最後の直線を迎える。もう残りは200m。逃げるカイザーメランジェと2番手から追うアスターペガサスが止まる気配はなく、外からいつもの迫力で追い込むタワーオブロンドンが捕らえられそうにない。アスターペガサスはカイザーメランジェとの差を結局詰められず、カイザーメランジェが逃げ切った。2着は最後にタワーオブロンドンに急襲されながら、アスターペガサスが死守した。勝ち時計は1分8秒4(やや重)。

 

1~3着馬コメント

1着カイザーメランジェ(5番人気)

1月に中山1200mで準オープン勝ち後、4月春雷Sで追い込んで3着好走後から徐々に脚質を前寄りへシフト。オープンでも差がないところまで走れるようになり、それが見事に結実した。脚質転換によって逃げ馬不在の状況に対応できるようになった結果だ。2番手が差し馬アスターペガサスだったことも恵まれた。深追いされない恩恵、小回り函館、そのすべてを味方につけた。エルコンドルパサーの後継である09年函館記念サクラオリオンの貴重な産駒が、父が得意とした函館で開花、血の巡りあわせもあっただろう。

 

2着アスターペガサス(2番人気)

函館2歳Sを追い込んで勝って以来、2歳後半から3歳春シーズンだったので1400~1600mを中心に使われ、冴えない成績を残していたが、1200m戦の葵Sで2着と一変。今回は2番手追走という器用なところまで披露し、タワーオブロンドンの追撃を凌いだ。経歴から早熟なのではという見方もあったが、やはり1200m戦であれば、今後も目が離せない。

 

3着タワーオブロンドン(1番人気)

500キロを越える馬体、エンジンの掛かりがやや遅い走りから1200m戦への対応、小回り函館での走りに注目されたが、スタートから流れが遅いレースに助けられて追走はスムーズではあった。しかしながら互角以上のスタートを切りながら、折り合いを気にしたのか下げてしまったのは実にもったいなかった。この流れで後方から、それも勝負どころで外を回しては函館ではロスが大きすぎる。ダミアン・レーン騎手も早めにエンジンを吹かしながら脚を余さないように工夫していたが、それでも届かない函館競馬場に敗れたようなものだ。

 

総評

夏競馬の開幕から波乱含みな展開ではあったが、まずは無事にレースが行われたことに安堵する。函館スプリントステークスも除外6頭、ここに的を合わせてきた陣営の無念のためにも全力で再発防止と原因究明をしていただきたい。このようなことは2度と繰り返してはならない。

さて、勝ったカイザーメランジェの父はサクラオリオン、その父はエルコンドルパサー。長期仏遠征、凱旋門賞2着で歴史に名を残した名馬だが、種牡馬入り後2年で死亡、たった3世代しか血を残せなかった。数少ない産駒からヴァーミリアンソングオブウインドアロンダイトとGI馬を輩出。その湧き水のような血脈を継ぐサクラオリオンからカイザーメランジェという重賞ウイナーが生まれた。ディープインパクトのような日本競馬の大動脈を担う存在の一方で、微かにつながる血脈もまたここにあるという競馬の奥深さを教える一戦でもあった。

 

 

(勝木淳)

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